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ep5.
ep5. 『死と処女(おとめ)』 竹刀と保健室
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「やったじゃん!水森っち!」
上野が笑顔と共に手のひらを上げる。
水森はやや驚いたように一瞬動きを止めると、遠慮がちにその手のひらに触れるモーションに入る。
パン、と小気味のいい音が体育館に響く。
上野の方が水森の動きに合わせて手を動かしたんだろう。
ぎこちないながらも、どこか結束感を感じさせるハイタッチだった。
味方チーム、敵チーム、オーディエンスの女子達も口々に水森に声を掛けていく。
「水森さん、調子でてるじゃん!」
「すぐにでもスタメンに戻れるんじゃない?戻ってきなよ!」
皆に声を掛けられた水森は戸惑うような、それでいてどこか誇らしげな表情をしているように思えた。
いつも大人しく、クラス内でも印象の薄い水森の意外な一面を見た気がした。
水森と上野。
遠くから見たら仲が良さそうに見えるんだが。
実際はどうなんだ?
熱気のある女子エリアの中、俺はふと妙な視線に気付く。
夢野くるみ。
夢野は加熱する応援のオーディエンスの輪に入りきれないと言った様子でやや離れた位置にポツンと座っている。
その視線はこちらに向けられていた。
俺を見ているのか?
いや、俺なんか見なくていいから水森の応援してやれよ。
俺は夢野の視線に気付かないフリをしながらゴロリと横になった。
夢野くるみと水森唯、そして上野綾。
この3人の間に一体何があるんだろう。
考えても何も見えてこないし解らない。
寝たフリをしている間に俺はガチで眠ってしまったらしかった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「おい、起きろ馬鹿者!」
俺は頭を小突かれた感触で目を覚ます。
目を開けると、竹刀を持った小泉が立っていた。
「おいおい、竹刀で小突くこたぁないんじゃねぇの?」
小泉はため息をついた。
「もう6時間目が始まるぞ?何をやってるんだ?」
たわけが、と小泉はさらに俺の頭を小突く。
「えー?次の授業なんだっけ?」
俺は頭を掻きながら起き上がる。
「次は私の授業だろ。忘れるな」
6時間目は美術か。面倒だな。
「なんだっけ、外で風景画描くやつ?サボっていい?」
小泉は竹刀で床をトントンと叩くと苛立ちを隠さない様子で呟いた。
「おい、ふざけるなよ佐藤」
……で、何かわかったのか、と小泉は俺の顔を見る。
俺はふと考えた。
クリームパイというスラングの持つ意味。
生中出し。
夢野の自宅に招かれた事って今の段階で言わない方がいいのか?
「んー。なんとも」
俺は適当にはぐらかす。
「ちょっとゴチャゴチャしてて俺も意味がわかんねぇんだ。考えをまとめる時間が要る気がする」
そうか、と小泉は頷くと何か考え込むような素振りを見せた。
「……ま、お前もこの短期間で色々あっただろうからな。サボっていいってお墨付きを与える訳じゃ無いが─────」
小泉は俺の目の前に救急箱を差し出した。
「これを保健室に返却しに行ってくれないか?」
次の授業は若干なら遅れても良しとしてやる、と小泉は俺の肩をポンと叩いた。
「なんで救急箱?」
「知ってると思うが、保健室の先生が産休に入られてな。代わりの先生も見つからず不在で─────」
ここ数ヶ月は常駐の先生が不在のままなんだ、と小泉は答えた。
「通いの先生……というか、他校の保健の先生に週に何度かは出勤して貰って穴埋めしてしてるらしいんだが」
知らなかった。
そんなことがあったのか。
「急な怪我は先生不在時には対応出来ないとのことだからな。体育の授業や各部活の活動の際はそれぞれ簡易な救急箱を用意の上で応急措置をするという臨時の運用になってる」
教員の人手不足も深刻なものだ、と小泉は大きくため息をついた。
「知らんけど、センセェ達も大変なんだな」
ま、行ってくるぜ、と俺は立ち上がると救急箱を受け取った。
上野が笑顔と共に手のひらを上げる。
水森はやや驚いたように一瞬動きを止めると、遠慮がちにその手のひらに触れるモーションに入る。
パン、と小気味のいい音が体育館に響く。
上野の方が水森の動きに合わせて手を動かしたんだろう。
ぎこちないながらも、どこか結束感を感じさせるハイタッチだった。
味方チーム、敵チーム、オーディエンスの女子達も口々に水森に声を掛けていく。
「水森さん、調子でてるじゃん!」
「すぐにでもスタメンに戻れるんじゃない?戻ってきなよ!」
皆に声を掛けられた水森は戸惑うような、それでいてどこか誇らしげな表情をしているように思えた。
いつも大人しく、クラス内でも印象の薄い水森の意外な一面を見た気がした。
水森と上野。
遠くから見たら仲が良さそうに見えるんだが。
実際はどうなんだ?
