永劫怪奇

沙藤

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一話

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 10月も終わり。そろそろハロウィンの季節になる頃のことだ。時刻はそろそろ18時になろうとしている中、古びた小さな高校の教室で男子生徒2人が話をしているのが見受けられた。
 10月からは下校時刻が早まり、18時には校舎から出なければならないのだが、彼らは帰る素振りを見せない。
 田舎町に位置するこの高校__片岡高校かたおかこうこうは、山の上にあることもあって周りは木々に囲まれている。その為、最近は特に薄暗かった。
 そんな場所で、彼らは学校にまつわる怪談話に花を咲かせていた。黒髪の少年は教卓に腰掛け、茶髪の少年は木製の椅子に腰かけてお菓子を頬張っている。
 「そう言えば、お前怖い話って平気?」
 「特に苦手意識はないけど…。なんで?」
 仲の良いクラスメイトである黒髪を雑に伸ばした髪型で若干ツリ目気味の少年__田中 一颯たなか いぶきに話題を振られた来栖 陽凪くるす ひなぎは、その大きな目をパチクリとさせてから返す。来栖は、薄い茶髪で大きく三つ編みにした前髪を右サイドに流し、制服の上から黄色のニットを着ているのだが、彼が動く度にゆらりと揺れる前髪のせいで田中の位置から彼の顔は見えない。
 「いや、最近面白い噂たってるの知ってるかなって思って。学校の七不思議のひとつなんだけどさ。」
 「七不思議?中学生じゃあるまいし...。」
 呆れたように返す来栖に、田中は「まぁ、良いじゃんたまにはさぁ。」とだけ言ってから話を続ける。
 「この学校に纏わる七不思議のひとつに“アヤメ様の噂”ってのがあるんだけどさ。知ってる?」
 「名前だけなら聞いたことあるけど..。」
 「今、その“アヤメ様”が流行ってるんだってさ。」
 それで、と、田中が話を続ける。陽凪は木製の古びた机に並べてあるチョコレートをひとつ摘んで口に含みつつ、彼の話をぼんやりと耳にする。
 「アヤメ様の噂。代償さえ支払えば、何でも願いを叶えてくれるのが“アヤメ様”で、夜中の2時に旧校舎東棟の2階の奥にある理科室が呼び出せる場所。蝋燭を4本、それから代償を用意して円を書くようにして設置し、次のように唱えるんだ。」
 一息置いて、田中は言う。
 「_ 
 静かな声が教室に響き、思わず来栖は息を飲んだ。
 「そうしたら、アヤメ様が現れるんだってさ。願い事を聞いてくるから、何を願うかとその代償を言えば叶えてくれるらしい。」
 田中の言葉に、来栖はひとつ息を零してから返す。
 「……女子が好きそうなおまじないみたいなもんなのか?」
 「ん~、どうだろ。男でも結構信じてるやつが多いって話だぜ。」
 来栖は適当な相槌を返す。
 「でも、アヤメ様を呼び出すのはあんま良くないらしいぜ。」
 「え、なんで?」
 田中の言葉に、来栖はきょとんとしてから返した。
 「代償が願いと見合ったものじゃ無かったら、殺されるらしい。」
 何とも在り来りな話に、来栖は思わず「なんだ、くだんね~、」と零す。
 「くだらないって事ないだろ!?実際、つい2週間前に2年の先輩がひとりこの学校で死んでるだろうが。」
 田中のその言葉に、来栖は学校中を騒がせた事件を思い出す。2週間前、2年生の女子生徒が旧校舎の玄関で無惨な姿で発見されたらしい。結果、旧校舎は立ち入り禁止の筈だ。詳しい話は知らないが、殺人事件じゃないかと噂がたっていた筈だ。
 「逆に、その事件が原因で噂が流行ってるんじゃねーの?」
 「それは一理あるかもな。」
 なんて、話をしていれば、18時を知らせるチャイムが鳴った。
 「うわ、やべぇ!鬼の佐藤が来ちまう!!帰るぞ陽凪!」
 田中がそう言いつつ、カバンに雑に広げてあったお菓子を詰め込む。鬼の佐藤と言うのは、見回りに来る体育教師である佐藤先生のことだ。怒るとあだ名の通り鬼のように恐ろしいことから、そのように呼ばれている。
 「おっけー、早く帰ろうぜ。」
 あー、腹減った、と来栖はそのように呟いて、走り始める田中の背を追った。
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みんなの感想(1件)

花雨
2021.08.15 花雨

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2021.08.15 沙藤

ありがとうございます!!更新頑張ります!

解除

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