王女から逃げる為に頑張った結果

王太子視点2

夜会の次の日は出勤時間を遅らせている。


何せ、羽目を外した貴族はそのまま次の付き合いへ行く者も多いからだ。
ナニとは言わないが、まぁ、想像の範囲だろう。
王宮でもその為に部屋を貸出しているのだから。
危ないワンナイトもありなのだ。
それに、この国はあまり処女に拘こだわらないから性には明るい。
お互いに相性を確認してからの方が愛人問題や離婚は少なくなるからだ。

今までそんな浮いた話の無かったキースの事だ。
まぁ、遅くても午後からは出勤して来るだろう。
そう安易に思っていた。


それに、王宮で夜会を行った次の日は午後から登城して2・3時間仕事を何となくして帰るのが貴族らしい仕事なのだ。

がむしゃらに仕事をするのは庶民出の文官の役目。

それが宮仕えでは多く見受けられているのだ。

しかし、王太子の執務室は違う。

仕事が半端なくある。

故に、兎に角能力重視なのだ。
出来ない貴族などいらない。

そんな訳で今は5名の部下がいる。
内、側近と言われている貴族が3名。

どんな行事があろうと不変の仕事場。
お昼前には全員揃う。

キースもその内の一人なのだ。

普段、夜会の翌日であろうと午前中には登城するのに、何故か今日は既に昼を過ぎているのに来ない。

側近の一人、ハーン侯爵家の次男レイバンが私の所へと来る。


「先日依頼されていました治水の見積りです」

レイバンはそう言うとキースの机の方を見た。
「そう言えば、キースがまだ来てないですね。昨夜は王女殿下のエスコートをしたとか。詳しく話を聞きたかったのですが……」

そう言って私の方を向く。

一応アンジェラとの約束もある。

「キースだが、今日はアンジェラの所へ貸し出ししているのだよ」

具体的には言わず、取り敢えず話を濁す。

本当に何をやっているのか……。

私は机を二回指でコンコンと鳴らす。

普段から私に着いている『影』に『調べろ』と合図を送った。

早ければ今夜にでも解るだろう。

私はそう信じてキースの事は保留した。

が、どうやらアンジェラには強い駒がいるようで、私の影達はキースの行方を知るのにそれから１日を要してしまった。

そんな優秀な参謀がアンジェラにいたか？
甚はなはだ疑問である。