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二人の出会いと約束
優しさと我慢
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翌朝。朝日と共にユウキは目が覚めた。
隣のベッドには誰もおらず師匠は先に起きたみたいだ。ベッドから下りて一度体を伸ばし窓を開け、外の景色を眺めると坂を下るカイハの姿が見えてユウキは慌てて着替える。
昨日の夜、早めに休むからお前も戻れと師匠に言われ、言われるがままに部屋に入りユウキも休むことにした。部屋に入ってすぐカイハが気になるかと師匠に問われカイハの不思議な魔力を見て興味があると伝えた。イリオスから聞いた範囲ではあるが師匠がカイハのことを教えて更に興味が湧いた。
追いかければ二人で話せる機会があるのではと着替えを終えてマントを乱暴に引っ掴み羽織る。窓を全開に開けてそこから飛び降りる。着地する場所をちゃんと見ていなかった。下にはラーウス師匠。
「あ?」
ユウキは師匠に飛び付くかのように落ちた。ラーウスは受け止めはしたが尻餅をつく。
「……おい」
「すみません」
とても低い怒がこもった声にユウキはだらだらと冷や汗をかく。この光景を見ていた者が豪快に笑う。
「だぁははははっ。二階から飛び降りるなんて元気があっていいじゃねぇか。ユウキおはよう。よく眠れたか?」
「おはようございます。寝室を貸して頂きありがとうございます。おかげでよく休めました」
「おう!ここは元々宿屋だったから部屋はたくさん空いてんだ。好きに使ってくれ」
ユウキは立ち上がりお礼を言う。イリオスはラーウスに手を貸し立ち上がるのを助けた。
砂埃をはらいながらラーウスは一つ溜息をこぼす。
「ユウキ今から何処へ行く?」
「カイハ殿の後を追って……少し話せないかと」
「そうか。なら午後は付き合え。森へ行って薬草や使えそうな物の採集をしたい」
「承知しました」
返事をしながらもう一度謝る。気を付けろの注意だけで済んだ。
「ユウキこれ、朝食持ってけ」
イリオスがボックスを渡す。
「カイハの分もあるから二人で食べてくれ」
「ありがとうございます」
「それと」
「?」
「ユウキ。いってらっしゃい」
「!…いってきます!」
足早に坂道を下りユウキは行ってしまった。
「言った通りだっただろ?」
「はは、弟子をちゃんと見てんなぁ」
イリオスが早起きなのを知っていたラーウスはそれに合わせ自分も早く起きた。朝のカイハの行動を教えてもらいユウキの動きを予測して手軽に朝食を済ませられる物を用意してやってほしいと言ったのだ。
イリオスが言った通りカイハは朝食を食べずに街へ向かっていく。それを見たユウキが朝食を食べずにカイハの後を追うことをラーウスは予想したのだ。
「窓から下りて追いかけるとは思わなかったがな」
言葉にやや怒気を含んでいる。
「ユウキも日和の国のもんだな。流石の身体能力。あとはこれでカイハが変わるきっかけになってくれたらいいがなぁ」
イリオスはカイハが幸せに育つことを切実に願っている。だからこそ変わってほしかった。ユウキにカイハを託し二人が帰ってくるのを待つことにした。
街並みを抜けた先。周りは草原が広がり所々に岩が転がってる。そこにカイハは立ち止まり昨日ユウキに魔法を消されたことを思い出しもやもやした気持ちを抱え込む。
(簡単に消された。これじゃあ竜なんて全然倒せないじゃん)
自身の無力さを痛感する出来事だった。自分の手を見つめ強い魔法を出せる方法がないのか考える。ふと気付くさくさくと草を踏む足音。バッと振り返るとユウキが立っていた。
「すまない。外へ出る姿が見えたから追ってきてしまった」
「………」
やはりカイハはしゃべらない。視線もふいっと逸らしてしまった。困ったなとはにかむがそれでも話を続けてみる。
「ここで魔法の練習をしているのか?カイハ殿は体内の魔力量も多く綺麗な魔力をしているな。コツを掴めばとても強い魔法が打てそうだ」
