1 / 1
一話
しおりを挟む10月も終わり。そろそろハロウィンの季節になる頃のことだ。時刻はそろそろ18時になろうとしている中、古びた小さな高校の教室で男子生徒2人が話をしているのが見受けられた。
10月からは下校時刻が早まり、18時には校舎から出なければならないのだが、彼らは帰る素振りを見せない。
田舎町に位置するこの高校__片岡高校は、山の上にあることもあって周りは木々に囲まれている。その為、最近は特に薄暗かった。
そんな場所で、彼らは学校にまつわる怪談話に花を咲かせていた。黒髪の少年は教卓に腰掛け、茶髪の少年は木製の椅子に腰かけてお菓子を頬張っている。
「そう言えば、お前怖い話って平気?」
「特に苦手意識はないけど…。なんで?」
仲の良いクラスメイトである黒髪を雑に伸ばした髪型で若干ツリ目気味の少年__田中 一颯に話題を振られた来栖 陽凪は、その大きな目をパチクリとさせてから返す。来栖は、薄い茶髪で大きく三つ編みにした前髪を右サイドに流し、制服の上から黄色のニットを着ているのだが、彼が動く度にゆらりと揺れる前髪のせいで田中の位置から彼の顔は見えない。
「いや、最近面白い噂たってるの知ってるかなって思って。学校の七不思議のひとつなんだけどさ。」
「七不思議?中学生じゃあるまいし...。」
呆れたように返す来栖に、田中は「まぁ、良いじゃんたまにはさぁ。」とだけ言ってから話を続ける。
「この学校に纏わる七不思議のひとつに“アヤメ様の噂”ってのがあるんだけどさ。知ってる?」
「名前だけなら聞いたことあるけど..。」
「今、その“アヤメ様”が流行ってるんだってさ。」
それで、と、田中が話を続ける。陽凪は木製の古びた机に並べてあるチョコレートをひとつ摘んで口に含みつつ、彼の話をぼんやりと耳にする。
「アヤメ様の噂。代償さえ支払えば、何でも願いを叶えてくれるのが“アヤメ様”で、夜中の2時に旧校舎東棟の2階の奥にある理科室が呼び出せる場所。蝋燭を4本、それから代償を用意して円を書くようにして設置し、次のように唱えるんだ。」
一息置いて、田中は言う。
「_ アヤメ様、アヤメ様。どうか、私の願いを聞き入れてください。」
静かな声が教室に響き、思わず来栖は息を飲んだ。
「そうしたら、アヤメ様が現れるんだってさ。願い事を聞いてくるから、何を願うかとその代償を言えば叶えてくれるらしい。」
田中の言葉に、来栖はひとつ息を零してから返す。
「……女子が好きそうなおまじないみたいなもんなのか?」
「ん~、どうだろ。男でも結構信じてるやつが多いって話だぜ。」
来栖は適当な相槌を返す。
「でも、アヤメ様を呼び出すのはあんま良くないらしいぜ。」
「え、なんで?」
田中の言葉に、来栖はきょとんとしてから返した。
「代償が願いと見合ったものじゃ無かったら、殺されるらしい。」
何とも在り来りな話に、来栖は思わず「なんだ、くだんね~、」と零す。
「くだらないって事ないだろ!?実際、つい2週間前に2年の先輩がひとりこの学校で死んでるだろうが。」
田中のその言葉に、来栖は学校中を騒がせた事件を思い出す。2週間前、2年生の女子生徒が旧校舎の玄関で無惨な姿で発見されたらしい。結果、旧校舎は立ち入り禁止の筈だ。詳しい話は知らないが、殺人事件じゃないかと噂がたっていた筈だ。
「逆に、その事件が原因で噂が流行ってるんじゃねーの?」
「それは一理あるかもな。」
なんて、話をしていれば、18時を知らせるチャイムが鳴った。
「うわ、やべぇ!鬼の佐藤が来ちまう!!帰るぞ陽凪!」
田中がそう言いつつ、カバンに雑に広げてあったお菓子を詰め込む。鬼の佐藤と言うのは、見回りに来る体育教師である佐藤先生のことだ。怒るとあだ名の通り鬼のように恐ろしいことから、そのように呼ばれている。
「おっけー、早く帰ろうぜ。」
あー、腹減った、と来栖はそのように呟いて、走り始める田中の背を追った。
0
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
月弥総合病院
御月様(旧名 僕君☽☽︎)
キャラ文芸
月弥総合病院。極度の病院嫌いや完治が難しい疾患、診察、検査などの医療行為を拒否したり中々治療が進められない子を治療していく。
また、ここは凄腕の医師達が集まる病院。特にその中の計5人が圧倒的に遥か上回る実力を持ち、「白鳥」と呼ばれている。
(小児科のストーリー)医療に全然詳しく無いのでそれっぽく書いてます...!!
