言語研究部(笑)

大里 悠

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『現代風昔話』(一)

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「皆、聞いてくれ!今日のテーマを発表する!」

    部長が部室に入りながら僕達にそう言った。

「テーマは「『昔話』もしくは『物語』だ」むかしばなしって、かめ!?何故言う前に知っているんだ!?はっ!まさかついに以心伝心を……」
「いや、お前が俺に相談しに来てただろう?その案出したの俺だし」
「くっ!そうだった、すっかり忘れていた」
「……バカか?」
「なっ!断固として否定する!」
「残念だが事実だ」
「そんな!?」
「まあ気にするな。ひめがバカでアホなのは元からだろう」
「りゅう先生まで!って私のことは置いといて、言われてしまったがテーマは昔話や物語だ」
「まぁあまり難しく考えなくても大丈夫だ。気になった言葉や言葉遣いについて色々と話し合うだけだしな」
「また先に!?」
「資料になりそうな物はもう図書室から借りてきたからそこから見ても良いぞ」

    最終的にかめ先輩は部長を無視しながら説明をしていた。

「まったく……あ、そういえばかめ、最近だと昔話を現代風にしたものとかもあるらしいぞ」
「へぇ、そうなのか。例えば?」
「ポピュラーなのだと桃太郎とか、浦島太郎とか、鶴の恩返しとかがあったな」
「どんなところが今風なんですか~?」
「はとも気になるか?仕方ない、話してあげよう!」
「わ~い」
「じゃあとりあえず……金の斧と銀の斧から…」
「そこは桃太郎とかじゃないのか?」
「まだ読んでないからな。じゃあ話すぞ」

    それから部長は息を整えてから話し始めた。

「昔、というほどではないけれど昔々あるところに気の弱い素直な青年がいました」
「ちょっと待て」
「む、急に止めてどうしたんだ?かめ」
「昔じゃないんだったら昔々って言わなくて良いだろ?」
「じゃあ……最近最近?」
「いや、最近かどうかも知らねぇから。あるところに、からで大丈夫じゃないのか?」
「ふむふむ………じゃあ改めて……あるところに気の弱い素直な青年がいました。青年は仕事を終えた帰りに、少し大きな池の前を通りました。しかしその時、段差に躓いて転んでしまい、手に持っていたバッグに入っていたペンを池へ落としてしまいました。青年が落ち込んでいると池の中から輝くような髪をした女性が出て来ました」
「元のものとあまり変わらないんだな」
「その女性は落ち込んでいる青年にこう言いました。『貴方が落としたのはこの純金のペンですか?それとも純銀のペンですか?』青年はその二つではなく正直に黒色の普通のペンです、と言いました。」
「ふむ。現代風ではあるが、本筋は同じだな」
「女性は『正直者ですね。正直者には純金と純銀のペンも授けましょう』と言いました」
「オノがペンになっただけですね」
「が」
「が?」
「青年はこう言いました。『私には黒色のペン以外は必要ありませんので頂けません。第一、急に金や銀のペンなんて持っていたら襲われそうで怖いです。なので黒色のペンだけ持って行きます』」
「え?貰わないのか?昔話では貰ってたのに………」
「これを聞いて女性は驚きの表情を浮かべながらも『そうですか。ではせめて、この黒色のペンと同じ物を差し上げましょう』と言いながらペンが沢山入った箱を青年へと渡しました。青年はこれを受け取り礼を言ってから家へ向かって歩いて行きました」
「まじか。水から出てきた人から箱ごとペン貰うって」
「次の日の夕方、前日のやり取りを見ていた、お金が好きでずる賢い青年が池の前へとやってきました」
「いやもうその時点でオチの想像がつきそうなんだが」
「ずる青年は『あーこんな所に段差がー』と棒読みで言いながら、さも偶々たまたまつまづいたかのようにして池の中へ大量のペンを落としました。」
「ずる青年ってもはやただずるい青年になってるぞ。しかも棒読みって」
「暫くすると池の中から女性が出てきました。その女性はずる青年へ『貴方が落としたのはこの大量の純金のペンですか?それとも大量の純銀のペンですか?』と言いました。」
「もう既に違和感の塊だな」
「ずる青年は『大量の普通のペンです』と言いました」
「大量の普通のペンって!?」
「女性は『正直者にはこの大量の純金と純銀のペンも渡しましょう』と言って大量の純金と純銀と普通のペンをずる青年へ渡しました。ずる青年は心の中で大いに喜びました」
「元のは嘘をついてオノを返されなかったんだよな」
「ずるはその大量のペンを持って家へ帰ろうとしました。しかし、持ち帰ろうにもあまりに重く一人では持って帰ることが出来ません」
「どんだけペン落としたんだ!?」
「どうしようかと悩んでいると、周りに人が集まっているのが見えました。ずる青年がなぜだろうと考えていると周りにいた人々の一人がずる青年へ『その金や銀はどうやって手に入れた』と言いました」
「なんかもう良く分からないんだが」
「ずる青年は正直に言いましたが、話し掛けてきた人は『どこかで盗んだんじゃないのか』と言ってずる青年へ近づいて行きました。その後ずる青年は逃げようとしましたが、頭に何かが当たった後で気絶してしまい、起きた時には全てのペンが持ち去られていました」
「泥棒だったのか」
「ずる青年は暫くの間呆然としてから、肩を落としながら家へと帰って行きました。一方、素直な青年はその後も変わりない普通の暮らしをしていきました。めでたしめでたし」
「めでたし、なのか?」
「まあ、ずる青年はめでたくないだろうがな」

    部長の話しは面白かったけれど、絶対めでたくは無いと僕は思っていた。


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