ユウキの言葉にカイハがピクリと反応する。ユウキをチラッと確認したとき、何処かから声が聞こえてきた。
「おーい!またよそ者がいるぞー」
「誰も相手してくれないからまた一人ぼっちだ」
「かわいそーう」
ギャハハハっと笑いながら三人組の村の子供が近づいてきた。村の子供とユウキの目が合う。
「あれ?他にも誰かいる。あんた誰?」
「こんにちは」
ユウキは挨拶するが子供達は挨拶を返すことなく好き勝手に喋る。
「見たことないからこいつもよそ者だろ?よそ者同士仲良くしてんの?」
「よそ者に仲間ができたのか?」
「よかったなぁ。一人ぼっちじゃなくて」
ユウキはやんちゃな子達だなぁと子供達のやり取りを観察しだす。
どうやらカイハは村の子ではないのが理由で子供達にちょっかいを出されているようだ。いつものことなのかカイハの反応は薄くまた魔力を集めだした。
それが良くなかった。
「おい無視かよ!こっち見ろよ!」
無視をしたことが子供の癇に障った。一人の子供が大声を出して石を拾うとそれを真似るかのように二人の子供も石を拾いだす。三人がほぼ同時に思い切りカイハに向かって石を投げた。
石はよくないなぁと子供の行動に不満を感じる。が、それよりも予想外なカイハの行動にユウキは焦る。カイハが避ける動作や身を守る動きをせずまだ魔力を集めていたからだ。
すぐにカイハの前に立ち飛んできた石を右手で二つ受け止め、残りの一つは左手で受け止めた。そのまま子供達へと距離を詰める。
「おい!邪魔すん………「これはやってはいけないことだ!」
ユウキは子供の言葉を遮り強めの口調で言う。
「お前達にとっては少しのいたずらかもしれんがこれで血を流せば死ぬこともある。頼む。もうしないでくれ」
ユウキは子供達にお願いする。その勢いに子供達はやや気圧された。
「ふ、ふん!今日は帰ってやるよばーか」
ぎゃあぎゃあ騒ぎながら子供達は帰っていった。後ろ姿を見送りユウキはカイハの肩を掴む。
「何故避けない。当たれば怪我をしてしまう。」
これにもカイハは無反応。それでもユウキは続ける。
「いつもあのように石を投げられるのか?それ以外のことは?心配する者もいるしあまり怪我をすることは良くない。続くようならイリオス殿に相談も…「お前なんなの!」
手を振り払いながら声を荒げカイハがやっと話した。
「別に俺のことじゃんほっといてよ。心配する人?いないよもう家族死んじゃってるもん。よそ者なのも本当。仕方ないから無視してるだけ」
溜め込んだ感情をここで吐き出すかのようにカイハの言葉は止まらない
「自分で自分を守れるように強くならないと駄目なんだ。強くなれば何でも出来るようになるでしょ?一人で出来るようになるまでは全部我慢しないと駄目。それでいつかあいつを倒すの。母さん父さんを殺した竜を俺は許さない」
泣きそうな顔。でも涙が出ていない。我慢しているその顔でまた魔力を集める。その様子は迷子みたいだと思った。
でもその方法は何も身につかないということを教えてあげたい。他にも言いたいことがたくさんある。フーと息を吐き話す前にまずこっちだなとユウキはカイハの視線が合うように少し距離を離して目の前に立った。
「何?もうどっかいって」
「真似をしろ」
「え?」
「カイハ殿は杖を使わずに魔力を集めている。その状態での片手では安定しない。慣れるまで両手で魔力を集めることをしてみるといい。体の前に両手を重ね、今カイハ殿がしている方法で魔力を集める」
説明しながらユウキは肩幅くらいに足を開き両手を前に出す。手の平を自身の外側へ向け重ねる。
「さあ」
「……」
渋々といった感じでカイハは真似をする。そしてその状態で魔力を集めてみた。するとどうだろう集まる速度が昨日と違い早いのだ。
「!」
そのまま魔力を集め続けると昨日より大きい風の球体が出来上がる。
「そのまま魔力をのせる感じで唱えよ風の球体と」
「……風の球体!」
詠唱した瞬間巨大な球体はだんだん小さくなり遊びに使うボール程の大きさまでになった。それでも全然違う。小さいが魔力を圧縮したような凄まじいエネルギーが集まっているのを感じる。
