憧れていた魔法の世界なのにしょぼい魔法しか使えない

一ノ瀬満月

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第6話 魔力量測定

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 わたしがルシアンと出会ってから数ヶ月が経過し、魔法の練習を重ねるうちにランク1ではあるけれど、水魔法も火魔法もかなり上達したと思う。エレメントフェラインィグングも上手く使えるようになってきた。魔法がこんなに楽しいと感じるのは、ルシアンとルシアンがくれた火属性指輪のおかげ。だから、いつかルシアンに恩返しがしたいって思っている。

 今日もルシアンと一緒に森の中で魔法の練習をしていると、ルシアンがこんなことを言ってきた。

「プラムってありえない早さで魔力量が増えているよね?」
「そう?3歳の時から毎日魔力を使い切っているからかも?」
「そうか!3歳で適正を調べても、普通は5歳から魔法の練習を始めるのだけれど、プラムは3歳の時から魔法の練習を始めていたのだからその分魔力量は増えているだろうし、何かに魔力を使う必要もないから毎日使い切れるのか」

 ルシアンは「僕よりプラムの方が魔力量が多いかもしれない…」など、一人でブツブツ言っている。今のところわたしの魔力の使い道がないから、毎日使い切っても誰も気付かないし何も言われないのよね。

「ランク1の魔法しか使えなくても、魔力量が多ければ何かの役には立つかなぁ?」
「えっ!?魔力量ってすごく大事だよ!!魔力回復薬って結構値段が高いけれど、薬屋で一番売れている商品だから、不足した魔力を補う為に購入する人が多いということだし、ランク1の魔法を長時間使い続けられる方が重宝されることも多いよ」
「そうなの?」
「うん。火魔法の属性を持っていなくても魔力量さえ多ければ、属性指輪を使うことで一晩中灯りをともしたり、自分やその周りを暖め続けたりすることが可能だからね」

 なるほど…災害の時とかに役立ちそうな感じなのね。でも、うちの集落で属性指輪を持っている人を見たことがないから、貴族社会ではってことなのかな?

「わたしが灯りの火魔法を使用してどのぐらいの時間で魔力が枯渇するのか、一度試してみようかなぁ」
「子供のうちはそんな無茶をしてはダメだよ。睡眠の方が大事なんだからね!」

 ルシアンに本気で怒られてしまった。

「……ごめんなさい」

 わたしがうつむき加減で謝ると「大声で怒鳴ってすまない」とルシアンも謝った。睡眠をおろそかにすると体や魔力に支障をきたすため、ルシアンの家では睡眠を重要視しているらしい。田舎だと夜は真っ暗だから寝る以外にやることがなくて気にしたこともなかったけれど、転生前は夜更かしなんて当たり前だったなぁと、転生前の世界のことをふと思い出してしまった。

◇◇◇◇

 数日後、わたしがいつものように森の中の川沿いで魔法の練習をしていると、後ろの方から「プラムーっ」というルシアンの声が聞こえてきた。わたしが振り向いて「ルシアン、おはよう」とこちらに向かって走っているルシアンに言うと、わたしの目の前まで来たルシアンが持っていた鞄から何かを取り出した。

「これ、魔力測定器なんだけど、プラムの魔力量を測ってもいいかな?」

 魔力測定器なんて初めて見た。これってお貴族様の家庭には普通にあるものなのかな?なんて考えていると、ルシアンが「まず僕の魔力を測ってみるから見てて」と言って、右手で測定器を掴んだ。すると、測定器は青白い光を放ち始め、メモリが8を示したところで光が収まった。

「これが僕の今の魔力量だよ」

 と言われても、わたしは魔力量の多い少ないの基準がわからないから、「そうなんだぁ」としか答えられなかった。

「このボタンを押して…っと、測定器をリセットをしたから、次はプラムの番ね」
「ここをつかむだけでいいの?」
「ここを掴みながら、自分の体と測定器を一体化させるようなイメージで魔力を循環させてみて」

 測定器も体の一部だと思って魔力を循環させるってことかな?

