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ep5.
ep5. 『死と処女(おとめ)』 “本能”
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小泉が複雑そうな表情で俺を見ていた。
今回、俺は小泉に詳しい話は何もしていなかった。
出現した文庫本に書いてあったのも俺が花園リセの部屋に行ってからの場面から始まっていたし。
『何故時間を戻る必要があったのか』については簡単に説明した。
だけど、小泉が俺に申し出た事柄については言及しなかった。
こんなん聞かされてもショックだろうしな。
小泉にとっても屈辱だろう。
受け持ちのクラスの教え子が自殺未遂を図り、生死の境を彷徨っている。
その子を助ける為に小泉は“時間を戻す”行為を俺に依頼して来るが、メンタルから来る体調不良で実行出来ず。
その挙句に俺はこの件には全く無関係の花園リセともう一度ヤッてしまったと来たものだ。
多分、小泉はこの事を知らない方がいい。
なんとなくだがぼんやりと俺はそう思った。
社務所の天井を見つめていると、何かが焦げる匂いがした。
さっきの一連の“お祓いのような儀式”の蝋燭か何かが燃えてる?
俺は慌てて飛び起きた。
社務所にある小さな給湯スペースで、小泉がぎゃあぎゃあと叫んでいた。
「どうしたんだよ!?」
火事か、と思った俺は慌てて小泉に駆け寄る。
「え、いやその……」
小泉はバツが悪そうに俺から視線を逸らした。
給湯スペースの小さなガスコンロにかけられた小さなフライパン。
中では、目玉焼きが見事に炭化していた。
「その……前回はお前に作らせてしまったし……」
たまには自分でもやってみようと思ったんだが、と小泉は気まずそうに呟いた。
小泉なりに気を使ってくれてるんだろうか。
なんとなく俺は申し訳ない気分になった。
少し考えてから俺は口を開いた。
「じゃあさ、気分変えてゆで卵にしようぜ?」
小泉には目玉焼きはレベルが高すぎるんだろう。
さりげなく俺は難易度の低いメニューを提案してみる。
「ゆで卵?ここの台所、鍋がないんだが」
母屋から持って来るか、と言う小泉を静止し俺は冷蔵庫から卵を取り出した。
卵にアルミホイルを巻き、水を張ったマグカップに入れる。
レンジに入れて10分加熱する。
10分後、マグカップを鍋つかみ代わりのふきんで掴んで冷水で少し冷やす。
「……ゆで卵になってる……!」
卵を割った小泉が声を上げる。
「ガス使わないし、これならセンセェでも出来るだろ?」
「凄いな!もう一回やってみよう!」
小泉は嬉々として冷蔵庫から取り出した卵にアルミホイルを巻き、水を張ったマグカップに入れてレンジで加熱を始める。
こうしてワーワー騒ぐうちに大量のゆで卵が出来上がってしまった。
「はて。ゆで卵ばっかりじゃ朝食にならんな……」
自分で作ったと言うのに小泉は大量のゆで卵を持て余していた。
俺は冷蔵庫を開けてみる。
今日は何も入っていなかった。
マヨネーズとケチャップ、少しの調味料のみで食材は入っていなかった。
周囲を見回す。
しかし何もない。
俺はスクールバッグを開けた。
昨日の給食の残り……小泉が横流ししてくれた“欠席した生徒用の食パン”が大量に入っていた。
慌てて来たから家からそのまま持って来てしまったんだな。
いつもなら自宅の冷蔵庫か冷凍庫にちゃんと仕舞っとくんだが。
大量のゆで卵もあるし、朝食はコレにするしかなさそうだった。
ゆで卵の殻を剥き、全部刻んでマヨネーズと塩胡椒で和えた。
食パンの耳を切り落とし、さっきの卵を挟む。
三角にカットし、皿にそれとなく盛り付ける。
小泉が外に出て、母屋の庭スペースに生えているパセリを摘んで来たのでそれを添えた。
給食の残りのパンで卵オンリーのサンドイッチの山が出来上がった。
えっ!たまごサンドになったのか!と、完成品を見た小泉はやや驚いた様子だった。
俺は朝から何をやってるんだろう、と思いながら皿の上のサンドイッチを無心に食べた。
サンドイッチってさ、すぐ食べられるのが利点だよな。無限に食べられる。
小泉と二人で食べたので一瞬で無くなった。
食い終わって俺はぼんやり考えた。
セックスするのと同じように、食うこともまた人間の本能なんだよな。
俺達ってさ、自分たちの本能についてあまりに知らなさ過ぎるよな。そんな気がする。
今回、俺は小泉に詳しい話は何もしていなかった。
出現した文庫本に書いてあったのも俺が花園リセの部屋に行ってからの場面から始まっていたし。
『何故時間を戻る必要があったのか』については簡単に説明した。
だけど、小泉が俺に申し出た事柄については言及しなかった。
こんなん聞かされてもショックだろうしな。
小泉にとっても屈辱だろう。
受け持ちのクラスの教え子が自殺未遂を図り、生死の境を彷徨っている。
その子を助ける為に小泉は“時間を戻す”行為を俺に依頼して来るが、メンタルから来る体調不良で実行出来ず。
その挙句に俺はこの件には全く無関係の花園リセともう一度ヤッてしまったと来たものだ。
多分、小泉はこの事を知らない方がいい。
なんとなくだがぼんやりと俺はそう思った。
社務所の天井を見つめていると、何かが焦げる匂いがした。
さっきの一連の“お祓いのような儀式”の蝋燭か何かが燃えてる?