「そのまま拙に向かって投げてみてくれ。遠慮せず、本気でだ」
楽しそうにユウキが言う。言われた通りにカイハはユウキに向かって思いっきり投げた。飛んでいく速度も速く更に加速する。カイハはハラハラしながらユウキを見ていた。
ユウキは素手で球体に触れようとする。その様子から昨日のように消すのかなと思ったが今回は違った。球体の側面を撫でるかのように触れ軌道を変える。球体は左にずれ、ずれた先の岩に当たりバキンと音がしてガラガラと岩が砕けていく。
「わぁ」
キラキラと目を輝かせ、カイハは自分の両手をみる。初めてこの威力を出せたことに達成感が湧く。
「初めてでこれは上出来。素晴らしいぞ」
カイハのことを素直に褒める。
「…どうして教えてくれたの?」
今までのカイハの行動を思い返せば愛想を尽かされてもおかしくはない。
「努力してるから手伝いたくなった」
「それだけ?」
「ああ」
ユウキはニコニコしながら答える。たったそれだけの理由で手を差し伸べる行動にカイハは変なのと呟く。と、ユウキは真顔に戻った。
「人から教わることで得る力もある。一人で全部背負って強くなろうとすると悪い方向へ進むこともある」
ユウキはそっとカイハへと近づいた。カイハは俯き声を震わしながら言う。
「でももう俺には頼れる人がいない。……家族に、一族の皆に教えて貰えるもの全部学べなくもなっちゃった。もう何を頼ればいいか分かんないよ」
ぼろぼろと涙がこぼれる。我慢の限界がきてしまったのだろう。ユウキはそっとカイハの手を握り優しく言う。
「何を言っている?いるだろう近くに。カイハ殿が怪我をしたとき誰が手当てをしてくれた?食事は?共に誰かと食べなかったか?そなたは今何処で寝て、何処で生活をしている?」
少し考え目を見開きハッとする。アステラス家で保護されてからの約十日間を思い出す。怪我で動けないときフラムはカイハの口に粥を運び食べさせてくれた。怪我をしたまま家に帰るとイリオスは必ず声をかける。少し面倒臭そうだがリクは身の回りのことを手伝ってくれた。
アステラス家の人々はカイハに寄り添い、助けてくれたのだ。もうあの家族にとっくに支えられていることに今更になって気付いた。
「気付いたか?」
「……迷惑もうかけてたんだね」
カイハは少し笑いながら答えをみつけた。
「む?迷惑とは思ってないだろう。迷惑だったらそなた自身をほったらかしにしているぞ」
「そっか」
「未熟な自分らは子供だから大人に頼らないと生きていけない。拙もそうだから今は師匠を頼らせて頂いてる。」
「うん」
「迷惑をかけていると思うなら強くなった後にかけた分を返せばいいと思わないか?」
「そうだね」
涙を流し続けているが徐々にカイハの表情が明るくなっていく。
「きっとイリオス殿は頼られた方が喜ぶぞ」
「…うん」
「それから…」
「わっ!?」
自分のマントを脱ぎバサッとカイハの方へマントをかける。そしてフードは目を隠すように深く被らせた。
「追い打ちをかけるようですまないが言わせてくれ。そなたの同胞達は生きているぞ」
「!?」
バッと思い切り顔をあげる。
「この村に来るためにはあの雪山を越えないといけない。師匠と共に拙もそこへ足を踏み入れている。いたよカイハ殿の同胞達が」
嘘だと思うのに希望を捨てきれず聞いてしまう。
「怪我は酷く、体は氷漬けで酷い状態だった。しかし治療が間に合い生かすことが出来た」
「…ア…ヴゥ…………ぅ…うそ」
カイハの嗚咽がだんだん聞こえてくる
「しばらく動くことは出来ないだろうがな。生きてることは確かだ。カイハ殿ももう少し頑張れば会えると思わないか?」
「…………ウッ……ヒック」
嗚咽がどんどん大きくなっていく。もうあと一押しでいいなとユウキはストレートな追加の追い打ちをかけた。
「誰も見てる者はいない。我慢ぜず泣いていい」
カイハの口が大きく開き、空を見上げながら大声で泣く。溜めにため込んだ感情を吐き出すかのように。カイハはやっと自分をさらけ出せたのだ。
