聖女降臨

麻生空

文字の大きさ
3 / 10

3

しおりを挟む
さて、そろそろ私が誰かと言う事を話そう。

私はこのハクヤ国の第一王女アリエル。

御歳16歳。
婚約者はいない。
と、言うのも今年が聖女降臨の100年目になるからである。
聖女様は王家で抱え込まねばならない。
勇者しかり。
故に王族は聖女降臨が終わらぬ内は婚約者を持たないのだ。

しかし、通例なら召還される聖女様はお一人。
伴侶になれる王族が複数いると半年間の交流を経て聖女様自らに伴侶を選んで貰うのがしきたりになっていた。
そして、聖女争奪戦に勝った者は自動的に次期国王となる。
つまり、複数の王子がいれば例え長子であっても聖女に選ばれなければ王位継承権が下がると言う事だ。

さて、ここまでは一般的なルールだ。

問題は私と王太子の間には4人の王子がいたと言う事だ。

最初の王子は病弱で病で亡くなる。
次の王子は落馬して亡くなる。
次の王子は親族の謀反の疑いで処刑。
次の王子は階段から落ちて亡くなった。

何れも理由があるが、4人も続けば疑念がわく。

故に母は私を女と偽った。
だから生かされている。
誰から?
勿論、あの王太子からだ。

何故なら聖女は王子の中から伴侶を選ぶ。

つまり、王太子は聖女を伴侶にしたいが為に実の弟達を殺めているのだ。

げに恐ろしき男である。


今回の聖女降臨は聖女様と勇者様がお一人づつ降臨された。

故に、王女となっている私を生かす意味があるのだ。

先ほどの聖女降臨の儀式の後、私は優希と共に宰相から今後の説明を受けるべく何故か私の部屋へと誘導された。

宰相は王太子に今後の事を打ち合わせる為にいったん出て行っている。

「どうぞ。香茶です」
そう言って私は優希に香茶を差し出す。

勿論私も今までも命の危険があった為に毒見のいない飲食には気を付けている。
日常の些細な飲み物でさえ常に自分で仕入れて保管、そして侍女には頼まず淹れている位だ。

「ありがとう。とても爽やかな味ですね。美味しいです」
優希は何の躊躇いもなく私の差し出した香茶を飲んだ。

きっと彼の居た世界は毒の心配もない平和な世界だったのだろう。

そう思うと複雑な感情が芽生える。
だからちょっと意地悪になってしまった。
「優希様は初対面のこのような女と結婚を決めて良かったのですか?それとも私が王女だから?爵位と領土を貰えるから結婚を決められたのですか?」
自分で言っていて反吐へどが出る。

だって、私には何の選択権もない。
逆らえば死ぬのみ。
優希が私を嫌だと言えばあの王太子はどんな手に出るのやら。
きっと優希も私も無事ではすまされないだろう。

「そうですね。先ほどの王太子?でしたっけ。彼に殺させたくなかった……からでしょうか?」

再び香茶を飲みながら優希はそう言った。
ドキリとした。
「殺される」じゃなく「殺させたくなかった」?と。
「私が貴方を娶らねば、きっと貴方は……」
優希の言葉の途中でガタリと立ち上がる。
「な……ぜ?」
知っているのか?
母も私もまだ半信半疑なのに……。
「だって、本来なら宰相は陛下に事の次第を伺わなければならないのに、今もほら、王太子の所へ聞きに行ったでしょう?」
優希はそう言うと空のカップを寂しそうに眺めた。
「だから、これから成長する貴方を彼の手から助け出せるのであれば、それも良いかな?と、思ったんだ」
「同情ですか?」
「いや……ちょっとしたボランティアかな」
ボランティア?どう言う意味かしら?
私が訝し気に優希を見ていると

「おかわりを頂いても?」

優希は私にカップを差し出しニコリと微笑んだのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

聖女の、その後

六つ花えいこ
ファンタジー
私は五年前、この世界に“召喚”された。

冤罪で殺された聖女、生まれ変わって自由に生きる

みおな
恋愛
聖女。 女神から選ばれし、世界にたった一人の存在。 本来なら、誰からも尊ばれ大切に扱われる存在である聖女ルディアは、婚約者である王太子から冤罪をかけられ処刑されてしまう。 愛し子の死に、女神はルディアの時間を巻き戻す。 記憶を持ったまま聖女認定の前に戻ったルディアは、聖女にならず自由に生きる道を選択する。

アリエッタ幼女、スラムからの華麗なる転身

にゃんすき
ファンタジー
冒頭からいきなり主人公のアリエッタが大きな男に攫われて、前世の記憶を思い出し、逃げる所から物語が始まります。  姉妹で力を合わせて幸せを掴み取るストーリーになる、予定です。

僕の秘密を知った自称勇者が聖剣を寄越せと言ってきたので渡してみた

黒木メイ
ファンタジー
世界に一人しかいないと言われている『勇者』。 その『勇者』は今、ワグナー王国にいるらしい。 曖昧なのには理由があった。 『勇者』だと思わしき少年、レンが頑なに「僕は勇者じゃない」と言っているからだ。 どんなに周りが勇者だと持て囃してもレンは認めようとしない。 ※小説家になろうにも随時転載中。 レンはただ、ある目的のついでに人々を助けただけだと言う。 それでも皆はレンが勇者だと思っていた。 突如日本という国から彼らが転移してくるまでは。 はたして、レンは本当に勇者ではないのか……。 ざまぁあり・友情あり・謎ありな作品です。 ※小説家になろう、カクヨム、ネオページにも掲載。

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

追放された偽物聖女は、辺境の村でひっそり暮らしている

潮海璃月
ファンタジー
辺境の村で人々のために薬を作って暮らすリサは“聖女”と呼ばれている。その噂を聞きつけた騎士団の数人が現れ、あらゆる疾病を治療する万能の力を持つ聖女を連れて行くべく強引な手段に出ようとする中、騎士団長が割って入る──どうせ聖女のようだと称えられているに過ぎないと。ぶっきらぼうながらも親切な騎士団長に惹かれていくリサは、しかし実は数年前に“偽物聖女”と帝都を追われたクラリッサであった。

処理中です...