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ヴィンセントの場合4
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学園に入学して2年、私は15歳になった。
あれからコンラッドとはずっと一緒で、2人だけのときは呼び捨てで呼び合う仲になった。
コンラッドは伯爵家の次男らしく、家を継がないので騎士になったと言う。
無口なコンラッドとの会話は多くなかったが、自分と同じような境遇の人物が側にいるだけで居心地がよかった。
学園に通うようになってからも周りからの蔑むような目は変わらなかったが。
13歳から18歳までの生徒が通っている学園…あと3年通えば終わると自分に言い聞かせて過ごした。
「お前の婚約者が決まった。これから顔合わせだ。」
学園が休みの日、陛下に呼ばれて執務室へ行くと突然そう告げられた。
「これから、ですか?」
いつかは決められると思っていた婚約者。
でも、これからとは急な話だ。
「あぁ。なかなか決まらなかったからな。お前の婚約者だと自覚を持たせるためにもすぐがいいだろう。」
王族は6歳から決まる婚約者。
それが今までいなかったのがおかしいくらいなのは確かだ。
しかし、小さい頃だと顔合わせで相手の令嬢が泣き叫んだり、気絶したりと、とてもじゃないが婚約なんてできなかった。
「相手はナタリー・サーシス伯爵令嬢だ。そろそろ挨拶に来る頃だろう。準備をしろ。私はまだ仕事が残っているからあとは任せたぞ。」
陛下はそう言うと、また机に置いてあった書類の続きをしだした。
用が済んだと思い、執務室をあとにした。
「応接室にお茶の準備を頼む。」
自室に戻り、服を着替えながら近くの使用人に言うと、畏まりましたと頭を下げて出ていった。
少しすると、サーシス伯爵令嬢様が来られましたと呼ばれた。
「あぁ。コンラッド、行くぞ。」
「はい。」
コンラッドを伴い、応接室へ向かう。
「こんにちは。わざわざ来てもらってありがとうございます。」
ノックをして室内に入り挨拶をする。
そこにはサーシス伯爵とその娘だろう女性が立っていた。
「いえ、この度は娘を婚約者に選んでいただきありがとうございます。とても光栄に存じます。」
頭を下げていた2人に上げるよう指示を出す。
よく似たぽっちゃりした体型に細い目に大きい口、私が言ってはなんだが普通な容姿の親子だった。
一般的な薄茶色の髪に、貴族らしい濃い青色の瞳をしていた。
ちなみに平民は薄茶色の髪に同色の瞳が多い。
「こちらこそ。これからよろしくお願いします。」
一応にこりと笑っておく。
嫌悪感はあるだろうが、無表情よりはましだろう。
「…お願い致します。」
案の定嫌そうな顔で返してきた令嬢。
父親の方は一応は取り繕ってはいるが、蔑むような目は隠せていない。
またか、と慣れてしまった視線を見なかったことにして座るように言う。
「伯爵はお久しぶりですね。元気そうでなによりです。令嬢は初めましてかな。私はヴィンセント・ユーフォルビアといいます。」
「はい、お久しぶりでございます。殿下もおかわりなさそうで。こちらは娘のナタリーです。」
「お初にお目にかかります、ナタリー・サーシスと申します。」
おかわりなさそうで、のところでにやにやと厭らしい笑みを浮かべる伯爵。
令嬢の方はにこりともせず、不機嫌を全面に出していた。
その証拠に目も合わせようとしない。
「ナタリー嬢は私と同じ年くらいかな?」
「はい。15歳でございます。それよりも殿下、ナタリー嬢ではなく、サーシス嬢とお呼びください。」
「…わかりました、サーシス嬢。見かけたことはないからクラスはちがうのですね。」
「はい。私はEクラスでございます。殿下のことは一方的にではありますが拝見していました。」
Eクラスまである中のEクラスか。
学園は成績順にクラスが決められていて、Aクラスが一番上だから…うん。
しかしそれを堂々と…。
一方的に拝見って馬鹿にしながら言っている時点で察したが。
仮にも王族にする態度じゃない。
横にいる父親も注意せずにやにやしているから、頭のできは親子揃ってか。
「そうですか。これから学園でも顔を合わせることがあるかもしれませんね。」
「まぁ、すれ違うこともあるでしょうけど、話しかけてはこないでくださいね。」
「…はい?」
「只でさえ恥ずかしいんですから。あと私と会うときは仮面を着けてきてください。その顔を見たくありませんから。」
「…………………。」
さすがに絶句した。
ちょっとした悪口なんてもんじゃない。
もうこれは暴言だ。
不敬罪で捕まってもおかしくないほどの…。
それなのに周りの使用人は顔色も変えずに立っている。
むしろ首を縦に振って同意しそうな勢いの雰囲気を感じる。
…嘘だろ…希望は持ってなかったが、こんなのと婚約して結婚するのか?
終わりの希望だけを糧に生きてきたのに…自然と天に召されるまで耐えられるだろうか…。
慣れていたはずの態度に耐えられるか少し不安になった。
あれからコンラッドとはずっと一緒で、2人だけのときは呼び捨てで呼び合う仲になった。
コンラッドは伯爵家の次男らしく、家を継がないので騎士になったと言う。
無口なコンラッドとの会話は多くなかったが、自分と同じような境遇の人物が側にいるだけで居心地がよかった。
学園に通うようになってからも周りからの蔑むような目は変わらなかったが。
13歳から18歳までの生徒が通っている学園…あと3年通えば終わると自分に言い聞かせて過ごした。
「お前の婚約者が決まった。これから顔合わせだ。」
学園が休みの日、陛下に呼ばれて執務室へ行くと突然そう告げられた。
「これから、ですか?」
いつかは決められると思っていた婚約者。
でも、これからとは急な話だ。
「あぁ。なかなか決まらなかったからな。お前の婚約者だと自覚を持たせるためにもすぐがいいだろう。」
王族は6歳から決まる婚約者。
それが今までいなかったのがおかしいくらいなのは確かだ。
しかし、小さい頃だと顔合わせで相手の令嬢が泣き叫んだり、気絶したりと、とてもじゃないが婚約なんてできなかった。
「相手はナタリー・サーシス伯爵令嬢だ。そろそろ挨拶に来る頃だろう。準備をしろ。私はまだ仕事が残っているからあとは任せたぞ。」
陛下はそう言うと、また机に置いてあった書類の続きをしだした。
用が済んだと思い、執務室をあとにした。
「応接室にお茶の準備を頼む。」
自室に戻り、服を着替えながら近くの使用人に言うと、畏まりましたと頭を下げて出ていった。
少しすると、サーシス伯爵令嬢様が来られましたと呼ばれた。
「あぁ。コンラッド、行くぞ。」
「はい。」
コンラッドを伴い、応接室へ向かう。
「こんにちは。わざわざ来てもらってありがとうございます。」
ノックをして室内に入り挨拶をする。
そこにはサーシス伯爵とその娘だろう女性が立っていた。
「いえ、この度は娘を婚約者に選んでいただきありがとうございます。とても光栄に存じます。」
頭を下げていた2人に上げるよう指示を出す。
よく似たぽっちゃりした体型に細い目に大きい口、私が言ってはなんだが普通な容姿の親子だった。
一般的な薄茶色の髪に、貴族らしい濃い青色の瞳をしていた。
ちなみに平民は薄茶色の髪に同色の瞳が多い。
「こちらこそ。これからよろしくお願いします。」
一応にこりと笑っておく。
嫌悪感はあるだろうが、無表情よりはましだろう。
「…お願い致します。」
案の定嫌そうな顔で返してきた令嬢。
父親の方は一応は取り繕ってはいるが、蔑むような目は隠せていない。
またか、と慣れてしまった視線を見なかったことにして座るように言う。
「伯爵はお久しぶりですね。元気そうでなによりです。令嬢は初めましてかな。私はヴィンセント・ユーフォルビアといいます。」
「はい、お久しぶりでございます。殿下もおかわりなさそうで。こちらは娘のナタリーです。」
「お初にお目にかかります、ナタリー・サーシスと申します。」
おかわりなさそうで、のところでにやにやと厭らしい笑みを浮かべる伯爵。
令嬢の方はにこりともせず、不機嫌を全面に出していた。
その証拠に目も合わせようとしない。
「ナタリー嬢は私と同じ年くらいかな?」
「はい。15歳でございます。それよりも殿下、ナタリー嬢ではなく、サーシス嬢とお呼びください。」
「…わかりました、サーシス嬢。見かけたことはないからクラスはちがうのですね。」
「はい。私はEクラスでございます。殿下のことは一方的にではありますが拝見していました。」
Eクラスまである中のEクラスか。
学園は成績順にクラスが決められていて、Aクラスが一番上だから…うん。
しかしそれを堂々と…。
一方的に拝見って馬鹿にしながら言っている時点で察したが。
仮にも王族にする態度じゃない。
横にいる父親も注意せずにやにやしているから、頭のできは親子揃ってか。
「そうですか。これから学園でも顔を合わせることがあるかもしれませんね。」
「まぁ、すれ違うこともあるでしょうけど、話しかけてはこないでくださいね。」
「…はい?」
「只でさえ恥ずかしいんですから。あと私と会うときは仮面を着けてきてください。その顔を見たくありませんから。」
「…………………。」
さすがに絶句した。
ちょっとした悪口なんてもんじゃない。
もうこれは暴言だ。
不敬罪で捕まってもおかしくないほどの…。
それなのに周りの使用人は顔色も変えずに立っている。
むしろ首を縦に振って同意しそうな勢いの雰囲気を感じる。
…嘘だろ…希望は持ってなかったが、こんなのと婚約して結婚するのか?
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