11 / 16
10
しおりを挟む
二人の間の変な沈黙を遮るようにファンファーレが鳴る。
王族の入場だ。
国王夫妻に続き、第一王子、第二王子、第一王女、第二王女、そして側室が入場する。
貴族の家督は側室を設ける事が出来る。
一般市民との大きな違いだ。
だが、大抵の場合、夫人が良い顔をしないので愛人として囲うのが殆どだ。
家の父のように。
「殿下が入場したのでこれで失礼する」
カイはそれだけ言うとすたすたとその場を後にした。
第一王子はこの前立太子したばかりで、令嬢方はその伴侶の座を狙い群がっている。
第二王子は2歳下で、大人しい方だとの噂だ。
第一王子は正妃様のお子さまで、第二王子は側室の子供らしい。
側室とは言っても辺境伯の令嬢だったらしく、後ろ楯も強い。
対して、正妃様は帝国の姫君で、外交ルートからの圧力が凄いらしい。
故に、第一王子も立太子したと言っても伴侶次第では大どんでん返しもあるかもしれないので、水面下では血生臭いやり取りがあるとか、ないとか。
故に、伴侶選びには慎重なのだろう。
因みに、王族は何代か前に異世界から聖女様が来て当時の王太子と結婚した事から髪と目の色が黒いのだとか。
前世を思い出し、とても懐かしい思いに駆られる。
そして、何処かで読んだ事のあるような設定に当時の聖女が少し羨ましくも思う。
同じ異世界を経験していても、私は公爵家の嫡女なのに馬車馬のように働き、衣食住だってまともではない。
貴族席には入っている為、こんな時だけ思い出したように令嬢扱いされる。
思わずタメ息が出てしまう。
挨拶の順番でもあるのかと身構えていたが、既に殆どの令嬢達が王子様達に群がっており、あれをさばくだけでも大変だろうと内心同情してしまった。
「見ているだけでも疲れちゃう。もう少し食べよう」
私は2時間食べ放題に来たつもりで再び皿とホ―クを持った。
これから一年位は食べなくても大丈夫な位食べよう。
折角のお料理、沢山いただかせて頂きます。
世の中には食い溜めは出来ないと言うが、毎日瞑想している内に私には食い溜めスキルがついたようで、茶会で残ったケ―キとか、誕生会で余った料理とかドンドン食べてもお腹は痛くならないのだ。
挙げ句、その後数日は水だけでも大丈夫。
食い溜め出来るだなんて、異世界スキル凄いと思う。
まぁ、普段の食事を考えると宝の持ち腐れ感半端ないんだけど。
「さぁ、今日は舞踏会が終わるまで食べるぞ」
私は気合いを入れて食事を再開させたのだった。
☆☆☆☆☆☆☆
給仕係は一瞬自分の目を疑った。
舞踏会が始まる前から食事をしていた令嬢が3時間たった今現在も飲食を続けているのだ。
「鴨のロ―ス追加」
「イベリコ豚の丸焼き追加」
「デザート各種追加」
「パン焼けました」
何時もは暇なはずの飲食コ―ナ―の給仕が先程から右往左往と忙しく料理を運んでいる。
「あの令嬢何人前食べる気だ?」
「これ以上食べられたら明日の食材もヤバイぞ」
「どうする?」
どうするも何も、招待客に食べるのを止めて下さいと言う訳にもいかないし。
裏方の方では料理長が宰相を呼びつけ現状報告をしている。
宰相頑張れ。
応援しています。
by 給仕係
王族の入場だ。
国王夫妻に続き、第一王子、第二王子、第一王女、第二王女、そして側室が入場する。
貴族の家督は側室を設ける事が出来る。
一般市民との大きな違いだ。
だが、大抵の場合、夫人が良い顔をしないので愛人として囲うのが殆どだ。
家の父のように。
「殿下が入場したのでこれで失礼する」
カイはそれだけ言うとすたすたとその場を後にした。
第一王子はこの前立太子したばかりで、令嬢方はその伴侶の座を狙い群がっている。
第二王子は2歳下で、大人しい方だとの噂だ。
第一王子は正妃様のお子さまで、第二王子は側室の子供らしい。
側室とは言っても辺境伯の令嬢だったらしく、後ろ楯も強い。
対して、正妃様は帝国の姫君で、外交ルートからの圧力が凄いらしい。
故に、第一王子も立太子したと言っても伴侶次第では大どんでん返しもあるかもしれないので、水面下では血生臭いやり取りがあるとか、ないとか。
故に、伴侶選びには慎重なのだろう。
