王女から逃げる為に頑張った結果

キース視点23

家に帰ると俺の部屋にはお互いに嫌悪し合うアンジェラがいる。

何の因果かそんなアンジェラと結婚しなければならなくなった俺。
そして、妻となるアンジェラの部屋の用意が出来るまで同室で寝る事になってからどれくらい立つのか……。

まぁ、ベッドは別々だから只の同居人な気分だが、それにしたって毎日同じ部屋の空気を吸うと思うと気持ちも滅入る。
だから、やたらと仕事を入れて自宅へ帰る時間を遅くしていたのだ。

お陰でここ数年滞りがちになっていた仕事が追い付いてしまった。

俺のタブルベットは優雅にアンジェラが使っている次第だ。
だから、そんなアンジェラを眺めながら俺は部屋の隅に置いた簡易ベッドへ寝るのだ。

それに、最初の頃は起きて待っていたアンジェラだが、最近は寝ている事が多い。

だから、寝ているアンジェラを起こさないようにと寝室へ入るのだ。
気分はもうこそ泥気分だ。

「ん～っ」

寝返りを打つアンジェラは何処と無く幼く見えてくるのだから慣れと言うものは恐ろしい。

「大体、いくら書類上は夫婦だからと言って、好きでもない男とよく同じ部屋で寝る事を了承したな」

これには本当に驚かされたのだ。

契約結婚の事は両親には言っていない。
だから「夫婦なんだからアンジェラちゃんの寝室が出来るまで貴方の部屋に泊まらせなさい。どうせもう子供まで出来ているんだし」との母の言い分に反論が出来なかった。

そして、本日も密かに行方を調べているアンについて、何も進捗がない。

「こんなプライドの高い女が、まさか何処の馬の骨とも解らぬ男の子供を身籠るとか……有り得ないよな……」

何度かそれとなく聞き出そうとするも、何時も不発に終わってしまう。

「女の子なら何処かへ嫁にやるとして、男の子なら？」

いや……自分の子供でもあるまいし、公爵家の跡取りとか有り得ない。

かと言って、両親に本当の事を言う訳にもいかない。

「早くアンを見つけて俺の子供を生んでもらわなければ」

俺は何となくアンジェラを見ながらそう呟いていた。

微かに膨らみつつあるお腹。

明日はとうとう結婚式だ。

色々な調整もあり、妊娠５ヶ月を過ぎもう直ぐ6ヶ月になろうと言う時期、等々俺も年貢の納め時になる。

「あぁ……明日が憂鬱だな」

俺はため息をつきつつ簡易ベッドへと潜り込んだのだった。