花野井一家の幸せ。

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睡蓮の場合5

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「それでですね、明日定休日なんですけど、家に来ませんか?」



お母さんはすぐにフランクさんとハンナさんから許可をとってくれた。
それで今日も来てくれたヴィンセントにおうちへの招待の話をしているところだ。
ちなみに今日も1人みたいだ。



「え、スイの家ですか?私が?」


「はい。急なのでお時間があればですけど…。」


「は、はい!ぜひ!お願いします!」


「ふふ。お願いはこちらですよ。嬉しいです。ありがとうございます。楽しみにしてますね。」



勢いよく頷くヴィンセントに癒される。
明日の昼から来てくれることになり、ついでにごはんも一緒に食べることになった。











「これ味どう?大丈夫?」



翌日になり、お昼ごはんに間に合うように皆で料理を作り中だ。



「うん、ちょうどいいわね。とっても美味しいわ。」


「うん、最高!さすがすいちゃん!」


「お母さんの一番弟子だもんね!」



皆口々に褒めてくれた。
よかったよかった。
これで自信をもってヴィンセントに出せるね。
そろそろ来る頃かなって思ったとき、玄関の扉がノックされる音がした。



「きっとヴィンセントだ。」



皆にそう告げてから扉を開けると、予想通りヴィンセントがいた。



「こんにちは、スイ。今日は招待してくれてありがとうございます。」


「こんにちは、ヴィンセント。こちらこそ来てくれてありがとうございます。」



今日もローブを来てフードを被ったままのヴィンセントが柔らかい雰囲気を出しながら現れた。



「ふふ。どうぞ入ってください。今料理できたところなんです。来てすぐですけど食べますか?」


「はい、ぜひ。できたてなんて嬉しいです。ありがとうございます。」



ヴィンセントを室内に招きながら作った料理の説明をする。
今日はごはん、かき玉汁、豚肉の味噌炒め、ほうれん草のおひたし、トマトのマリネだ。



「わぁ、いいにおい。それにとっても美味しそうです。」


「ありがとうございます。さ、さっそく食べましょう。」



皆でいただきますをして食べ始める。
ちなみにフランクさんたちはおでかけ中だ。
定休日には必ず2人でデートに行っていて、とっても仲良しなのだ。



「この肉すごくおいしいですね。味噌味がごはんとよく合います。」


「ありがとうございます。」



全部の料理に美味しい美味しいと言いながら食べてくれる。
そんなに喜んでもらえると、作った側としても嬉しいものだ。
食べ初めてから少しして皆で自己紹介を始める。
何かしながらの方が緊張しなくていいかなって思ったからだ。
ちょっと行儀が悪いが、今日は多目に見てもらおう。
何だかんだでまだ初めて会ってから4日目なのだ。
すずちゃんとひなちゃんもまともに話したことがなかった。



「食べながらで失礼します、ここにいる娘たちの母の花野井 桔梗です。」


「次女の鈴蘭です!」


「三女の雛菊でーす!」


「ヴィンセントと申します。今日はご招待してくださってありがとうございます。」


「いいえー!お話ししてみたかったから来てくださって嬉しいわ。」



お母さんが目をキラキラさせながらヴィンセントを見てる。
聞きたい聞きたい!恋ばな恋ばな!っていうのが目を見るだけでわかる。
楽しそうね、お母さん。



「すいちゃんの話し相手になってくれてありがとうございます。昨日もお話ししたと嬉しそうにしてたんですよ。」


「すいちゃん昨日楽しそうだったよねー。」


「あんなすいちゃん初めて見たもんねー。」



ねー、とすずちゃんとひなちゃんが目を合わせて頷きあった。
ちょっと、そういうこと言われると恥ずかしいから。
最初からエンジンとばしすぎたから。



「それは嬉しいですね。私も楽しくって、今日も楽しみにしてましたから。」



にっこり、ときっと笑っているだろうヴィンセント。
まだフードを被ったままなのだ。
でも、無意識でも意識的でも被ったままなのはまだ怖いからだろう。
まだ壁があるみたいで少し寂しい。



「あ、そういえば何も聞いてなかったけど、ヴィンセントって苦手なものなかった?」



作り初めてから気づいたのだが、苦手な食材があるのかを聞き忘れていたのを思い出したが、考えてもわからないので気にせず作ることになった。



「好き嫌いは特にないですよ。」


「それならよかったです。おかしはどうでした?甘いものとかも大丈夫?」


「昨日のクッキーですね。とっても美味しくて食べるのが勿体ないくらいでした。進んで甘いものは食べませんが、スイが作ったものなら何でもほしいです。」


「それならよかったです。今日もおやつにマフィン作ってたから。よかったらまた持って帰ってください。」



楽しみです、と昨日のように柔らかい雰囲気を出しながら喜んでくれた。







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