因みに、王族は何代か前に異世界から聖女様が来て当時の王太子と結婚した事から髪と目の色が黒いのだとか。
前世を思い出し、とても懐かしい思いに駆られる。
そして、何処かで読んだ事のあるような設定に当時の聖女が少し羨ましくも思う。
同じ異世界を経験していても、私は公爵家の嫡女なのに馬車馬のように働き、衣食住だってまともではない。
貴族席には入っている為、こんな時だけ思い出したように令嬢扱いされる。
思わずタメ息が出てしまう。
挨拶の順番でもあるのかと身構えていたが、既に殆どの令嬢達が王子様達に群がっており、あれをさばくだけでも大変だろうと内心同情してしまった。
「見ているだけでも疲れちゃう。もう少し食べよう」
私は2時間食べ放題に来たつもりで再び皿とホ―クを持った。
これから一年位は食べなくても大丈夫な位食べよう。
折角のお料理、沢山いただかせて頂きます。
世の中には食い溜めは出来ないと言うが、毎日瞑想している内に私には食い溜めスキルがついたようで、茶会で残ったケ―キとか、誕生会で余った料理とかドンドン食べてもお腹は痛くならないのだ。
挙げ句、その後数日は水だけでも大丈夫。
食い溜め出来るだなんて、異世界スキル凄いと思う。
まぁ、普段の食事を考えると宝の持ち腐れ感半端ないんだけど。
「さぁ、今日は舞踏会が終わるまで食べるぞ」
私は気合いを入れて食事を再開させたのだった。
☆☆☆☆☆☆☆
給仕係は一瞬自分の目を疑った。
舞踏会が始まる前から食事をしていた令嬢が3時間たった今現在も飲食を続けているのだ。
「鴨のロ―ス追加」
「イベリコ豚の丸焼き追加」
「デザート各種追加」
「パン焼けました」
何時もは暇なはずの飲食コ―ナ―の給仕が先程から右往左往と忙しく料理を運んでいる。
「あの令嬢何人前食べる気だ?」
「これ以上食べられたら明日の食材もヤバイぞ」
「どうする?」
どうするも何も、招待客に食べるのを止めて下さいと言う訳にもいかないし。
裏方の方では料理長が宰相を呼びつけ現状報告をしている。
宰相頑張れ。
応援しています。
by 給仕係
0
あなたにおすすめの小説
断罪された私ですが、気づけば辺境の村で「パン屋の奥さん」扱いされていて、旦那様(公爵)が店番してます
さら
恋愛
王都の社交界で冤罪を着せられ、断罪とともに婚約破棄・追放を言い渡された元公爵令嬢リディア。行き場を失い、辺境の村で倒れた彼女を救ったのは、素性を隠してパン屋を営む寡黙な男・カイだった。
パン作りを手伝ううちに、村人たちは自然とリディアを「パン屋の奥さん」と呼び始める。戸惑いながらも、村人の笑顔や子どもたちの無邪気な声に触れ、リディアの心は少しずつほどけていく。だが、かつての知り合いが王都から現れ、彼女を嘲ることで再び過去の影が迫る。
そのときカイは、ためらうことなく「彼女は俺の妻だ」と庇い立てる。さらに村を襲う盗賊を二人で退けたことで、リディアは初めて「ここにいる意味」を実感する。断罪された悪女ではなく、パンを焼き、笑顔を届ける“私”として。
そして、カイの真実の想いが告げられる。辺境を守り続けた公爵である彼が選んだのは、過去を失った令嬢ではなく、今を生きるリディアその人。村人に祝福され、二人は本当の「パン屋の夫婦」となり、温かな香りに包まれた新しい日々を歩み始めるのだった。
「ご褒美ください」とわんこ系義弟が離れない
橋本彩里(Ayari)
恋愛
六歳の時に伯爵家の養子として引き取られたイーサンは、年頃になっても一つ上の義理の姉のミラが大好きだとじゃれてくる。
そんななか、投資に失敗した父の借金の代わりにとミラに見合いの話が浮上し、義姉が大好きなわんこ系義弟が「ご褒美ください」と迫ってきて……。
1~2万文字の短編予定→中編に変更します。
いつもながらの溺愛執着ものです。
前世の記憶が蘇ったので、身を引いてのんびり過ごすことにします
柚木ゆず
恋愛
※明日(3月6日)より、もうひとつのエピローグと番外編の投稿を始めさせていただきます。
我が儘で強引で性格が非常に悪い、筆頭侯爵家の嫡男アルノー。そんな彼を伯爵令嬢エレーヌは『ブレずに力強く引っ張ってくださる自信に満ちた方』と狂信的に愛し、アルノーが自ら選んだ5人の婚約者候補の1人として、アルノーに選んでもらえるよう3年間必死に自分を磨き続けていました。