上を見ながら泣くカイハの顔がフードの隙間から見えてしまう。これでは隠しきれんなとユウキは笑いそっとカイハを手をまた握った。
隣のベッドには誰もおらず師匠は先に起きたみたいだ。ベッドから下りて一度体を伸ばし窓を開け、外の景色を眺めると坂を下るカイハの姿が見えてユウキは慌てて着替える。
昨日の夜、早めに休むからお前も戻れと師匠に言われ、言われるがままに部屋に入りユウキも休むことにした。部屋に入ってすぐカイハが気になるかと師匠に問われカイハの不思議な魔力を見て興味があると伝えた。イリオスから聞いた範囲ではあるが師匠がカイハのことを教えて更に興味が湧いた。
追いかければ二人で話せる機会があるのではと着替えを終えてマントを乱暴に引っ掴み羽織る。窓を全開に開けてそこから飛び降りる。着地する場所をちゃんと見ていなかった。下にはラーウス師匠。
「あ?」
ユウキは師匠に飛び付くかのように落ちた。ラーウスは受け止めはしたが尻餅をつく。
「……おい」
「すみません」
とても低い怒がこもった声にユウキはだらだらと冷や汗をかく。この光景を見ていた者が豪快に笑う。
「だぁははははっ。二階から飛び降りるなんて元気があっていいじゃねぇか。ユウキおはよう。よく眠れたか?」
「おはようございます。寝室を貸して頂きありがとうございます。おかげでよく休めました」
「おう!ここは元々宿屋だったから部屋はたくさん空いてんだ。好きに使ってくれ」
ユウキは立ち上がりお礼を言う。イリオスはラーウスに手を貸し立ち上がるのを助けた。
砂埃をはらいながらラーウスは一つ溜息をこぼす。
「ユウキ今から何処へ行く?」
「カイハ殿の後を追って……少し話せないかと」
「そうか。なら午後は付き合え。森へ行って薬草や使えそうな物の採集をしたい」
「承知しました」
返事をしながらもう一度謝る。気を付けろの注意だけで済んだ。
「ユウキこれ、朝食持ってけ」
イリオスがボックスを渡す。
「カイハの分もあるから二人で食べてくれ」
「ありがとうございます」
「それと」
「?」
「ユウキ。いってらっしゃい」
「!…いってきます!」
足早に坂道を下りユウキは行ってしまった。
「言った通りだっただろ?」
「はは、弟子をちゃんと見てんなぁ」
イリオスが早起きなのを知っていたラーウスはそれに合わせ自分も早く起きた。朝のカイハの行動を教えてもらいユウキの動きを予測して手軽に朝食を済ませられる物を用意してやってほしいと言ったのだ。
イリオスが言った通りカイハは朝食を食べずに街へ向かっていく。それを見たユウキが朝食を食べずにカイハの後を追うことをラーウスは予想したのだ。
「窓から下りて追いかけるとは思わなかったがな」
言葉にやや怒気を含んでいる。
「ユウキも日和の国のもんだな。流石の身体能力。あとはこれでカイハが変わるきっかけになってくれたらいいがなぁ」
イリオスはカイハが幸せに育つことを切実に願っている。だからこそ変わってほしかった。ユウキにカイハを託し二人が帰ってくるのを待つことにした。
街並みを抜けた先。周りは草原が広がり所々に岩が転がってる。そこにカイハは立ち止まり昨日ユウキに魔法を消されたことを思い出しもやもやした気持ちを抱え込む。
(簡単に消された。これじゃあ竜なんて全然倒せないじゃん)
自身の無力さを痛感する出来事だった。自分の手を見つめ強い魔法を出せる方法がないのか考える。ふと気付くさくさくと草を踏む足音。バッと振り返るとユウキが立っていた。
「すまない。外へ出る姿が見えたから追ってきてしまった」
「………」
やはりカイハはしゃべらない。視線もふいっと逸らしてしまった。困ったなとはにかむがそれでも話を続けてみる。
「ここで魔法の練習をしているのか?カイハ殿は体内の魔力量も多く綺麗な魔力をしているな。コツを掴めばとても強い魔法が打てそうだ」
ユウキの言葉にカイハがピクリと反応する。ユウキをチラッと確認したとき、何処かから声が聞こえてきた。
「おーい!またよそ者がいるぞー」