熱気のある女子エリアの中、俺はふと妙な視線に気付く。
夢野くるみ。
夢野は加熱する応援のオーディエンスの輪に入りきれないと言った様子でやや離れた位置にポツンと座っている。
その視線はこちらに向けられていた。
俺を見ているのか?
いや、俺なんか見なくていいから水森の応援してやれよ。
俺は夢野の視線に気付かないフリをしながらゴロリと横になった。
夢野くるみと水森唯、そして上野綾。
この3人の間に一体何があるんだろう。
考えても何も見えてこないし解らない。
寝たフリをしている間に俺はガチで眠ってしまったらしかった。
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「おい、起きろ馬鹿者!」
俺は頭を小突かれた感触で目を覚ます。
目を開けると、竹刀を持った小泉が立っていた。
「おいおい、竹刀で小突くこたぁないんじゃねぇの?」
小泉はため息をついた。
「もう6時間目が始まるぞ?何をやってるんだ?」
たわけが、と小泉はさらに俺の頭を小突く。
「えー?次の授業なんだっけ?」
俺は頭を掻きながら起き上がる。
「次は私の授業だろ。忘れるな」
6時間目は美術か。面倒だな。
「なんだっけ、外で風景画描くやつ?サボっていい?」
小泉は竹刀で床をトントンと叩くと苛立ちを隠さない様子で呟いた。
「おい、ふざけるなよ佐藤」
……で、何かわかったのか、と小泉は俺の顔を見る。
俺はふと考えた。
クリームパイというスラングの持つ意味。
生中出し。
夢野の自宅に招かれた事って今の段階で言わない方がいいのか?
「んー。なんとも」
俺は適当にはぐらかす。
「ちょっとゴチャゴチャしてて俺も意味がわかんねぇんだ。考えをまとめる時間が要る気がする」
そうか、と小泉は頷くと何か考え込むような素振りを見せた。
「……ま、お前もこの短期間で色々あっただろうからな。サボっていいってお墨付きを与える訳じゃ無いが─────」
小泉は俺の目の前に救急箱を差し出した。
「これを保健室に返却しに行ってくれないか?」
次の授業は若干なら遅れても良しとしてやる、と小泉は俺の肩をポンと叩いた。
「なんで救急箱?」
「知ってると思うが、保健室の先生が産休に入られてな。代わりの先生も見つからず不在で─────」
ここ数ヶ月は常駐の先生が不在のままなんだ、と小泉は答えた。
「通いの先生……というか、他校の保健の先生に週に何度かは出勤して貰って穴埋めしてしてるらしいんだが」
知らなかった。
そんなことがあったのか。
「急な怪我は先生不在時には対応出来ないとのことだからな。体育の授業や各部活の活動の際はそれぞれ簡易な救急箱を用意の上で応急措置をするという臨時の運用になってる」
教員の人手不足も深刻なものだ、と小泉は大きくため息をついた。
「知らんけど、センセェ達も大変なんだな」
ま、行ってくるぜ、と俺は立ち上がると救急箱を受け取った。
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