妾はバイトすることにしました

麻生空

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15執事を怒らせてはいけません

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「我が主君たるラッセン家のご令嬢ともあろうお方が、まさかこのようなウサギ小屋に住んでいらっしゃるとは……お嬢様は貴族としての矜持や羞恥心はないのですか?それとも、これはお嬢様を陥れる為の行いなのでしょうか?あの糞国王め、舐めやがって」

滅茶苦茶怒ってますよ。
これ。

「違うのキルト。これには色々理由があるのよ」

嫌、理由は色々ないけど。

単なる金の問題だけなんだが。

「だって、ここの後宮は衣食住全てにお金が掛かるんだよ。この部屋だって一番安い部屋で1ヶ月一万リン掛かるし、食事も一食一番安い物で二千リンだし、晩餐とか夜会の参加費用だって実費なんだよ。毎月二万リンではこの生活だって私には贅沢な位なんだから」

私の言い分にキルトの眉がピクリと動く。

「それでね。生活費が足りない妾の為に王宮での職の斡旋もしているらしくてね。今日、王妃様の口添えで騎士団の職に着く事になったんだ。勤務日は3食付きだし、何より色々な竜騎士の方達と一緒に戦えるんだよ」

思わずうっとり話すと、更にキルトの眉がピクリと上がる。

あれれ?
これってヤバイ雰囲気かな?

「ほら、私って一人っ子でしょう。竜騎士団で強い独身の男性と知り合えたら良いかな~と。ついでに、男装して身分も誤魔化して接すれば相手も素で接してくれると思うし、ついでに良さ気な戦力になりそうな人も引き抜きして行けるかなって……」

大分キルトの好きなワードでよいしょしておいたけど……。

そう思ってキルトを見れば、また深いため息をつかれた。

「お嬢様の言い分は解りました。が、私の可愛い愛弟子を妾に寄越せとのたまった重鎮どもに密かに嫌がらせをしていたら、体面だけ取り繕うだけで厚待遇で三年間を過ごさせる。陛下からは『身一つで来て頂いて大丈夫』と手紙には書いてあったのに?」

「アイツ締めるか」とかボソリと言わないで貰いたい。

違う意味で怖いからさぁ。
それに厚待遇って何?
重鎮に嫌がらせも気になるよ。
でも、キルトをこのままにしておけば嫌がらせの領域がヤバイ領域になるのは明白。
兎に角だ。
ここは穏便に対応してもらわなきゃ。

「まぁ、それは良いよ。掃除するのも部屋が狭ければ魔力だってそんなにかからないし。日中は殆ど出掛けているから、ここは寝る為だけに戻る部屋だから。正直ベッドだけでも良かったと思うんだよね」

一応取り繕っておくけどキルトの目は据わっている。
陛下に護衛の数増やした方が良いって投書しておこうかしら。

「分かりました。お嬢様が婿探しに意欲的になったのは僥倖ぎょうこうです」
いや……言葉の例えだよ。
キルトにいっつも言われていたから点数稼ぎだよ。
それに、婿探しまで具体的には言っていないよ。
「その為に男装ですか?それも良い策かもしれません。何せ、お嬢様と結婚されたら爵位がもれなくついてくるんです。下心や打算的な男に引っ掛かってしまう事なくお相手を見極めるのには良い策かと」
そうなの?
男の人も女の人みたいに同性の前では態度違うの?
「しかし、それにしても話が違い過ぎますねぇ。やはりここは一つ絞めに行きますかねぇ」
フフフフと嗤うキルト。
冗談じゃない。
重鎮の頭は代わってもいいかもしれないけど。(良くないだろう)
でも、陛下はヤバイ。
相手は陛下だ。
一国の主だよ。
ここは……
「あっ、でもねキルト。取り敢えず王妃様が全面的に協力してくれるって言うから大丈夫だよ」
そこまでは言ってはいないけど……。
「それに、やっぱり後宮に押し込められていたら体が鈍りそうだったし」
色々面倒そうな事になりそうな予感はあるけど。
「でも、何だかんだあるけど、私の半身のグーとまた毎日会えるから良いかなぁって」
それだけはラッキーだったなぁ。

「分かりました。お嬢様に免じて今回だけは目を瞑りましょう」

「ありがとうキルト。大好きよ」
両手を祈るように握りしめて盛大に感謝してしまう。
何で私が陛下のフォローしなきゃなんないのか。
取り敢えず「ほっ」とした。

「では、お昼に着くようにグーを飛ばします」

「ありがとう」

「いえいえ」

そう言うとニコリと微笑むキルト。

その笑顔が何だか怖いんですけど……。

「後で、お世話になる上司の方ともお話をしませんといけませんしねぇ」

そう言って再び笑顔を振り撒くキルト。

正直それは勘弁して貰いたいんだけど。

「ではお嬢様。ウサギ小屋で良い夢を」
 そう言って一方的に通信を切られた。

ドッと汗が吹き出す。

嫌な汗だ。

「体を綺麗にする前に通信しておいて良かった……」

じゃなきゃ、浄化魔法の二度手間だったから。
 何となく嫌な予感はするけど……

「ん~。取り敢えず寝ますか」

私は軽く浄化魔法を全身にかけると簡素な寝間着に着替えて寝るべくロフトの階段を登った。

「おやすみなさ~い」

そうして、後宮二日目の夜は更けていったのだった。

まさか、愛竜のグーちゃんが災厄を連れて来るとは知らずに。
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