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武術大会と、追放された友
第29話
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ヒューゴは地面に這いつくばったまま、すがるような目で私を見続ける。私はそんなヒューゴを、動揺しきった瞳で見つめていた。
「メリッサ……」
彼は私の名を、切なげに呼ぶ。そして、顔を歪めて吐き出した。
「僕はお金こそないが、君を幸せに出来る。
君が無理矢理嫁がされたり悪魔辺境伯よりも、君をずっと愛している!」
「ちょっと待って、ヒューゴ……」
私は動揺して告げる。
「愛してるって何? ……私たち、友達でしょう!? 」
「僕は君を、友達だなんて思ったことは一度もない」
その言葉に、胸が引き裂かれそうになった。私はヒューゴを友達だと思っていたのに、ヒューゴは違っていただなんて。そして今、私の心がヒューゴに向いていないのは確実だ。こうやって話している今も、フリードのことを考えてしまう。
ヒューゴはムキになって告げる。
「メリッサは、悪魔辺境伯と婚約破棄したいんでしょ? それなら、僕と結婚しようよ!」
私は愚かだ。ヒューゴの気持ちを知らず、フリードと婚約破棄するつもりだなんて言ってしまった。もう、婚約破棄する気持ちは薄れかかっていたのに。ヒューゴはその言葉を、言葉通り受け取ってしまったのだ。
私はヒューゴを陥れたも同然だ。なんて愚かな女なのだろう。
なんて答えようか迷っている私に、
「どうするの、メリッサ? 」
ジルが聞く。聞かれなくても分かっている。私は、この地でフリードと暮らしたい。だが、遥かこの地まで私を迎えに来て、そしてその事実を告げられたヒューゴは何を思うのだろうか。
「ヒューゴ……ごめん……私はちゃんと、幸せだよ」
言葉にするたび、胸が痛む。
「ヤヌース伯爵領で暮らしている時よりもずっとずっと、今は幸せだよ」
フリードや周りの人に恵まれて、毎日楽しく生きている。フリードは、私のことをすごく大切にしてくれる。かつての私からは考えられないほど、今とても幸せだ。
「ごめん……私……きっとフリードが好きなの」
その言葉を告げると、ヒューゴが落ち込むことを知っていた。せっかくこんな僻地まで迎えに来てくれたのに、恩を仇で返すことになってしまう。だけど、みんなにいい顔をすることは出来ない。
そもそも、これは私が蒔いた種だ。私がヒューゴに思わせぶりな言葉を吐いてしまったから、ヒューゴが迎えに来てくれたのだ。
そんななか、
「やっと本心を言ってくれたな」
聞き覚えのある声が聞こえた。そして、その声を聞いた私は顔を真っ赤にして、口元を必死で押さえる。
近くにはいつの間にかフリードが立っていて、微かに口角を上げて私を見下ろしている。
「お前はやっぱり、俺に惚れているのか」
「ほ、惚れてなんかいないもん!」
そう言いながらも、顔は焼けるように熱い。最悪のタイミングだ。この恋心は黙っておこうと思ったのに、フリードにバレてしまうなんて。
まさかフリードは、私の気持ちを知って、急に態度を変えたりしないよね? 男は、釣った魚に餌をやらないだなんて言う。私はまた、『つまらない女』に成り下がったりしないよね!?
不安な私の頭を、フリードはそっと撫でた。そしてそのまま抱き寄せ、頬に軽くキスをする。こんなフリードを見て、ジルや騎士団の人たち、そして、ハイデマリーは固まっていた。その後一斉に目を逸らし、見ていないふりをする。こんな人々の様子を見て、私はさらに恥ずかしくなってしまう。
人々は、悪魔辺境伯が野蛮な小娘相手に、こんな態度を取るなんて思ってもいなかったのだろう。
「俺はお前の気持ちが聞けて、すごく嬉しい。飛び上がって喜びたいところだ」
……え!?