「誰も相手してくれないからまた一人ぼっちだ」
「かわいそーう」
ギャハハハっと笑いながら三人組の村の子供が近づいてきた。村の子供とユウキの目が合う。
「あれ?他にも誰かいる。あんた誰?」
「こんにちは」
ユウキは挨拶するが子供達は挨拶を返すことなく好き勝手に喋る。
「見たことないからこいつもよそ者だろ?よそ者同士仲良くしてんの?」
「よそ者に仲間ができたのか?」
「よかったなぁ。一人ぼっちじゃなくて」
ユウキはやんちゃな子達だなぁと子供達のやり取りを観察しだす。
どうやらカイハは村の子ではないのが理由で子供達にちょっかいを出されているようだ。いつものことなのかカイハの反応は薄くまた魔力を集めだした。
それが良くなかった。
「おい無視かよ!こっち見ろよ!」
無視をしたことが子供の癇に障った。一人の子供が大声を出して石を拾うとそれを真似るかのように二人の子供も石を拾いだす。三人がほぼ同時に思い切りカイハに向かって石を投げた。
石はよくないなぁと子供の行動に不満を感じる。が、それよりも予想外なカイハの行動にユウキは焦る。カイハが避ける動作や身を守る動きをせずまだ魔力を集めていたからだ。
すぐにカイハの前に立ち飛んできた石を右手で二つ受け止め、残りの一つは左手で受け止めた。そのまま子供達へと距離を詰める。
「おい!邪魔すん………「これはやってはいけないことだ!」
ユウキは子供の言葉を遮り強めの口調で言う。
「お前達にとっては少しのいたずらかもしれんがこれで血を流せば死ぬこともある。頼む。もうしないでくれ」
ユウキは子供達にお願いする。その勢いに子供達はやや気圧された。
「ふ、ふん!今日は帰ってやるよばーか」
ぎゃあぎゃあ騒ぎながら子供達は帰っていった。後ろ姿を見送りユウキはカイハの肩を掴む。
「何故避けない。当たれば怪我をしてしまう。」
これにもカイハは無反応。それでもユウキは続ける。
「いつもあのように石を投げられるのか?それ以外のことは?心配する者もいるしあまり怪我をすることは良くない。続くようならイリオス殿に相談も…「お前なんなの!」
手を振り払いながら声を荒げカイハがやっと話した。
「別に俺のことじゃんほっといてよ。心配する人?いないよもう家族死んじゃってるもん。よそ者なのも本当。仕方ないから無視してるだけ」
溜め込んだ感情をここで吐き出すかのようにカイハの言葉は止まらない
「自分で自分を守れるように強くならないと駄目なんだ。強くなれば何でも出来るようになるでしょ?一人で出来るようになるまでは全部我慢しないと駄目。それでいつかあいつを倒すの。母さん父さんを殺した竜を俺は許さない」
泣きそうな顔。でも涙が出ていない。我慢しているその顔でまた魔力を集める。その様子は迷子みたいだと思った。
でもその方法は何も身につかないということを教えてあげたい。他にも言いたいことがたくさんある。フーと息を吐き話す前にまずこっちだなとユウキはカイハの視線が合うように少し距離を離して目の前に立った。
「何?もうどっかいって」
「真似をしろ」
「え?」
「カイハ殿は杖を使わずに魔力を集めている。その状態での片手では安定しない。慣れるまで両手で魔力を集めることをしてみるといい。体の前に両手を重ね、今カイハ殿がしている方法で魔力を集める」
説明しながらユウキは肩幅くらいに足を開き両手を前に出す。手の平を自身の外側へ向け重ねる。
「さあ」
「……」
渋々といった感じでカイハは真似をする。そしてその状態で魔力を集めてみた。するとどうだろう集まる速度が昨日と違い早いのだ。
「!」
そのまま魔力を集め続けると昨日より大きい風の球体が出来上がる。
「そのまま魔力をのせる感じで唱えよ風の球体と」
「……風の球体!」
詠唱した瞬間巨大な球体はだんだん小さくなり遊びに使うボール程の大きさまでになった。それでも全然違う。小さいが魔力を圧縮したような凄まじいエネルギーが集まっているのを感じる。
「そのまま拙に向かって投げてみてくれ。遠慮せず、本気でだ」
