782 / 1,153
ep8
ep8『愚者の宝石と盲目の少女たち』 再生
しおりを挟む
結局のところ、昔の時代だろうが現代だろうが関係ない。
俺には女子の考えてることなんか1ミリもわからない。
この一件で─────────俺が唯一得た教訓はそれだった。
その後。
美術室にこれ以上居ても小泉の蘊蓄を延々と聞かされるだけだと悟った俺は早々に退散し、保健室に逃げ込んだ。
「……何か用?」
ドアを開け、俺が室内に足を踏み入れる前に佐々木はそっけなく言い放つ。
つれないなぁ、と言いながら俺はパイプ椅子に勝手に座る。
「この後、後輩と遊ぶ約束しててさ。待ち合わせの時間までちょっとここで暇つぶしさせてくれよ」
俺がそう言うと、佐々木は忙しそうに手を動かしながら答える。
「──────今日はわたしも早めに切り上げる予定よ。こっちも約束があるの」
「へぇ?意外だな。お前が誰かと約束とか──────」
誰かとデートとかwと俺が少し揶揄うように言うと佐々木はため息をついた。
「おあいにくさま。デートの相手は上野さんよ。駅前の喫茶店に一緒に行こうって誘われたの」
なんでも、最近入ったアルバイトのギャルソンに物凄いイケメンが居るって話で、と佐々木は少し笑みを浮かべる。
「聞き上手でどんな話も聞いてくれるって言っててね。彼女、最近はそこの喫茶店に通い詰めてるそうよ」
なるほど、上野らしいな、と言いながら俺はぼんやりと相槌を打った。
「イケメンに釣られて行くなんてさ、お前も結構ミーハーなとこあるよな」
まあね、と佐々木は少し表情を固くした。
「これから情報収集の場になる可能性もある店だって思ったから、ま、念の為にね」
俺は忙しくペンを走らせる佐々木の手元を覗き込む。
「また何かの事件を追ってるのか?」
ああ、これは、と佐々木はため息をつく。
「わたしってこうして保健室登校って形にして貰ってるでしょう?一ヶ月に一回、近況報告のような形でレポートを提出しなきゃいけないのよ」
それがまた厄介なのよね、と佐々木はぼやく。
「は?お前ってこういうの得意だろ?パパッと書いちゃえばいいじゃん」
俺がそう言うと佐々木は首を振った。
「そうもいかないの。何せ、『困難を抱えて教室に登校出来ない生徒』を演じてる訳だから」
元気一杯にやる気に満ち溢れてても駄目だし、かと言って落ち込み過ぎてても心配されるし、と佐々木はペンを止めて考え込む素振りをみせる。
「なるほどなぁ。保健室登校って身分の性質上、あんまりポジティブ過ぎると『そろそろ教室で授業を受けたらどうだ?』的な提案をされるって事か」
そういうこと、と佐々木は頷く。
「……この匙加減がなかなか難しくてね。毎回悩みどころなのよ────────」
佐々木がため息をついた拍子に、消しゴムが机の上からポロリと落下する。
「おっと」
俺がそれを拾うと───────消しゴムとケースの隙間から『G』とマジックで書かれた文字がチラリと見えた。
「……ん?」
「ちょっ!!!!」
佐々木が珍しく慌てた様子で俺の手から消しゴムを奪い取った。
「……なんかさ、さっき消しゴムになんか字が書いてあんのチラっと見えたんだけど───────」
俺がそう言い掛けると、佐々木は珍しく感情を露わにした。
「ちょ……勝手に見ないでくれる!?これはその───────!!」
佐々木は何故か焦っているような表情を浮かべた。
「デ……データを入れてるマイクロSDカードを消しゴムに隠してカモフラージュしてて!!」
その為の識別記号だから!!と佐々木は耳を真っ赤にした。
「なんだよ……機密事項が入ってんのか」
おっかねぇな、と俺が呟くと佐々木は同調する。
「そう!これは極秘事項なの!だから貴方の目に触れさせる訳にはいかないの!」
はいはい、わーったよ、と適当に返事を返すと佐々木は俺の背中を押した。
「さあ、もう出ていって!わたしもこの後、ここを閉めて帰るから!」
極秘事項とやらを知られたくないのか───────妙な反応の佐々木に困惑しながら俺は保健室を後にした。
俺には女子の考えてることなんか1ミリもわからない。
