402 / 1,153
ep5.
ep5. 『死と処女(おとめ)』 模範的な少年
しおりを挟む
「……」
岬は黙った。
しばらく何かを考えているようにも思えた。
─────もしかして、夢野と会う気になってくれたんだろうか。
一瞬、俺がそう考えた時だった。
校舎から一人の女子生徒が歩いてきた。
「あの、岬先輩」
女子はおずおずと岬に話しかけた。
「なんだい?」
岬は柔らかな笑みを浮かべ、女子生徒に聞き返す。
ロングの黒髪、大人しそうな小柄な女子。
一年だろうか。
「そろそろ戻りましょう、先輩」
そうだね、と岬は見せたことのない優しい表情で頷いた。
俺は悟ってしまった。
岬にはもう、新しい彼女ができてる。
小柄な女子と岬の間に漂う濃密な空気。
それはつまり、もう夢野との関係が元に戻ることはないという事実を俺に突き付けた。
どちらにせよ、岬はもう聞く耳を持たないだろう。
俺は黙った。
「僕を動かしたいなら、診断書でもなんでも持ってくればいいんだ」
そうでなきゃ言ったもの勝ちみたいになってしまうだろう?と岬は俺に向かって小さく呟いた。
岬のことだ。今カノの前で、余計な事はもう喋らないだろうな。
そうだよな。
「確かに─────アンタの言うことにも一理あるよな」
それは認めるぜ、と俺は小さく頷いた。
岬から見れば、夢野の行動や言動に対して信用できないというのも仕方がないことなのかもしれない。
それ程までに夢野と岬、二人の間の亀裂は修復不能な状態に感じられた。
岬はチラリと校舎の時計を見た。
コイツも受験生だと言うし、俺なんかとダラダラ駄弁ってる時間なんて無いんだろう。
小柄な女子が岬の腕を引っ張っている。
他校の不良なんかと絡んでほしくない。
怯えたような小柄な女子の目はそう訴えていた。
岬は頷き、わかったよ、といった風に女子の頭を撫でた。
「─────ところで最後に、一ついいかい?」
背中を向け、校舎の方向に歩きかけた岬が振り返り俺を見た。
「彼女は結局─────友人とキチンと和解してトラブルに対処出来たのかい?」
その質問の意図するところは俺にはわからなかった。
いや、と俺は小さく首を振った。
水森とは溝が出来たままだし、食券分の返済もまだだ。クラス内でも上野からはよく思われていないし─────
夢野に関するトラブルは何一つ解決などしていないのが現状だった。
「それが答えだよ」
岬は冷たい視線と共にそう言い放った。
「自分がやるべき事を行わず、他人に対して行う主張は声高に叫ぶ」
一体彼女のどこを信頼すればいいんだ?という岬の言葉に俺は何も言えなかった。
「君も同じだよ。何を根拠にそこまで彼女を信用できるのか─────全く不思議だ」
君も早く目を覚ましなよ、と岬は言い捨てて校舎に戻っていった。
俺は何も言えず、ただ黙ってその場に突っ立っているだけだった。
岬と女子生徒の後ろ姿を見送りながら、俺はぼんやりと考えていた。
誰だったかな、岬に似たやつが居たよな。つい最近、ソイツの話を誰かとしてて……
そして不意に俺は思い出した。
そうだ、アイツだよ。岬に似てるのは─────
頭に浮かんだ、岬と『似た人物』
エーミール。『少年の日の思い出』の登場人物だった。
岬は黙った。
しばらく何かを考えているようにも思えた。
─────もしかして、夢野と会う気になってくれたんだろうか。
一瞬、俺がそう考えた時だった。
校舎から一人の女子生徒が歩いてきた。
「あの、岬先輩」
女子はおずおずと岬に話しかけた。
「なんだい?」
岬は柔らかな笑みを浮かべ、女子生徒に聞き返す。
ロングの黒髪、大人しそうな小柄な女子。
一年だろうか。
「そろそろ戻りましょう、先輩」
そうだね、と岬は見せたことのない優しい表情で頷いた。
俺は悟ってしまった。
岬にはもう、新しい彼女ができてる。
小柄な女子と岬の間に漂う濃密な空気。
それはつまり、もう夢野との関係が元に戻ることはないという事実を俺に突き付けた。
どちらにせよ、岬はもう聞く耳を持たないだろう。
俺は黙った。
「僕を動かしたいなら、診断書でもなんでも持ってくればいいんだ」
そうでなきゃ言ったもの勝ちみたいになってしまうだろう?と岬は俺に向かって小さく呟いた。
岬のことだ。今カノの前で、余計な事はもう喋らないだろうな。
そうだよな。
「確かに─────アンタの言うことにも一理あるよな」
それは認めるぜ、と俺は小さく頷いた。
岬から見れば、夢野の行動や言動に対して信用できないというのも仕方がないことなのかもしれない。
それ程までに夢野と岬、二人の間の亀裂は修復不能な状態に感じられた。
岬はチラリと校舎の時計を見た。
コイツも受験生だと言うし、俺なんかとダラダラ駄弁ってる時間なんて無いんだろう。
小柄な女子が岬の腕を引っ張っている。
他校の不良なんかと絡んでほしくない。
怯えたような小柄な女子の目はそう訴えていた。
岬は頷き、わかったよ、といった風に女子の頭を撫でた。
「─────ところで最後に、一ついいかい?」
背中を向け、校舎の方向に歩きかけた岬が振り返り俺を見た。
「彼女は結局─────友人とキチンと和解してトラブルに対処出来たのかい?」
その質問の意図するところは俺にはわからなかった。
いや、と俺は小さく首を振った。
水森とは溝が出来たままだし、食券分の返済もまだだ。クラス内でも上野からはよく思われていないし─────
夢野に関するトラブルは何一つ解決などしていないのが現状だった。
「それが答えだよ」
岬は冷たい視線と共にそう言い放った。
「自分がやるべき事を行わず、他人に対して行う主張は声高に叫ぶ」
一体彼女のどこを信頼すればいいんだ?という岬の言葉に俺は何も言えなかった。
「君も同じだよ。何を根拠にそこまで彼女を信用できるのか─────全く不思議だ」
君も早く目を覚ましなよ、と岬は言い捨てて校舎に戻っていった。
俺は何も言えず、ただ黙ってその場に突っ立っているだけだった。
岬と女子生徒の後ろ姿を見送りながら、俺はぼんやりと考えていた。
誰だったかな、岬に似たやつが居たよな。つい最近、ソイツの話を誰かとしてて……
そして不意に俺は思い出した。
そうだ、アイツだよ。岬に似てるのは─────
頭に浮かんだ、岬と『似た人物』
エーミール。『少年の日の思い出』の登場人物だった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
中1でEカップって巨乳だから熱く甘く生きたいと思う真理(マリー)と小説家を目指す男子、光(みつ)のラブな日常物語
jun( ̄▽ ̄)ノ
大衆娯楽
中1でバスト92cmのブラはEカップというマリーと小説家を目指す男子、光の日常ラブ
★作品はマリーの語り、一人称で進行します。
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる