勘違いで白馬の王子様に陥れられた令嬢は案外愛されています

麻生空

文字の大きさ
10 / 16

9

しおりを挟む
憂鬱だ。

朝から舞踏会の準備でてんてこ舞い。

私とルミナはお父様譲りの金髪が一緒な為に、姉妹と言っても通る感じだ。
背格好も似ているし、顔も姉妹で通る位には似ている。
似ていないのは目の色だろうか。
ルミナはきれいな青色だけど、私は薄い緑色の瞳だ。

まぁ、仮面を着けているから、瞳の色までは分からないかもしれない。

事実義理ではあるが姉妹ではあるんだから、似ていて当たり前かもしれない。

因みに、愛人は4号さんまで出来ていた。

不思議と兄弟は増えないようで、皆さん不妊症なのかと心配になってしまう。

私が今日着ているドレスは先月何とかって言う公爵家の舞踏会にルミナが着ていったドレスらしいと仲良くなった侍女がこっそり教えてくれた。

靴はルミナと生憎サイズが違う為に、安い物を購入して貰った。
私の方が少し大きいようで……。

因みに、舞踏会は仮面着用で、仮面はその家門を表す物を着用している。
故に、三人お揃いの仮面を付けている。
内心滅茶苦茶嫌だったけど。

舞踏会の会場に着くとお義母様と妹のルミナは早速王族が座る席の側へと陣取りに走り出した。

私はと言うと、この時ばかりと飲食コ―ナ―へと向かう。

家計の火の車は現在進行形で、肉などはここ何年も食べた事がない。

卵は鶏を飼育しているのでヨキムが毎朝私に出してくれる。

お陰で、何とか生きてこれた。

目の前に広がる贅沢な料理。

デザートそっちのけで肉類を食べる。

「動物性たんぱく質」

そんな事を唱えながら脂の乗ったお肉達を食べていく。

栄養が足りないせいか、女らしい体型からは程遠い。

「やっぱり動物性たんぱく質は必須でしょう」

舞踏会が始まってもいない今、飲食コ―ナ―は私一人の独擅場。

誰もいない事を良いことに次々とお肉を食べる。

お腹が一杯になった所で後ろから声がかかる。

「デルク公爵令嬢ですね」

振り返ると若い男性が立っていた。
蒼い髪は短く切られ、仮面越しで目の色は判断出来ないものの、整った顔は想像出来る。
きっとルミナならこの仮面を見ただけで何処の令息か分かるんだろうけど、生憎、私は社交の場に出た事がない。

「そうですけど、えっと……」

私をデルク公爵令嬢と分かったのは、きっとこの仮面のせいだろう。

「先月、家で開催した舞踏会に着て来られたドレスと同じだったもので、デルク公爵令嬢かと思いました。私の事はお忘れですか?」

多分ルミナと勘違いしている。

「すみません。あまり記憶力が良くないもので……」

別に、ルミナをヨイショする必要はない。
それに、何気に遠回しに貧乏と言われているのも不愉快だ。
そう言えば、裕福な貴族は夜会で一度着たドレスは着ないらしい。
間違ってはいないけど、言って良い言葉とそうでない言葉がある。

それに、どうやらルミナと勘違いしているようだから、とぼけて少しはルミナに仕返しするのもアリだと思う。

「ウエンズ公爵家の次男カイです。王太子殿下の側近です」

そうか。
ウエンズ公爵家の舞踏会に着ていった服だったんだ。

「あの時、令嬢からダンスを誘われたのに、踊っている間のお話の内容が殿下の好みばかりで、てっきり今日は殿下狙いだと思っておりましたが、違いましたか?」

えっと……これって嫌味?

ルミナどんだけ失礼な質問をしたら、こんな嫌味を言う為だけに飲食コ―ナ―までこの人が来るの?

「まぁ、恋愛ではお腹は膨れませんから、取り敢えず腹ごしらえ?腹が減っては戦は出来ぬって言いますでしょう?」

「初めて聞く言葉ですね」

えっ、嘘。

結構有名な言葉だと思ったんだけど。

あっ、この世界の格言じゃないか。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

断罪された私ですが、気づけば辺境の村で「パン屋の奥さん」扱いされていて、旦那様(公爵)が店番してます

さら
恋愛
王都の社交界で冤罪を着せられ、断罪とともに婚約破棄・追放を言い渡された元公爵令嬢リディア。行き場を失い、辺境の村で倒れた彼女を救ったのは、素性を隠してパン屋を営む寡黙な男・カイだった。 パン作りを手伝ううちに、村人たちは自然とリディアを「パン屋の奥さん」と呼び始める。戸惑いながらも、村人の笑顔や子どもたちの無邪気な声に触れ、リディアの心は少しずつほどけていく。だが、かつての知り合いが王都から現れ、彼女を嘲ることで再び過去の影が迫る。 そのときカイは、ためらうことなく「彼女は俺の妻だ」と庇い立てる。さらに村を襲う盗賊を二人で退けたことで、リディアは初めて「ここにいる意味」を実感する。断罪された悪女ではなく、パンを焼き、笑顔を届ける“私”として。 そして、カイの真実の想いが告げられる。辺境を守り続けた公爵である彼が選んだのは、過去を失った令嬢ではなく、今を生きるリディアその人。村人に祝福され、二人は本当の「パン屋の夫婦」となり、温かな香りに包まれた新しい日々を歩み始めるのだった。

「ご褒美ください」とわんこ系義弟が離れない

橋本彩里(Ayari)
恋愛
六歳の時に伯爵家の養子として引き取られたイーサンは、年頃になっても一つ上の義理の姉のミラが大好きだとじゃれてくる。 そんななか、投資に失敗した父の借金の代わりにとミラに見合いの話が浮上し、義姉が大好きなわんこ系義弟が「ご褒美ください」と迫ってきて……。 1~2万文字の短編予定→中編に変更します。 いつもながらの溺愛執着ものです。

前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします

柚木ゆず
恋愛
 ※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。  我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。  けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。 「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」  そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。

強い祝福が原因だった

恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。 父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。 大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。 愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。 ※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。 ※なろうさんにも公開しています。

わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~

絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。

離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。

しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。 私たち夫婦には娘が1人。 愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。 だけど娘が選んだのは夫の方だった。 失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。 事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。 再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。

完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました

らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。 そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。 しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような… 完結決定済み

白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!

ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。 ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!? 「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」 理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。 これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!

処理中です...