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ep0. 「真夏の夜の爪」 ㉖出血とリボルバー
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少年とマコトが衰弱した子猫を連れてフーミンの経営するバーにやって来たのは午後十時半頃だった。
不在のフーミンの代わりに店番をしていた佑ニーサンとその従姉妹の由江が子猫とマコトの傷の手当をしてくれた。
子猫は翌日に動物病院に連れて行かれる事になったがマコトの左目から左頬にかけて広範囲に大きな腫れ、口の中に傷と出血が確認できた。
時間が経ったら痣になりそうね、と由江が痛々しげに言った。
子猫の右目から出血があり、素人目には潰れているようにも見えた。
泣いたり黙りこくったりする錯乱したマコトに代わって少年が佑ニーサンに状況を説明した。
一通りの話を聞き終わった佑ニーサンは首を横に振りキミをこのまま家に帰す訳にはいかないねぇ、とだけマコトに言った。
「動物愛護管理法。知ってるよね?」
五年以下の懲役または五〇〇万円以下の罰金。
飲酒や喫煙、無免許運転などは佑ニーサンもフーミンも黙認していた。
自分たちも概ねやってきた事であった。
しかしマコトのやった行為は見逃す訳にはいかない類のものだった。佑ニーサンの表情にも戸惑いが見えた。
フーミンの実弟の概史の面倒を見ること、母親とは旧知の間柄である少年の面倒を見ることは出来たがその友人のマコトに関してはどう対処していいのか判断しかねていた。
保護者としての権限も義務もないのだ。
しかしながら、深夜のこの時間に顔面を著しく負傷したマコトをこのまま単独で帰宅させる事もできなかった。
ご両親に連絡を、と由江がマコトを諭すように言う。
マコトはパーカーのフードを深く被ってただ押し黙るだけだった。
このままじゃ埒があかないねぇ、お巡りさんに保護して貰う? と佑ニーサンは困ったように呟いた。
“お巡りさん”という単語にマコトより早く反応したのは少年だった。
「……あのよ、大人なら誰ででもいいンか?」
うーん、こんな時間に? ちょっと微妙じゃないの? と呆れる佑ニーサンを牽制し少年はどこかに電話を掛け話し始めた。
三〇分ほど経って到着したのは二十歳前後の若い女性だった。
歳上っぽいけどもしかして彼女? と訝しむ由江に向かって少年はいやいや、と肩をすくめる。
「小泉センセェだよ。俺の副担」
小泉と呼ばれた若い女性はどうも、と佑ニーサンと由江に向かって軽く会釈をすると早速少年に詰め寄る。
こんな時間によくも呼び出してくれたな、と不機嫌さを隠さない小泉は髪はバサバサ、赤い眼鏡に臙脂色のジャージ上下を身に纏い、首にはハンドタオルが掛けられた状態のまま小声で少年を詰る。
あはは、センセェ風呂上がりっスかぁ? と軽口を叩く少年の耳を軽く引っ張りながら小泉は佑ニーサンの顔を見る。
「……で、私が呼ばれた理由は何です?」
佑ニーサンが少し困ったように言葉を選びながら話し始めたのを少年が遮る。
「いや、俺から話すよ、小泉」
二人・・でガスガンで遊んでいる最中にマコトが撃った弾が子猫に当たってしまい激昂した自分が思わずマコトを殴ってしまったこと、ガスガンは怒りに任せて川に投げ捨てたことなどを少年は掻い摘んで話した。
その間マコトは何も話さずただ黙ってパーカーのフードを深く被り、下を向いて顔を上げなかった。
マコトを家まで送り届けて欲しいという少年の言葉を黙って聞いていた小泉は少し考え、この後リアタイ視聴したいアニメが控えているので腹立たしいことこの上ないがまあよくぞ連絡してきてくれたな、と少年の頭を乱暴に撫でた。
