勘違いで白馬の王子様に陥れられた令嬢は案外愛されています

麻生空

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私の名前はノア。

ノア・イグリス

イグリス国の第二王子である。

母は側妃と言う立場だが、国内では結構権力のあるハウゼル辺境伯の一人娘だった。

もともと、母は辺境伯の後継者だったが、今の国王と出会った事でその権利を放棄して王都へと来たのだ。

当時は珍しい恋愛結婚と国民は喜んだが、結婚式を後1ヶ月と待ったある日、帝国から横槍が入り、予定していた二人の結婚式は帝国の王女と当時王太子だった父との結婚式へと様変わりしてしまったと言う。

母はその結婚式の1ヶ月後にひっそりと二人だけの結婚式をしたらしく。

けど、その時には私の兄、もしくは姉がお腹の中にいたそうだ。

けど、母は妊娠6ヶ月の頃に流産してしまっている。

私も詳しくは聞いていないが、侍女の話では帝国の使節団を接待している時に起きた事らしい。

本来は正妃になった元帝国の王女が接待するはずだったが、急遽母にその代役を頼んだらしく。

当時、何があってそうなったのか、詳しく知っている者はいない。

しかし、その後私を身籠った母が体調不良を訴えて辺境伯領で出産まで療養した事から、きっとあの帝国の王女が何かしら企てていた事は伺える。

それに、幼い私は長期の移動は大変だからと辺境伯領で12歳まで育てられた。

勿論、母は私が3歳の時には王宮へ呼び戻されたが、当時の私はその事情を知らずにだいぶ母を罵ったのは覚えている。

今なら私の身を考えて辺境伯領へ置いていった事は痛い程分かる。

何故なら、王宮に戻ってからというもの、毎日が命の危険と背中合わせだったからだ。

辺境伯である祖父に鍛えられなかったら、私は王宮に来た次の日には死んでいただろう。

だから、分かる。

私の前の母の子を殺したのが誰か。

そて、私が王宮に戻った時には第一王子のユリウスが次期王太子と目されており。

私は敢えて目立たぬように、色々手を抜き正妃の目に極力止まらないよう心掛けた。


それが、私の母を守る事になると理解していたからだ。

故に、講師の方にもお願いし、第二王子は第一王子より劣ると言う噂も流して貰っている。

色々工作して何とかここまで来たのに、最近再び刺客の数が増えている。

ユリウスは立太子したのに、何故刺客が増えるのか?

もう私はユリウスが王位を継ぐのに何の障害にもならないはずなのに。

王族の待合室で一人待っていると、正妃を先頭にユリウスとその妹のミリアが入って来た。

「あら、もう来ていたの?」

私を見下すように正妃は言う。

勿論、毒物や刺客がいないか先に来て確認していた事は内緒だ。

「皆様をお待たせするのも悪いですので」

私はそう言うと無邪気に微笑む。

バカと思って貰えると良い。

「良い心掛けね」

フフフと不適に笑いながら目を細める。

その後ろから、国王が私の母を連れてやって来る。

先日より顔色が優れない様子の父。

今日も大神官を呼んで回復魔法を掛けて頂いたのだろう。

父にはもっと長生きして貰わねばならない。

私があの正妃の首を捕まえられるその時まで。
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