楽しそうにユウキが言う。言われた通りにカイハはユウキに向かって思いっきり投げた。飛んでいく速度も速く更に加速する。カイハはハラハラしながらユウキを見ていた。
ユウキは素手で球体に触れようとする。その様子から昨日のように消すのかなと思ったが今回は違った。球体の側面を撫でるかのように触れ軌道を変える。球体は左にずれ、ずれた先の岩に当たりバキンと音がしてガラガラと岩が砕けていく。
「わぁ」
キラキラと目を輝かせ、カイハは自分の両手をみる。初めてこの威力を出せたことに達成感が湧く。
「初めてでこれは上出来。素晴らしいぞ」
カイハのことを素直に褒める。
「…どうして教えてくれたの?」
今までのカイハの行動を思い返せば愛想を尽かされてもおかしくはない。
「努力してるから手伝いたくなった」
「それだけ?」
「ああ」
ユウキはニコニコしながら答える。たったそれだけの理由で手を差し伸べる行動にカイハは変なのと呟く。と、ユウキは真顔に戻った。
「人から教わることで得る力もある。一人で全部背負って強くなろうとすると悪い方向へ進むこともある」
ユウキはそっとカイハへと近づいた。カイハは俯き声を震わしながら言う。
「でももう俺には頼れる人がいない。……家族に、一族の皆に教えて貰えるもの全部学べなくもなっちゃった。もう何を頼ればいいか分かんないよ」
ぼろぼろと涙がこぼれる。我慢の限界がきてしまったのだろう。ユウキはそっとカイハの手を握り優しく言う。
「何を言っている?いるだろう近くに。カイハ殿が怪我をしたとき誰が手当てをしてくれた?食事は?共に誰かと食べなかったか?そなたは今何処で寝て、何処で生活をしている?」
少し考え目を見開きハッとする。アステラス家で保護されてからの約十日間を思い出す。怪我で動けないときフラムはカイハの口に粥を運び食べさせてくれた。怪我をしたまま家に帰るとイリオスは必ず声をかける。少し面倒臭そうだがリクは身の回りのことを手伝ってくれた。
アステラス家の人々はカイハに寄り添い、助けてくれたのだ。もうあの家族にとっくに支えられていることに今更になって気付いた。
「気付いたか?」
「……迷惑もうかけてたんだね」
カイハは少し笑いながら答えをみつけた。
「む?迷惑とは思ってないだろう。迷惑だったらそなた自身をほったらかしにしているぞ」
「そっか」
「未熟な自分らは子供だから大人に頼らないと生きていけない。拙もそうだから今は師匠を頼らせて頂いてる。」
「うん」
「迷惑をかけていると思うなら強くなった後にかけた分を返せばいいと思わないか?」
「そうだね」
涙を流し続けているが徐々にカイハの表情が明るくなっていく。
「きっとイリオス殿は頼られた方が喜ぶぞ」
「…うん」
「それから…」
「わっ!?」
自分のマントを脱ぎバサッとカイハの方へマントをかける。そしてフードは目を隠すように深く被らせた。
「追い打ちをかけるようですまないが言わせてくれ。そなたの同胞達は生きているぞ」
「!?」
バッと思い切り顔をあげる。
「この村に来るためにはあの雪山を越えないといけない。師匠と共に拙もそこへ足を踏み入れている。いたよカイハ殿の同胞達が」
嘘だと思うのに希望を捨てきれず聞いてしまう。
「怪我は酷く、体は氷漬けで酷い状態だった。しかし治療が間に合い生かすことが出来た」
「…ア…ヴゥ…………ぅ…うそ」
カイハの嗚咽がだんだん聞こえてくる
「しばらく動くことは出来ないだろうがな。生きてることは確かだ。カイハ殿ももう少し頑張れば会えると思わないか?」
「…………ウッ……ヒック」
嗚咽がどんどん大きくなっていく。もうあと一押しでいいなとユウキはストレートな追加の追い打ちをかけた。
「誰も見てる者はいない。我慢ぜず泣いていい」
カイハの口が大きく開き、空を見上げながら大声で泣く。溜めにため込んだ感情を吐き出すかのように。カイハはやっと自分をさらけ出せたのだ。
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