その言葉は本心なのだろうか。フリードは無表情だから、何を考えているのか分かりにくい。だが、胸の中では人一倍熱い思いを抱えているのだろうか。
顔を真っ赤にしてぽかーんとする私に背を向け、フリードはヒューゴに向き直る。そして、いつもの冷静な声で告げた。
「そういう訳で、メリッサはやれない。
だが、お前はかつて、ひとりぼっちのメリッサを庇ってやっていたと聞く。
メリッサはやれないが、俺はお前の力にはなりたい」
私はフリードの後ろ姿を見上げていた。そして、予想外のその言葉に驚くばかりだ。
ヒューゴは一瞬悲しそうな顔をした。だが、疲れた顔で必死に告げる。
「僕は……メリッサを連れ戻しに来ただけです。あなたのお世話になるつもりはありません」
ヒューゴの声は微かに震えていた。ヒューゴにとっては決死の覚悟なのだろう。相手は悪魔辺境伯と言われるフリードだ。こうやってヒューゴの前に立っているだけでも、その存在感には圧倒される。大柄で無愛想なだけではなく、見るからに強そうでもある。
私はフリードの繊細な部分も知っているが、他の皆は知らない人も多い。ただただ強くて冷酷な指導者と思っているのかもしれない。先ほどの、フリードの行動を見て、人々が一斉に見てはいけないような顔をしたように。
だからヒューゴも、命すら賭ける気持ちで来たのかもしれない。そんなことを考えると、私は胸が痛い。
「あのね、ヒューゴ……
私は婚約破棄をしたとしても、ヤヌース伯爵領には帰りたくないわ」
苦し紛れにヒューゴに言う。そう、今となってはヤヌース伯爵領に帰ることが一番の苦痛だ。フリードと帰郷した時も、辛い気持ちでいっぱいになった。
だが、ヒューゴは言いにくそうに告げた。
「駆け落ちしても、ヤヌース伯爵領には戻らないよ。
僕は、お嬢の怒りを買って追放されたんだ」
「……え!? 」
「メリッサを庇ってお嬢を見せ物にしたって、八つ当たりされたんだ」
私は口元を押さえてヒューゴを見ていた。
「メリッサ……」
彼は私の名を、切なげに呼ぶ。そして、顔を歪めて吐き出した。
「僕はお金こそないが、君を幸せに出来る。
君が無理矢理嫁がされたり悪魔辺境伯よりも、君をずっと愛している!」
「ちょっと待って、ヒューゴ……」
私は動揺して告げる。
「愛してるって何? ……私たち、友達でしょう!? 」
「僕は君を、友達だなんて思ったことは一度もない」
その言葉に、胸が引き裂かれそうになった。私はヒューゴを友達だと思っていたのに、ヒューゴは違っていただなんて。そして今、私の心がヒューゴに向いていないのは確実だ。こうやって話している今も、フリードのことを考えてしまう。
ヒューゴはムキになって告げる。
「メリッサは、悪魔辺境伯と婚約破棄したいんでしょ? それなら、僕と結婚しようよ!」
私は愚かだ。ヒューゴの気持ちを知らず、フリードと婚約破棄するつもりだなんて言ってしまった。もう、婚約破棄する気持ちは薄れかかっていたのに。ヒューゴはその言葉を、言葉通り受け取ってしまったのだ。
私はヒューゴを陥れたも同然だ。なんて愚かな女なのだろう。
なんて答えようか迷っている私に、
「どうするの、メリッサ? 」
ジルが聞く。聞かれなくても分かっている。私は、この地でフリードと暮らしたい。だが、遥かこの地まで私を迎えに来て、そしてその事実を告げられたヒューゴは何を思うのだろうか。
「ヒューゴ……ごめん……私はちゃんと、幸せだよ」
言葉にするたび、胸が痛む。
「ヤヌース伯爵領で暮らしている時よりもずっとずっと、今は幸せだよ」
フリードや周りの人に恵まれて、毎日楽しく生きている。フリードは、私のことをすごく大切にしてくれる。かつての私からは考えられないほど、今とても幸せだ。