裏切りの代償
中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。
尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。
取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。
自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
煙草屋さんと小説家
男鹿七海
キャラ文芸
※プラトニックな関係のBL要素を含む日常ものです。
商店街の片隅にある小さな煙草屋を営む霧弥。日々の暮らしは静かで穏やかだが、幼馴染であり売れっ子作家の龍二が店を訪れるたびに、心の奥はざわめく。幼馴染としてでも、客としてでもない――その存在は、言葉にできないほど特別だ。
ある日、龍二の周囲に仕事仲間の女性が現れ、霧弥は初めて嫉妬を自覚する。自分の感情を否定しようとしても、触れた手の温もりや視線の距離が、心を正直にさせる。日常の中で少しずつ近づく二人の距離は、言葉ではなく、ささやかな仕草や沈黙に宿る。
そして夜――霧弥の小さな煙草屋で、龍二は初めて自分の想いを口にし、霧弥は返事として告白する。互いの手の温もりと目の奥の真剣さが、これまで言葉にできなかった気持ちを伝える瞬間。静かな日常の向こうに、確かな愛が芽吹く。
小さな煙草屋に灯る、柔らかく温かな恋の物語。
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
大好きな幼なじみが超イケメンの彼女になったので諦めたって話
家紋武範
青春
大好きな幼なじみの奈都(なつ)。
高校に入ったら告白してラブラブカップルになる予定だったのに、超イケメンのサッカー部の柊斗(シュート)の彼女になっちまった。
全く勝ち目がないこの恋。
潔く諦めることにした。
薬師だからってポイ捨てされました~異世界の薬師なめんなよ。神様の弟子は無双する~
黄色いひよこ
ファンタジー
薬師のロベルト・シルベスタは偉大な師匠(神様)の教えを終えて自領に戻ろうとした所、異世界勇者召喚に巻き込まれて、周りにいた数人の男女と共に、何処とも知れない世界に落とされた。
─── からの~数年後 ────
俺が此処に来て幾日が過ぎただろう。
ここは俺が生まれ育った場所とは全く違う、環境が全然違った世界だった。
「ロブ、申し訳無いがお前、明日から来なくていいから。急な事で済まねえが、俺もちっせえパーティーの長だ。より良きパーティーの運営の為、泣く泣くお前を切らなきゃならなくなった。ただ、俺も薄情な奴じゃねぇつもりだ。今日までの給料に、迷惑料としてちと上乗せして払っておくから、穏便に頼む。断れば上乗せは無しでクビにする」
そう言われて俺に何が言えよう、これで何回目か?
まぁ、薬師の扱いなどこんなものかもな。
この世界の薬師は、ただポーションを造るだけの職業。
多岐に亘った薬を作るが、僧侶とは違い瞬時に体を癒す事は出来ない。
普通は……。
異世界勇者巻き込まれ召喚から数年、ロベルトはこの異世界で逞しく生きていた。
勇者?そんな物ロベルトには関係無い。
魔王が居ようが居まいが、世界は変わらず巡っている。
とんでもなく普通じゃないお師匠様に薬師の業を仕込まれた弟子ロベルトの、危難、災難、巻き込まれ痛快世直し異世界道中。
はてさて一体どうなるの?
と、言う話。ここに開幕!
● ロベルトの独り言の多い作品です。ご了承お願いします。
● 世界観はひよこの想像力全開の世界です。
【完結】兄の事を皆が期待していたので僕は離れます
まりぃべる
ファンタジー
一つ年上の兄は、国の為にと言われて意気揚々と村を離れた。お伽話にある、奇跡の聖人だと幼き頃より誰からも言われていた為、それは必然だと。
貧しい村で育った弟は、小さな頃より家の事を兄の分までせねばならず、兄は素晴らしい人物で対して自分は凡人であると思い込まされ、自分は必要ないのだからと弟は村を離れる事にした。
そんな弟が、自分を必要としてくれる人に会い、幸せを掴むお話。
☆まりぃべるの世界観です。緩い設定で、現実世界とは違う部分も多々ありますがそこをあえて楽しんでいただけると幸いです。
☆現実世界にも同じような名前、地名、言葉などがありますが、関係ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
作品お気に入り登録しときますね(^^)
ありがとうございます!!更新頑張ります!