最強魔導士となって国に尽くしたら、敵国王子様が離してくれなくなりました

湊一桜

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【第一章】片想い編

33. これからも国に尽くしたい

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 レオン様は魔導士団の皆の前に立ち、真面目な話を始めた。マリウス様と、数人の護衛を伴いながら。

「私とローザ、そしてリリーは、数日前に空に浮かぶ黒い物体を見つけた。そして奮闘の末、見事それを落とした。

 私が魔力を失ったローザを看病している間、マリウスたちがその物体を調べてくれた。それで、恐ろしいことが判明したのだ」

 恐ろしいこと……何だろう。
 先ほどのふざけた雰囲気とは打って変わり、辺りはしーんと静まり返っている。その静寂の中、マリウス様が口を開いた。

「黒い物体の中には、高度な機械がたくさん詰まっていました。そして、絶え間なく雲が吐き出されていました。
 使われている部品の一部にはグルニア帝国の印が刻まれており、グルニア帝国製のものと言って間違いはないでしょう」

「我がロスノック帝国の曇天は、グルニア帝国によって作られたものだったのだ。
 奴らは、ロスノック帝国を機能不全にし、侵略しようと思っていたのだろう」

 衝撃的だった。ロスノック帝国に飢饉をもたらした曇天は、グルニア帝国が作っていただなんて。
 罪もないロスノック帝国の人々に、苦しい思いをさせたグルニア帝国が許せない。

「グルニア帝国は、あの雲発生機を壊されて怒っているだろう。そしてまた、我が領土に攻めん込んでくるに違いない。
 その時、もちろん私は最前線に立つから……また、力を貸して欲しい」

 レオン様の言葉を聞いて震えた。グルニア帝国が攻め込んでくるだなんて。また、あの地獄のような戦闘が始まるだなんて。おまけに、レオン様は最前線に立つと言っている。……あの日も、レオン様は最前線にいた。

 魔導士団は今やピシッと背筋を伸ばしてレオン様の話を聞いていた。もちろん、私だって。
 レオン様は頭のネジこそ外れ気味だが、こうして全てを賭けて国を守ろうとしている。こんなレオン様の背中を見ているから、第二魔導士団もレオン様についてくるのだろう。

 だけど、必ず生き延びて欲しい。レオン様がこの世から消えるなんて、考えられない。




 レオン様の話を聞き、第二魔導士団の訓練にも身が入った。皆が近付く戦いを、全力で待ち構えているように見えた。

 私だって、レオン様の近くで戦いたい。レオン様が私を助けてくれたように、私だってレオン様を助けるんだ。絶対、死なせない!!

 そう思っていたのに……

「ローザは、危険な戦いに来て欲しくない」

 レオン様は昼過ぎ、私に会って一言目にはそんなことを言う。だが、決心が固まった以上、私が参加しないという選択肢はない。

「レオン様、そういう贔屓はいけません」

 私はレオン様をまっすぐに見つめて告げる。

「私だって魔導士団の一員です。私にだって出来ることはあるはずです」

「分かっている。君が戦場に来れば、ロスノック帝国軍は勝利に近付く。

 ……でも、駄目だ」

 レオン様は悲しそうに告げる。私は経験値ゼロの陰キャだが、今のレオン様の気持ちは手に取るように分かる。レオン様はただ、純粋に私を危険に巻き込みたくないのだ。私はこんなにもレオン様に愛されて、幸せだ。だからこの幸せを、レオン様にも返したい。

 しっかりとレオン様を見つめて言う。

「私は、レオン様と共にいたいのです。
 レオン様は、初めて命を賭けてまで尽くしたいと思ったかたです。
 私だけが生き延びるなんて、そんな地獄はありません」

「ローザ……」

 レオン様は、感慨深いような、それでいて切ないような表情を浮かべる。そして、そのままぎゅっと私を抱きしめる。
 何度も抱きしめられたその腕に触れられると、幸せだと思う。レオン様が大好きだと思う。

 レオン様は私を抱きしめたまま、静かに呟いた。

「私に心を開いてくれなかったローザが、こんなにも思い慕ってくれて嬉しい。
 私は、君を必ず幸せにする」

 思い返せば、私は感情表現が苦手な女だった。自分を価値がない人間だと思い、人との間に壁を作っていた。
 だが、この国に来て、レオン様やリリーたちと出会い、私は変わった。人と関わり、愛し愛されることが、こんなにも幸せだとは思ってもいなかった。そして、この大好きな人たちと、これからもずっと幸せに暮らしたいと思う。

「共に生きましょう」

 レオン様に告げる。

「私はこれからも、レオン様の隣にいたいのです」

 顔を上げると、きゅっと口を結んだレオン様と視線がぶつかる。そしてそのまま、引きつけられるように唇を重ねた。

 重ねられた唇から、甘い吐息が漏れる。触れるだけのキスから、どんどん激しいキスへと変わっていく。キスしかしていないのに、体が熱を持って甘く蕩ける。
 これが魔力交換の威力なのだろうか。まるで媚薬でも飲んだように、離れられなくなる……

 長いキスの後、真っ赤な顔でレオン様を見上げる。すると、彼も余裕の無さそうな顔で私を見下ろした。そして、甘く切ない声で告げる。

「愛してる、ローザ」

 私はこうしてレオン様からたくさん愛をもらっている。だからいつか、数倍にして返してあげたい。



 
 はっと我に返ると、青空の下周りの人がいそいそと歩いている。わざと私たちを見ないようにして。こんな真っ昼間から、人目につくところで何をしているのだろう。ましてや、相手は第二王子だ。慌ててババっとレオン様から離れた。

「ローザ、なぜ逃げる」

 逃げるに決まっているでしょ!!むしろ、レオン様は恥ずかしくないのだろうか。
 そして、今後は人前ではいちゃつかないように気をつけようと強く思う。

 逃げる私を、レオン様は追いかける。そんななか、また魔力を感じて身構える。と同時に氷が飛んできて、私はそれを華麗に跳ね返した。ヘルベルト様の幼稚な嫌がらせは継続しているようだ。こんな嫌がらせをしても、私には効かないのに。

「相変わらず見事な防御だった」

 レオン様は楽しそうに笑う。

「君は私にも防御魔法をかけてくれているのだろう?
 君のおかげで、私もこの幼稚な攻撃に屈していない」

 レオン様は意地悪だ。私が防御魔法をかけずとも、こんな攻撃交わしてしまうだろうに。だけど、そう言ってもらえると嬉しくなる。
 私だって、レオン様のおかげで毎日が楽しい。レオン様と一緒なら、どんな幼稚な攻撃だって笑い飛ばせる気がした。


 


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