「ごめん……私……きっとフリードが好きなの」
その言葉を告げると、ヒューゴが落ち込むことを知っていた。せっかくこんな僻地まで迎えに来てくれたのに、恩を仇で返すことになってしまう。だけど、みんなにいい顔をすることは出来ない。
そもそも、これは私が蒔いた種だ。私がヒューゴに思わせぶりな言葉を吐いてしまったから、ヒューゴが迎えに来てくれたのだ。
そんななか、
「やっと本心を言ってくれたな」
聞き覚えのある声が聞こえた。そして、その声を聞いた私は顔を真っ赤にして、口元を必死で押さえる。
近くにはいつの間にかフリードが立っていて、微かに口角を上げて私を見下ろしている。
「お前はやっぱり、俺に惚れているのか」
「ほ、惚れてなんかいないもん!」
そう言いながらも、顔は焼けるように熱い。最悪のタイミングだ。この恋心は黙っておこうと思ったのに、フリードにバレてしまうなんて。
まさかフリードは、私の気持ちを知って、急に態度を変えたりしないよね? 男は、釣った魚に餌をやらないだなんて言う。私はまた、『つまらない女』に成り下がったりしないよね!?
不安な私の頭を、フリードはそっと撫でた。そしてそのまま抱き寄せ、頬に軽くキスをする。こんなフリードを見て、ジルや騎士団の人たち、そして、ハイデマリーは固まっていた。その後一斉に目を逸らし、見ていないふりをする。こんな人々の様子を見て、私はさらに恥ずかしくなってしまう。
人々は、悪魔辺境伯が野蛮な小娘相手に、こんな態度を取るなんて思ってもいなかったのだろう。
「俺はお前の気持ちが聞けて、すごく嬉しい。飛び上がって喜びたいところだ」
……え!?
その言葉は本心なのだろうか。フリードは無表情だから、何を考えているのか分かりにくい。だが、胸の中では人一倍熱い思いを抱えているのだろうか。
顔を真っ赤にしてぽかーんとする私に背を向け、フリードはヒューゴに向き直る。そして、いつもの冷静な声で告げた。
「そういう訳で、メリッサはやれない。
だが、お前はかつて、ひとりぼっちのメリッサを庇ってやっていたと聞く。
メリッサはやれないが、俺はお前の力にはなりたい」
私はフリードの後ろ姿を見上げていた。そして、予想外のその言葉に驚くばかりだ。
ヒューゴは一瞬悲しそうな顔をした。だが、疲れた顔で必死に告げる。
「僕は……メリッサを連れ戻しに来ただけです。あなたのお世話になるつもりはありません」
ヒューゴの声は微かに震えていた。ヒューゴにとっては決死の覚悟なのだろう。相手は悪魔辺境伯と言われるフリードだ。こうやってヒューゴの前に立っているだけでも、その存在感には圧倒される。大柄で無愛想なだけではなく、見るからに強そうでもある。
私はフリードの繊細な部分も知っているが、他の皆は知らない人も多い。ただただ強くて冷酷な指導者と思っているのかもしれない。先ほどの、フリードの行動を見て、人々が一斉に見てはいけないような顔をしたように。
だからヒューゴも、命すら賭ける気持ちで来たのかもしれない。そんなことを考えると、私は胸が痛い。
「あのね、ヒューゴ……
私は婚約破棄をしたとしても、ヤヌース伯爵領には帰りたくないわ」
苦し紛れにヒューゴに言う。そう、今となってはヤヌース伯爵領に帰ることが一番の苦痛だ。フリードと帰郷した時も、辛い気持ちでいっぱいになった。
だが、ヒューゴは言いにくそうに告げた。
「駆け落ちしても、ヤヌース伯爵領には戻らないよ。
僕は、お嬢の怒りを買って追放されたんだ」
「……え!? 」
「メリッサを庇ってお嬢を見せ物にしたって、八つ当たりされたんだ」
私は口元を押さえてヒューゴを見ていた。
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