最強魔導士となって国に尽くしたら、敵国王子様が離してくれなくなりました

湊一桜

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【第一章】片想い編

32. 王子様は誤解されたい

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 いつものように魔導士団に行くと、

「おめでとう、ローザ!!」

よく分からないが、みんなから祝われた。

 おめでとうって何!?まさかレオン様とキスしてしまったことが、もう広まってしまったの!?

 真っ赤な顔で狼狽える私に、仲間は口々に言う。

「今朝、リリーから聞いたよ!」

「殿下と一夜を過ごしたんだって!?」

「魔力交換した相手とすると、すっごいんでしょ!?」

 ちょっと待って!なんでそんなことになってしまったのだろう。確かに一夜を過ごしたが、やましいことは何もない……と思いたい。正確にはレオン様には迫られたが、何も起こっていない。本当に、未遂すらしていないのだ。

 だけど、レオン様とのキスを思い出した。ただ唇が触れるだけのキスだが、胸がきゅんきゅんして止まない。思い出すだけで、レオン様のことで頭がいっぱいになってしまうのだ。

「ローザ、顔が真っ赤だよ!」

「そんなに良かったの?」

 みんなにからかわれ、

「本当に何でもないんだから!!」

私はパニックを起こしたまま必死で否定した。
 だが、実際、何でもないわけではない。キスもしてしまったし、お互いの気持ちも伝え合えた。私たちは確実に前進しているのだろう。


「空も晴れたし、野菜もびっくりするくらい育ってるし、ロスノック帝国もやっと平和になりそうだね!」

 その言葉に大きく頷く。
 
 それが晴れた理由については、私はまだ正確には聞いていない。だが、間違いなくあの黒い物体が関係しているのだろう。
 ロスノック帝国の人々は、飢饉に悩まされ、グルニア帝国に攻め込まれ、とても苦労をしてきた。これからはその苦労さえ笑えるような、明るい国になって欲しい。




「みんなー!遅くなってごめんねー!!」

 はあはあと息を切らしてリリーが施設の扉を開けた。そしてリリーは、私を見て目を丸くする。

「ローザ!!」

 リリーは満面の笑みで私に駆け寄る。こんなリリーを見ていると、レオン様とのデマを流されたことなんて吹っ飛んでしまう。

「ローザ!元気になったんだね!良かった!!」

 リリーはぎゅっと私にしがみついた。私もそんなリリーをしっかりと抱きしめる。レオン様とは違う、小さくて柔らかいリリー。こんな小さな体なのに、あんなに強靭な魔法を繰り出すなんて驚きだ。そして、出会った時は苦手だったのに、いつの間にかリリーが大好きになっていることに気付く。

「心配させてごめんね!」

 レオン様やリリー、そして魔導士団のみんなに囲まれて、私は信じられないくらい幸せだ。




 リリーとの抱擁を終えひと息ついたリリーは、思い出したように告げる。

「はっ、そうだ!今からレオン様が来られるんだった!」

「……え!?」

 もちろん私は、そんなことは聞いていない。そして、レオン様が魔導士団に来るということは、波乱を意味する。レオン様はまた、痣を見せびらかし私を追い回すのだろうか。それともまさか、キスを迫ってくるのだろうか。レオン様の頭のネジはさらに吹っ飛んでしまったから、何が起こっても不思議ではない。レオン様は、本気で魔導士団の男が私を狙っていると思っているから。

 それに、レオン様に会うのだってドキドキする。今朝、気持ちを確かめ合ってキスをして……前にレオン様が魔導士団に来た時とは、関係性が変わってしまった。もちろんみんなが思うような関係は持っていないが、特別な人であることは言うまでもない。

 レオン様の話題が出ると、私は一斉に注目を浴びる。

「うわぁー。俺、また殿下に睨まれるのか」

 カイトが意気消沈して言う。

「むしろ、ローザにまとわりついて、見せつけられるんじゃない?」

 それはそうかもしれない。そうならないように、私は必死で逃げるのみだ。


「殿下、しつこそうだもんねー」

 きゃっきゃっと笑うみんなと、恥ずかしい私。

「もう!本当にそんなんじゃないって!!」

 真っ赤な顔で叫んだ時だった。



「そんなんじゃないとは、どういうことだ」

 大好きな声がした。その声を聞くと胸がキュンと鳴る。だが、この状況下では逃げ出したい気持ちのほうが大きいかもしれない。
 ビクッと飛び上がった私は、恐る恐る扉のほうを見た。するとそこには、深緑のシャツの袖を少したくし上げたレオン様が立っている。数人の護衛と、マリウス様とともに。

 私は咄嗟に見なかったことにしようと思い、目を逸らす。だが、レオン様は容赦してくれない。

「ローザ。一夜を共にし愛を確かめ合った身として、それはないだろう」

 うわっ。一言目に、一番誤解される言葉を吐いてきた。……というか、そんな言われかたをされると、誤解されるしかない。

 私は真っ赤な顔で俯く。だが、レオン様はさらにおかしなことを言い始めたのだ。

「皆の者、私はローザと結婚に向けて動き始めようと思う」

「は!? 」

 思わず大声を出してしまった。

 ちょっと待って。……け、結婚!? いきなり、結婚!?
 私はプロポーズも受けていないし、そんなことは聞いていない。

「そもそも、君はどうしていつも、右手首にスカーフを巻いているんだ。
 私との愛の証を、そこまでして知られたくないのか?」

 みんなは知っているけど、とうとうレオン様は自分から言ってしまった。レオン様には申し訳ないが、私はいちいち右手首を見られるのが嫌だったから……だからスカーフを巻いているのだ。
 魔導士団のみんなは何も言わないが、良く思わない人だっているはずだ。そこは察して欲しい……

「見られたくないのなら、君の体全身に私の証を付けるしかないようだな」

 語弊しかない。だけどレオン様はみんなを牽制したいようだから、諦めるしかない。陰キャの私を狙う人なんているはずがないのに。

 前にいる魔導士たちが震えている。きっと、笑いを我慢しているのだ。これ、公開処刑じゃん!本当にやめてください!!

 だが、意外にもレオン様は、私に対する執着の話をここで終えた。そして、表情一つ変えず、真面目な話を始めるのだった。





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