王女から逃げる為に頑張った結果

キース視点1

「貴方がウイナルド公爵の嫡男キース様ね。何時振りだったかしら？」

数日前、突然王命にて謁見をした時、陛下の隣から俺を見下すように見る王女に嫌悪感が沸いた。

幼少期より数回お会いした事があるが、何故か苦手意識が強くあまり親しく話した事などなかったのだ。

「この度、そちがアンジェラ姫の降家先に最有力候補として名が出た。そなたには既に将来を誓った者はおるか？」
本来婚約者がいれば断る事は簡単だった。
しかし、生憎と俺にそんな相手はいない。
でっち上げるにしても根回しは必要だ。
もしここで婚約者がいるとか言えば直ぐに裏をとられるだろう。
そんな状況で陛下のその問い掛けに「はい」と言う者が果たしているだろうか？
「いえ……そのような者は残念ながら……」

大体この国の男は結婚が遅い。
20代までは色々遊んで30代に入ってやっと身を固めるのが普通。
40代で結婚したなんて話も多い位だ。

現在22の自分からしたらまだまだ遊びたい歳だ。
婚約者なんて面倒な存在がいたらそれもままならない。

だが、王女は今年で20。
女性としては行き遅れまで後数年。
家格からして話が出るとは思っていたが。
「王女殿下がよろしいのであれば、私に異存はございません」

本当は言いたいことが山程ある。
しかし、今の自分は公爵ではない。
あくまでも公爵位暫定一位に過ぎない。
何の地位もないただの若造だ。

「慎んでお受けいたします」

俺は深く頭を下げながら心の中で舌打ちした。

そして、少ししてから顔を上げると勝ち誇ったような余裕の笑みを浮かべる王女殿下が目に入った。

あぁ嫌だ。
こんな高慢な女。