 わたしは測定器を掴んで魔力を流し始めると青白い光を放ち始め、測定器から自分の魔力が戻ってくる感じがした。そのまま魔力を巡らせ続けると、しばらく動き続けていたメモリが止まって光も消える。測定器のメモリを見たルシアンがすごく驚いた表情を見せた。

「……プラム、何をしたらこんな魔力量になるんだい」

 測定器のメモリは7.8を示している。わたしの魔力量はルシアンより少ないのに、ルシアンの驚きようはどういうことだろう?

「毎日魔力が枯渇するまで魔法を使っただけだよ?」
「僕が住んでいる地域では、魔法の練習を始めるのは5歳からなんだけど、メモリ1前後の魔力しかないのが普通なんだ。しかも、メモリ7以上の魔力量って成人でもそんなにいないんだよ」
「でも、ルシアンは8歳でメモリ8の魔力量なんでしょ?ルシアンも凄いってことになるの?」

 ルシアンは黙ったままその場に座って考え出してしまった。わたしもルシアンの考えがまとまるまで座って待つことにする。ふわぁ~、ちょっと眠いかも……

・・・

「プラム、起きてっ」

 わたしの体が誰かに揺さぶられているのを感じてゆっくり目を開けると、わたしの両肩を掴んでいるルシアンが目の前にいた。

「ん~。あれっ?わたし、もしかして寝てた?」
「うん、ふと気付いたらプラムが寝ていたから、少しの間そのまま寝かせていたんだ。ぼくのせいですまない」
「でも、こんなところで寝ていたのに、体はポカポカする」
「風邪を引かないようにぼくの火魔法で暖めていたんだ」
「そうなんだ。ありがとう」
「ううん、そもそもぼくのせいだから……」

 ルシアンは少しばつの悪そうな顔をしている。考えがまとまるまでに時間がかかったのかな?

「僕の家のことはまだ話せないんだけど、家系的に魔力量などが重要視されていて、僕は普段から魔法の先生に教えてもらいながら、魔法の技量だけじゃなくて魔力量を増やすことにもかなり力を入れているんだ」

 ルシアンは普段からそれだけ頑張ってるってことだよね。魔法の先生かぁ、ちょっとうらやましいな。

「だから、ぼくの魔力量が多いのはたいして凄くもないのだけれど、プラムはまだ5歳なのに独学で学んだ上にもうすぐ僕に追いつきそうな魔力量を持っているから、本当にビックリしたんだ」
「水魔法ランク1しかないけどね」

 わたしはちょっと自虐的に言ってみた。どれだけ頑張ってもランクが上がることはないもんね……

「ねぇ、プラム。僕と一緒に魔法の練習をする時だけ属性指輪を貸すから、火魔法以外も練習してみないかい?」
「えっ?いいの?」
「うん。火魔法の属性指輪以外あげることは出来ないけれど、一緒にいるときだけ他の属性指輪を貸すから練習しよう」
「うれしい!!ルシアン、ありがとう。今から他の属性魔法の練習をしつつ、いつか属性指輪が買えるように頑張って働くね!」

 属性指輪の値段はわからないけれど、地道にコツコツ貯めていけば1つか2つは買えるようになるよね。ルシアンのおかげでわたしの魔法人生が更に楽しくなる。わたしはワクワクした気持ちでいっぱいになった。


「そうそう、この前話していた髪の色や目の色を変えたりする魔法や、認識を阻害する眼鏡のことだけれど、兄上と魔法の先生に聞いてみたら、ランク2の光魔法か闇魔法で可能だということがわかったんだ」
「えっ!?本当に!?」
「認識阻害眼鏡は職人に作ってもらう必要があるのだけれど、髪の色と目の色は練習次第で好きな色に変えられることがわかった。光魔法なら明るい色、闇魔法なら暗い色という性質があるみたいだけどね」

 本当に髪や目の色を変える魔法があったんだ。しかもルシアンはそれを使える属性もスキルもある。

「まだ、練習し始めたばかりだけど、安定してその魔法が使えるようになったら、プラムが住んでいる集落にも行けるようになるよ」
「わぁ。楽しみに待ってるね!!」

 ルシアンに我が家の果樹園を見てもらいたかったからすごくうれしい。あと、ルシアンがどんな髪の色、目の色に変えるのかも今から楽しみになった。
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