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ep9
ep9『ナイト・オブ・ファイヤー』 倫理観と人生の強制破壊
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それって─────────鈴木先輩には黙っておけって意味だよな!?
俺の全身は体温が下がり、氷のように冷たくなる。
どういうことだよ……
俺にこの秘密を背負えと!?
重すぎる。
こんな恐ろしい事実、俺の手には余り過ぎる。
余りすぎてバーストしちまう。
ただ拉致られた奥さんを助けに来ただけだっていうのに、俺はなんて話を聞いてしまったんだろう。
俺は心の底から話を立ち聞きしてしまった事を後悔していた。
こんなことなら正面からドアを開けて普通に入っていけば良かった。今更遅いんだけどさ。
俺の顔が真っ青になってるのを感じたんだろう、春崎小紅がこちらをチラリと見てこう言った。
「あ、おにーさんて羽威刄闇(ワイバーン)の人……?」
なんかさ、もういいからこのオネーサン連れて帰ってよぉ、と春崎小紅は困惑した様子で俺に言った。
そうだよな。持て余すよな、お前もさ。
「アタシさ、族同士の抗争とかマジでどうでも良かったしぃ……」
春崎小紅にとって俺の登場は渡りに船だったんだろう。
「これでお姉ちゃんの気が済んで吹っ切れるんならって思って協力しただけでぇ……でもなんか意味ないっていうかぁ……」
こういうのってぇ、やっぱ当人同士で話し合わないと意味なくない……?という春崎小紅の発言はもっともなものだった。
ていうか、コイツやっぱ普通な奴なんだな。
常識的な考えを持ち合わせてるっていうかさ。
ああ、と俺は混乱しつつも頷く。
「話し合い?」
奥さんは春崎小紅の発言に対し、クスクスと笑いながらこう返す。
「そんなものに意味なんてないです。だって有斗くんはもう絶対に八宇と別れるなんて出来ないんですから」
え、と春崎小紅が小さく声を漏らす。
「その為に八宇はまた妊娠してるんです。二人を絶対に元サヤになんて戻させませんよ」
春崎小紅の顔も真っ青になっているのが手にとるようにわかった。
なんだよこれ。
なんだ?
何を言っている……?
まるで異なる価値観と倫理観、それからその手段。
一般人でしかない俺と春崎小紅は正気の範疇を遥かに越えたロジックの前にただ立ち尽くしていた。
なんだよこれ?
俺は一体何を聞かされているんだ?
目眩がするような常軌を逸した状況に春崎小紅は耐えられなかったのだろう。
「じゃあ、アタシはもう帰るからぁ……」
お兄さん、あとよろしくね、と言いながら春崎小紅はヨロヨロと裏口のドアに消えていく。
おいおいおいおい、ちょっと待ってマジで!?
俺を一人にしないでくれよ春崎!
途方に暮れながらも俺は─────────残り全ての気力を振り絞ってこうやっとの思いで声を掛ける。
「さ……さあ、帰りましょう、先輩の奥さん」
スマホでタクシーでも呼びましょうか、と俺がビクビクしながら声を振り絞ると奥さんはニッコリと笑った。
でもその目は笑ってないんだ。
「ええ。ありがとうございます。でも大丈夫ですよ」
迎えの車を呼びましたから、と静かに奥さんは言った。
「先に家に戻ってますね、八宇は一人で平気ですから」
その次に奥さんは────────俺に念押しするように静かにこう言った。
「有斗くんに“よろしく”伝えといて下さいね」
俺の全身は体温が下がり、氷のように冷たくなる。
どういうことだよ……
俺にこの秘密を背負えと!?
重すぎる。
こんな恐ろしい事実、俺の手には余り過ぎる。
余りすぎてバーストしちまう。
ただ拉致られた奥さんを助けに来ただけだっていうのに、俺はなんて話を聞いてしまったんだろう。
俺は心の底から話を立ち聞きしてしまった事を後悔していた。
こんなことなら正面からドアを開けて普通に入っていけば良かった。今更遅いんだけどさ。
俺の顔が真っ青になってるのを感じたんだろう、春崎小紅がこちらをチラリと見てこう言った。
「あ、おにーさんて羽威刄闇(ワイバーン)の人……?」
なんかさ、もういいからこのオネーサン連れて帰ってよぉ、と春崎小紅は困惑した様子で俺に言った。
そうだよな。持て余すよな、お前もさ。
「アタシさ、族同士の抗争とかマジでどうでも良かったしぃ……」
春崎小紅にとって俺の登場は渡りに船だったんだろう。
「これでお姉ちゃんの気が済んで吹っ切れるんならって思って協力しただけでぇ……でもなんか意味ないっていうかぁ……」
こういうのってぇ、やっぱ当人同士で話し合わないと意味なくない……?という春崎小紅の発言はもっともなものだった。
ていうか、コイツやっぱ普通な奴なんだな。
常識的な考えを持ち合わせてるっていうかさ。
ああ、と俺は混乱しつつも頷く。
「話し合い?」
奥さんは春崎小紅の発言に対し、クスクスと笑いながらこう返す。
「そんなものに意味なんてないです。だって有斗くんはもう絶対に八宇と別れるなんて出来ないんですから」
え、と春崎小紅が小さく声を漏らす。
「その為に八宇はまた妊娠してるんです。二人を絶対に元サヤになんて戻させませんよ」
春崎小紅の顔も真っ青になっているのが手にとるようにわかった。
なんだよこれ。
なんだ?
何を言っている……?
まるで異なる価値観と倫理観、それからその手段。
一般人でしかない俺と春崎小紅は正気の範疇を遥かに越えたロジックの前にただ立ち尽くしていた。
なんだよこれ?
俺は一体何を聞かされているんだ?
目眩がするような常軌を逸した状況に春崎小紅は耐えられなかったのだろう。
「じゃあ、アタシはもう帰るからぁ……」
お兄さん、あとよろしくね、と言いながら春崎小紅はヨロヨロと裏口のドアに消えていく。
おいおいおいおい、ちょっと待ってマジで!?
俺を一人にしないでくれよ春崎!
途方に暮れながらも俺は─────────残り全ての気力を振り絞ってこうやっとの思いで声を掛ける。
「さ……さあ、帰りましょう、先輩の奥さん」
スマホでタクシーでも呼びましょうか、と俺がビクビクしながら声を振り絞ると奥さんはニッコリと笑った。
でもその目は笑ってないんだ。
「ええ。ありがとうございます。でも大丈夫ですよ」
迎えの車を呼びましたから、と静かに奥さんは言った。
「先に家に戻ってますね、八宇は一人で平気ですから」
その次に奥さんは────────俺に念押しするように静かにこう言った。
「有斗くんに“よろしく”伝えといて下さいね」
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