けれどある日無理がたたり、倒れて後頭部を打ったことで前世の記憶が覚醒。それによって冷静に物事を見られるようになり、ようやくアルノーは滅茶苦茶な人間だと気付いたのでした。
「オレの婚約者候補になれと言ってきて、それを光栄に思えだとか……。倒れたのに心配をしてくださらないどころか、異常が残っていたら候補者から脱落させると言い出すとか……。そんな方に夢中になっていただなんて、私はなんて愚かなのかしら」
そのためエレーヌは即座に、候補者を辞退。その出来事が切っ掛けとなって、エレーヌの人生は明るいものへと変化してゆくことになるのでした。
強い祝福が原因だった
棗
恋愛
大魔法使いと呼ばれる父と前公爵夫人である母の不貞により生まれた令嬢エイレーネー。
父を憎む義父や義父に同調する使用人達から冷遇されながらも、エイレーネーにしか姿が見えないうさぎのイヴのお陰で孤独にはならずに済んでいた。
大魔法使いを王国に留めておきたい王家の思惑により、王弟を父に持つソレイユ公爵家の公子ラウルと婚約関係にある。しかし、彼が愛情に満ち、優しく笑い合うのは義父の娘ガブリエルで。
愛される未来がないのなら、全てを捨てて実父の許へ行くと決意した。
※「殿下が好きなのは私だった」と同じ世界観となりますが此方の話を読まなくても大丈夫です。
※なろうさんにも公開しています。
わたしのことがお嫌いなら、離縁してください~冷遇された妻は、過小評価されている~
絹乃
恋愛
伯爵夫人のフロレンシアは、夫からもメイドからも使用人以下の扱いを受けていた。どんなに離婚してほしいと夫に訴えても、認めてもらえない。夫は自分の愛人を屋敷に迎え、生まれてくる子供の世話すらもフロレンシアに押しつけようと画策する。地味で目立たないフロレンシアに、どんな価値があるか夫もメイドも知らずに。彼女を正しく理解しているのは騎士団の副団長エミリオと、王女のモニカだけだった。※番外編が別にあります。
離婚する両親のどちらと暮らすか……娘が選んだのは夫の方だった。
しゃーりん
恋愛
夫の愛人に子供ができた。夫は私と離婚して愛人と再婚したいという。
私たち夫婦には娘が1人。
愛人との再婚に娘は邪魔になるかもしれないと思い、自分と一緒に連れ出すつもりだった。
だけど娘が選んだのは夫の方だった。
失意のまま実家に戻り、再婚した私が数年後に耳にしたのは、娘が冷遇されているのではないかという話。
事実ならば娘を引き取りたいと思い、元夫の家を訪れた。
再び娘が選ぶのは父か母か?というお話です。
完結 愚王の側妃として嫁ぐはずの姉が逃げました
らむ
恋愛
とある国に食欲に色欲に娯楽に遊び呆け果てには金にもがめついと噂の、見た目も醜い王がいる。
そんな愚王の側妃として嫁ぐのは姉のはずだったのに、失踪したために代わりに嫁ぐことになった妹の私。
しかしいざ対面してみると、なんだか噂とは違うような…
完結決定済み
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!
ろき
ファンタジー
ブラック企業で消耗する社畜・白瀬陸空(しらせりくう)の唯一の癒し。それは「白いもふもふ」だった。 ある日、白い子犬を助けて命を落とした彼は、異世界で目を覚ます。
ふと水面を覗き込むと、そこに映っていたのは―― 伝説の神獣【フェンリル】になった自分自身!?
「どうせ転生するなら、テイマーになって、もふもふパラダイスを作りたかった!」 「なんで俺自身がもふもふの神獣になってるんだよ!」
理想と真逆の姿に絶望する陸空。 だが、彼には規格外の魔力と、前世の異常なまでの「もふもふへの執着」が変化した、とある謎のスキルが備わっていた。
これは、最強の神獣になってしまった男が、ただひたすらに「もふもふ」を愛でようとした結果、周囲の人間(とくにエルフ)に崇拝され、勘違いが勘違いを呼んで国を動かしてしまう、予測不能な異世界もふもふライフ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる