きっと私は悪役令嬢

麻生空

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「では、王位争いにならない為に男性が好きではないのに、わざわざ男性が好きな振りをして、あえて男色家なんて噂を流していたのですか?」

アレンデル殿下の話は私にとってとても衝撃的な内容だった。

大好きなお兄様の対抗勢力の旗頭にされそうになるばかりか、父王に謀反の疑いを掛けられ何時暗殺されるか分からない状態だったと言うのだから。

その為に、無能もしくは使えない男だと思わせる為に美少年達と外遊に出たりして縁談話と第二王子派の印象を悪くする為に色々と画策していたのだというのだ。

「本当はこんな事をお願いするのはどうかと思うんだけど、エリスに私が男色家だと思わせる為の演技に付き合って貰いたいんだ。正直に言えば私は同性を恋愛対象に見れなくて、それなのに本物の男色家の人から恋人になりたいとか言われていて正直困っていたんだ。酷い時は柱の裏に連れ込まれる説きもあって……」

眉根を下げて私を見るアレンデル殿下。

確かに、大好きな兄の目の上のたんこぶになっただけでなく、父親から自身の命を狙われるだなんて、普通の子供には耐えられない事だと思う。
許すまじ変態男。

それに「大好きな兄上に嫌われたくないんだ」と涙ながらに話されたアレンデル殿下には共感するものがあった。

私だって家族の為にバッドエンドフラグを回避しようと色々頑張っているのだから、陛下や王太子殿下への有りもしない嫌疑を晴らしたいというアレンデル殿下の気持ちは痛いほど分かる。

「アレンデル殿下。不肖ふしょうエリス。殿下の悲願達成の為に出来る限りの協力は惜しみません」

まだ大人の庇護下にいなくてはいけないはずの子供がこんなに一生懸命頑張っているんだ。
助けないなんて選択肢は私にはない。
そして、変態な大人の男達からもこの無垢な第二王子殿下を守らなくては。
アレンデル殿下の貞操は私が守ってみせます。
 
「ありがとう。エリー。君に最大限の感謝を」

目を潤ませたアレンデル殿下はそう言って私の右手を取り、ゆっくりと手の甲に唇を落とした。

流石は王子様。 

様になっている。

思わずドキドキしながらアレンデル殿下の頭をジッと見てしまう。

唇を離したアレンデル殿下は私の方を見る。

「では、明日から私の側近として王宮勤めをお願い出来るかな?正規雇用は決まった時期の試験を受ける必要があるけど、臨時雇いなら大丈夫だから。週4日の午後からの4時間程。どうだろう?」

週4日の4時間ならパートみたいなものだろう。
領地の経営ついでに出来る範囲だな。

「それくらいなら大丈夫です」

今後の事もあるし、何かあってもやはり金はあるに越したことはない。

「仕事が忙しい時は勿論時間外手当てを出すから、そうだな時給の1.5倍でどうだろう?」

なんと、美味しいお話。

「因みに時給はおいくらで?」

目を輝かせて私が質問すると、アレンデル殿下はそれは嬉しそうに微笑んだのだった。
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