小泉はマコトを自宅まで送り届けマコトの母親に我が校の生徒が申し訳ございませんと頭を下げた。ガスガンと子猫の事は敢えて伏せた。
マコトはずっと押し黙ったままだった。
不在のフーミンの代わりに店番をしていた佑ニーサンとその従姉妹の由江が子猫とマコトの傷の手当をしてくれた。
子猫は翌日に動物病院に連れて行かれる事になったがマコトの左目から左頬にかけて広範囲に大きな腫れ、口の中に傷と出血が確認できた。
時間が経ったら痣になりそうね、と由江が痛々しげに言った。
子猫の右目から出血があり、素人目には潰れているようにも見えた。
泣いたり黙りこくったりする錯乱したマコトに代わって少年が佑ニーサンに状況を説明した。
一通りの話を聞き終わった佑ニーサンは首を横に振りキミをこのまま家に帰す訳にはいかないねぇ、とだけマコトに言った。
「動物愛護管理法。知ってるよね?」
五年以下の懲役または五〇〇万円以下の罰金。
飲酒や喫煙、無免許運転などは佑ニーサンもフーミンも黙認していた。
自分たちも概ねやってきた事であった。
しかしマコトのやった行為は見逃す訳にはいかない類のものだった。佑ニーサンの表情にも戸惑いが見えた。
フーミンの実弟の概史の面倒を見ること、母親とは旧知の間柄である少年の面倒を見ることは出来たがその友人のマコトに関してはどう対処していいのか判断しかねていた。
保護者としての権限も義務もないのだ。
しかしながら、深夜のこの時間に顔面を著しく負傷したマコトをこのまま単独で帰宅させる事もできなかった。
ご両親に連絡を、と由江がマコトを諭すように言う。
マコトはパーカーのフードを深く被ってただ押し黙るだけだった。
このままじゃ埒があかないねぇ、お巡りさんに保護して貰う? と佑ニーサンは困ったように呟いた。
“お巡りさん”という単語にマコトより早く反応したのは少年だった。
「……あのよ、大人なら誰ででもいいンか?」
うーん、こんな時間に? ちょっと微妙じゃないの? と呆れる佑ニーサンを牽制し少年はどこかに電話を掛け話し始めた。
三〇分ほど経って到着したのは二十歳前後の若い女性だった。
歳上っぽいけどもしかして彼女? と訝しむ由江に向かって少年はいやいや、と肩をすくめる。
「小泉センセェだよ。俺の副担」
小泉と呼ばれた若い女性はどうも、と佑ニーサンと由江に向かって軽く会釈をすると早速少年に詰め寄る。
こんな時間によくも呼び出してくれたな、と不機嫌さを隠さない小泉は髪はバサバサ、赤い眼鏡に臙脂色のジャージ上下を身に纏い、首にはハンドタオルが掛けられた状態のまま小声で少年を詰る。
あはは、センセェ風呂上がりっスかぁ? と軽口を叩く少年の耳を軽く引っ張りながら小泉は佑ニーサンの顔を見る。
「……で、私が呼ばれた理由は何です?」
佑ニーサンが少し困ったように言葉を選びながら話し始めたのを少年が遮る。
「いや、俺から話すよ、小泉」
二人・・でガスガンで遊んでいる最中にマコトが撃った弾が子猫に当たってしまい激昂した自分が思わずマコトを殴ってしまったこと、ガスガンは怒りに任せて川に投げ捨てたことなどを少年は掻い摘んで話した。
その間マコトは何も話さずただ黙ってパーカーのフードを深く被り、下を向いて顔を上げなかった。
マコトを家まで送り届けて欲しいという少年の言葉を黙って聞いていた小泉は少し考え、この後リアタイ視聴したいアニメが控えているので腹立たしいことこの上ないがまあよくぞ連絡してきてくれたな、と少年の頭を乱暴に撫でた。
小泉はマコトを自宅まで送り届けマコトの母親に我が校の生徒が申し訳ございませんと頭を下げた。ガスガンと子猫の事は敢えて伏せた。
マコトはずっと押し黙ったままだった。
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