花野井一家の幸せ。

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雛菊の場合2

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「おにいちゃん?ヒナちゃん?」



不思議そうなエリゼちゃんの声で、ようやく自分が固まってたことに気づく。



「あっ、ごめんね、エリゼちゃん。この人がお兄ちゃん?見つかってよかったね。」


「うん!ありがとう!ヒナちゃん!」



エリゼちゃんは嬉しそうに頷いた。
うん、可愛いなー。



「それじゃ、私は行くね。」


「え?…もうちょっとヒナちゃんといっしょにいたいかったな…。」



お兄ちゃんも見つかったことだし、安心して買い物の続きをしようと思ったら、エリゼちゃんが泣きそうな顔でお願いしてきた。
そんな顔を見せられては、はい、さようならと言う気になれず、もうちょっとだけ一緒にいることにした。



「あの、エリゼちゃんのお兄ちゃん、少しだけ一緒に買い物しても大丈夫ですか…?」



元の世界では目も合わせることがなかった程のイケメンに、少し緊張しながら聞く。



「……あ、ぼ、僕ですか?僕に聞かれてるんですか?え…僕はついに天に召されるんですか…?」


「いえ、私は人間です。なのでそんな権限はありません。」



慣れたくなかったけど、慣れてしまった反応に即座に対応する。
最初は必ず天使扱いされることになれるって…元の世界だったらただの痛い人だよ…。



「え?…人?天使ではなくて?」


「はい。あなたと同じです。」


「え…この方が…人…。」



え?え?と言いながらも、ようやく納得してくれたようだ。
いや、納得させた。



「おにいちゃんだいじょうぶ?ヒナちゃんってとってもきれいだから、てんしさまにみえるよね!エリゼもてんしさまだとおもったもん!」



いまだに呆然としているエリゼちゃんのお兄ちゃんに抱っこされながら、満面の笑みで話しているエリゼちゃん。



「あ、申し遅れました。私、花野井 雛菊って言います。」


「あ、えと、僕はノア・フリージアと申します。こちらは妹のエリゼ・フリージアです。…あの、妹がお世話になりました。」


「いえいえ。無事に見つかってよかったです。ノアさんとお呼びしても大丈夫ですか?」


「あ、どうぞ。呼び捨てでも構いません…。敬語もなくて大丈夫です。」


「ほんと?じゃあ、私もヒナって呼んでくれたら嬉しいな。」



そう言うと、また固まってしまうノア。



「…僕が名前で呼んでも…?」


「もちろん!敬語もなくて大丈夫だよ。」


「…じゃ、じゃあ…ヒナ…?」


「はーい!」



恐る恐る名前を呼ばれて元気に返事をした。
そうすると、少し緊張がとけたように表情を和らげた。
他人の名前を呼ぶだけでこんなに緊張するなんて…前になにか言われたのかもしれない。



「ねぇ、おにいちゃん!ヒナちゃんといっしょにかいものしてもいいでしょ?」


「僕はいいけど…あの、迷惑では…?」


「ううん。そんなことないよ。楽しそう。」


「あの…じゃあ…一緒に…行きますか…?」


「うん!ぜひ!」



笑顔で答えると、柔らかく笑うノアに見惚れてしまった。



「やったー!ヒナちゃん!どこいこう!?」


「あ、私、お母さんのプレゼントを買いに来たの。どこかおすすめのお店ってある?」


「じゃああそこがいいとおもう!エリゼたちもよくいくの!ね!おにいちゃん!」


「そうだね。僕たちが行くところでと大丈夫なら、案内するよ。」



2人はよく家族にプレゼントを買うお店があるというので、紹介してもらうことにした。











「わぁー!可愛い!きらきらしてる!」



連れていってもらったお店は、たくさんのアクセサリーがある所だった。
可愛らしいものや綺麗なものがたくさんで、女性向けのお店みたいだった。



「ここには、よく母様のプレゼントを買いに来るんだ。」


「おかあさまもおきにいりなの!」


「そうなんだね。可愛いものがたくさんだもんね。」



2人はにこにこと嬉しそうに商品の説明をしてくれる。
よく出入りしているようで、お店の構造も熟知していた。
いろいろ教えてもらいながら見て回っていると、綺麗な髪留めを見つけた。
羽のような形の枠に水色のガラスがはめ込まれているデザインで、お母さんに似合いそうだなって思った。



「これ…綺麗…。」


「ほんとだ!きれい!」


「大人の女性にも似合いそうなデザインですね。」



2人もすすめてくれたので、その髪留めにすることに決めた。



そのあとは、おすすめのケーキ屋さんを教えてもらったり、飲み物を買って一緒に飲んだりして過ごした。



「あ、そろそろ行かなきゃ。ここまででごめんね。付き合ってくれてありがとう。」


「もういっちゃうの…?」


「エリゼ、あんまり我が儘を言っちゃいけないよ。…ごめんなさい、こちらこそありがとう。楽しかったよ。」



寂しそうにするエリゼちゃんに罪悪感が込み上げる。



「…あっ!ねぇ、よかったら明日のお母さんの誕生日会に来ない?」


「たんじょうびかい?」


「そう!たくさんの人で祝ったら、きっとお母さんも喜ぶと思うし!…あっ、でも予定があったらいいの。急なことだし、無理しないで。」


「エリゼ、いきたい!」


「えっ…でも…そんな、家族団らんにお邪魔しちゃ悪いんじゃ…。」


「そんなことないよ。来てくれたら嬉しい。」


「やったー!」



もう行く気満々のエリゼちゃんの手前、ノアは行かないとは言いづらいみたいで了承してくれた。
食堂の場所を教えて、明日のお昼頃に来てねと約束して、この日は2人とは別れた。












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