俺は慌てて飛び起きた。
社務所にある小さな給湯スペースで、小泉がぎゃあぎゃあと叫んでいた。
「どうしたんだよ!?」
火事か、と思った俺は慌てて小泉に駆け寄る。
「え、いやその……」
小泉はバツが悪そうに俺から視線を逸らした。
給湯スペースの小さなガスコンロにかけられた小さなフライパン。
中では、目玉焼きが見事に炭化していた。
「その……前回はお前に作らせてしまったし……」
たまには自分でもやってみようと思ったんだが、と小泉は気まずそうに呟いた。
小泉なりに気を使ってくれてるんだろうか。
なんとなく俺は申し訳ない気分になった。
少し考えてから俺は口を開いた。
「じゃあさ、気分変えてゆで卵にしようぜ?」
小泉には目玉焼きはレベルが高すぎるんだろう。
さりげなく俺は難易度の低いメニューを提案してみる。
「ゆで卵?ここの台所、鍋がないんだが」
母屋から持って来るか、と言う小泉を静止し俺は冷蔵庫から卵を取り出した。
卵にアルミホイルを巻き、水を張ったマグカップに入れる。
レンジに入れて10分加熱する。
10分後、マグカップを鍋つかみ代わりのふきんで掴んで冷水で少し冷やす。
「……ゆで卵になってる……!」
卵を割った小泉が声を上げる。
「ガス使わないし、これならセンセェでも出来るだろ?」
「凄いな!もう一回やってみよう!」
小泉は嬉々として冷蔵庫から取り出した卵にアルミホイルを巻き、水を張ったマグカップに入れてレンジで加熱を始める。
こうしてワーワー騒ぐうちに大量のゆで卵が出来上がってしまった。
「はて。ゆで卵ばっかりじゃ朝食にならんな……」
自分で作ったと言うのに小泉は大量のゆで卵を持て余していた。
俺は冷蔵庫を開けてみる。
今日は何も入っていなかった。
マヨネーズとケチャップ、少しの調味料のみで食材は入っていなかった。
周囲を見回す。
しかし何もない。
俺はスクールバッグを開けた。
昨日の給食の残り……小泉が横流ししてくれた“欠席した生徒用の食パン”が大量に入っていた。
慌てて来たから家からそのまま持って来てしまったんだな。
いつもなら自宅の冷蔵庫か冷凍庫にちゃんと仕舞っとくんだが。
大量のゆで卵もあるし、朝食はコレにするしかなさそうだった。
ゆで卵の殻を剥き、全部刻んでマヨネーズと塩胡椒で和えた。
食パンの耳を切り落とし、さっきの卵を挟む。
三角にカットし、皿にそれとなく盛り付ける。
小泉が外に出て、母屋の庭スペースに生えているパセリを摘んで来たのでそれを添えた。
給食の残りのパンで卵オンリーのサンドイッチの山が出来上がった。
えっ!たまごサンドになったのか!と、完成品を見た小泉はやや驚いた様子だった。
俺は朝から何をやってるんだろう、と思いながら皿の上のサンドイッチを無心に食べた。
サンドイッチってさ、すぐ食べられるのが利点だよな。無限に食べられる。
小泉と二人で食べたので一瞬で無くなった。
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