この一件で─────────俺が唯一得た教訓はそれだった。
その後。
美術室にこれ以上居ても小泉の蘊蓄を延々と聞かされるだけだと悟った俺は早々に退散し、保健室に逃げ込んだ。
「……何か用?」
ドアを開け、俺が室内に足を踏み入れる前に佐々木はそっけなく言い放つ。
つれないなぁ、と言いながら俺はパイプ椅子に勝手に座る。
「この後、後輩と遊ぶ約束しててさ。待ち合わせの時間までちょっとここで暇つぶしさせてくれよ」
俺がそう言うと、佐々木は忙しそうに手を動かしながら答える。
「──────今日はわたしも早めに切り上げる予定よ。こっちも約束があるの」
「へぇ?意外だな。お前が誰かと約束とか──────」
誰かとデートとかwと俺が少し揶揄うように言うと佐々木はため息をついた。
「おあいにくさま。デートの相手は上野さんよ。駅前の喫茶店に一緒に行こうって誘われたの」
なんでも、最近入ったアルバイトのギャルソンに物凄いイケメンが居るって話で、と佐々木は少し笑みを浮かべる。
「聞き上手でどんな話も聞いてくれるって言っててね。彼女、最近はそこの喫茶店に通い詰めてるそうよ」
なるほど、上野らしいな、と言いながら俺はぼんやりと相槌を打った。
「イケメンに釣られて行くなんてさ、お前も結構ミーハーなとこあるよな」
まあね、と佐々木は少し表情を固くした。
「これから情報収集の場になる可能性もある店だって思ったから、ま、念の為にね」
俺は忙しくペンを走らせる佐々木の手元を覗き込む。
「また何かの事件を追ってるのか?」
ああ、これは、と佐々木はため息をつく。
「わたしってこうして保健室登校って形にして貰ってるでしょう?一ヶ月に一回、近況報告のような形でレポートを提出しなきゃいけないのよ」
それがまた厄介なのよね、と佐々木はぼやく。
「は?お前ってこういうの得意だろ?パパッと書いちゃえばいいじゃん」
俺がそう言うと佐々木は首を振った。
「そうもいかないの。何せ、『困難を抱えて教室に登校出来ない生徒』を演じてる訳だから」
元気一杯にやる気に満ち溢れてても駄目だし、かと言って落ち込み過ぎてても心配されるし、と佐々木はペンを止めて考え込む素振りをみせる。
「なるほどなぁ。保健室登校って身分の性質上、あんまりポジティブ過ぎると『そろそろ教室で授業を受けたらどうだ?』的な提案をされるって事か」
そういうこと、と佐々木は頷く。
「……この匙加減がなかなか難しくてね。毎回悩みどころなのよ────────」
佐々木がため息をついた拍子に、消しゴムが机の上からポロリと落下する。
「おっと」
俺がそれを拾うと───────消しゴムとケースの隙間から『G』とマジックで書かれた文字がチラリと見えた。
「……ん?」
「ちょっ!!!!」
佐々木が珍しく慌てた様子で俺の手から消しゴムを奪い取った。
「……なんかさ、さっき消しゴムになんか字が書いてあんのチラっと見えたんだけど───────」
俺がそう言い掛けると、佐々木は珍しく感情を露わにした。
「ちょ……勝手に見ないでくれる!?これはその───────!!」
佐々木は何故か焦っているような表情を浮かべた。
「デ……データを入れてるマイクロSDカードを消しゴムに隠してカモフラージュしてて!!」
その為の識別記号だから!!と佐々木は耳を真っ赤にした。
「なんだよ……機密事項が入ってんのか」
おっかねぇな、と俺が呟くと佐々木は同調する。
「そう!これは極秘事項なの!だから貴方の目に触れさせる訳にはいかないの!」
はいはい、わーったよ、と適当に返事を返すと佐々木は俺の背中を押した。
「さあ、もう出ていって!わたしもこの後、ここを閉めて帰るから!」
極秘事項とやらを知られたくないのか───────妙な反応の佐々木に困惑しながら俺は保健室を後にした。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
旧校舎の地下室
守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる