花野井一家の幸せ。

雛菊の場合４

「そろそろ来るかな？」


「ちょっとお出迎えしてくるね。」


「はーい。お母さんは待ってればいいのね？」


「うん。あんまり大人数で待ってると目立つから。」



お昼ごはんの用意ができ、あとはノアたちが来るのを待つだけになった。
誕生日会が延期になったことは知らないので、お母さんにバレないように教えておくために外で待つことにした。
もちろん、昨日のことがあるのですいちゃんとすずちゃんと一緒に待っている。



「あ、あの馬車かな？」



すずちゃんが示した先には、少し豪華な馬車が走っていた。
貴族としては質素だけど、平民からしたら豪華な馬車。
その馬車は私たちの前で止まって扉が開いた。



「ヒナちゃーん！きたよー！…あれ？ヒナちゃんが３にん？」



最初に飛び出してきたのはエリゼちゃんだ。
三姉妹で並んでるから混乱しているみたいだ。



「こら、エリゼ。飛び出したら危ないでしょ？…こんにちは、ヒナ。今日は招待してくれてありがとう。」



その後ろから出てきたノアは、迷うことなく私の前に来て挨拶をした。



「えっと…ヒナの姉妹の方ですか…？今日はお邪魔します…。」



私に話しかけたときより、ちょっと他人行儀な感じで話すノア。
…これか…すいちゃんが体験した感じって。
これはたしかに…ちょっと…いや、かなり嬉しいかも。
当然のように見分けたノアに嬉しくなった。



「ふふ。はい。長女の花野井　睡蓮です。」


「次女の鈴蘭です。今日はよろしくお願いします。」



瞬時に私を見分けたノアに対して、にこにこと嬉しそうにするすいちゃんとすずちゃん。



「あ…えと、初めて。ノア・フリージアと申します。こっちは妹のエリゼです。」


「エリゼです！」


「「よろしくね。」」



元気よく手を挙げながら拶をするエリゼちゃんに、微笑ましそうにする２人。
そんな私も同じ顔をしてるけど。



「ふふ。ノアさんは…あ、ノアさんって呼んでも大丈夫ですか？」


「どうぞどうぞ…！呼び捨てでも構いません…！敬語も必要ないです…！」


「じゃあ、ノア君って呼ぶね？きっと呼び捨てはひなちゃんの特権だから。」



そんなことを言うすいちゃんに不思議そうにしているノア。
もう…まだそんなんじゃないのに…。
そう思っていると、すずちゃんもにやにやしながらこっちを見てた。
…もう無視しよう。



「今日は来てくれてありがとう。あのね、誕生日会のことなんだけど…ちょっと今日できなくなっちゃって…。」



ノアたちに昨日あったことを説明し、延期した日にちも伝えた。



「わざわざ来てくれたのにごめんね…。日にち代わっちゃったけど来られそう？」


「それは大変だったね…！無事でよかった…！もちろん変更は構わないよ。…またここに来ることになっちゃうけど…それでもいいなら誕生日会に参加したいな…。」


「もちろん！誘ってるのこっちだもん！よかった！…エリゼちゃんもまた来てくれる？」


「うん！またみんなにあいたい！」



２人は快く了承してくれたのでほっとした。



「それでね、今日はお母さんに紹介も兼ねて、一緒にお昼ごはんをどうかなって思ってるんだけど…どうかな？」


「え？いいの？今日もお邪魔しちゃって…。」


「エリゼ、みんなとごはんたべたい！」


「うん！おいでおいで！皆で作ったの！ぜひ食べてほしいな！」



そう言うと、ノアはふわりと笑って頷いた。
柔らかな空気を出していて居心地がいい。



「ノアって笑うと可愛いね。雰囲気が柔らかくなって居心地がいいや。」



今思ったことを素直に口にすると、ノアが目を見開いて真っ赤になった。



「えっ！？なっ！？かわっ！？居心地…！？？」



パニックになってるノアが可愛くて、ふふっと笑ってしまう。



「でしょ！？おにいちゃんかわいいの！それにかっこいいし！」


「うん。エリゼちゃん言う通りだね。とっても可愛いしかっこいい。」



そう返すと、エリゼちゃんはドヤッと嬉しそうに笑った。
自慢のお兄ちゃんなんだろうなー。



「頑張ってノア君。これがひなちゃんの通常だから。」


「そうそう。思ってること口に出しちゃうの。しかもいいことだけ。」


「これは告白も近いね。」


「頑張れノア君。」



真っ赤になってるノアの横で、すいちゃんとすずちゃんが諭すようにノアに話していることには気づかなかった。