1,027 / 1,153
ep10.
ep10.『聖母と道化、その支配人』River
しおりを挟む
一階の入り口の付近にある受付────────小さなカウンターに俺達は近付いた。
カウンターのショーケースにはいくつかの商品券なんかが並んでいる。
受付に人は居らず、『御用の方はベルを鳴らしてください』というラミネート加工された表示が貼り付けられていた。
戸惑っていても仕方がない。
俺がそのボタンを押すと、30前後と思しき店員が品出しの手を止めてこちらにやってきた。
「……はい、いらっしゃいませ」
何かお探しでしょうか、と店員はやや不思議そうな表情で俺達を見つめている。
それもそうだ。
手を繋いだ中学生二人組が来るにしては不自然な店であり売り場だもんな。
しかし、店員はそこまで不審者を見るような目つきで俺達を見ていた訳でもないってことが理解できた。
この店舗では学生服も取り扱っている。或いは、布地やハギレなんかも置いてある。
カッターシャツの予備でも買いに来たか、もしくは文化祭の劇で使うような芝居用の衣装の布地を買いに来たって思われたのかもしれない。
「どういった商品をお探しでしょうか。当店は東館と西館がございまして─────────」
店員はフロアマップを取り出し、俺達を案内してくれようとしている。
いえ、と俺はその言葉を遮ってこう言った。
「隣にいるのは水森唯という女子です。ここの社長さんと話がしたい。名前を出せばわかると思いますよ」
俺がそう言うと店員はポカンとした表情で俺と水森唯を交互に見つめた。
「……は?」
まあそういうリアクションになるよな。
「─────孫娘が会いに来たって社長に伝えるだけでいい。直通電話とかあるんでしょう?」
俺がそれだけ言うと、店員は内線電話を取ってどこかに電話し始めた。
「……あの、一階受付に社長のお孫さんを名乗る中学生が来てるんですが─────────」
はい、はい、わかりました、と店員は電話の向こうの人物との会話を終えると受話器を置いた。
「……あいにく社長は只今不在でして────────ただ、直ぐに戻られるとのことです」
ふむ。
一応、向こうに話は通ったんだろうか。
「社長到着までの間、西館の五階のフロアでお待ちいただくようにと────────ご案内しますね」
店員はやや強張った表情でもう一度俺達を交互に眺めた。
よし。
社長がここに来る。
ダメ元で言ってみるもんだな、と俺が思っていると────────────横の水森唯が小さく震えていた。
(……ここまで来りゃもう大丈夫だろ?)
小声でそう言うと水森唯は首を小さく振った。
(……どうしよう。私、なんて言えば──────────)
店員がエレベーターの場所まで俺達を案内する。
「大丈夫だって」
古いエレベーターに乗り込むとギシギシと軋んだ音が響き、ドアが閉まった。
カウンターのショーケースにはいくつかの商品券なんかが並んでいる。
受付に人は居らず、『御用の方はベルを鳴らしてください』というラミネート加工された表示が貼り付けられていた。
戸惑っていても仕方がない。
俺がそのボタンを押すと、30前後と思しき店員が品出しの手を止めてこちらにやってきた。
「……はい、いらっしゃいませ」
何かお探しでしょうか、と店員はやや不思議そうな表情で俺達を見つめている。
それもそうだ。
手を繋いだ中学生二人組が来るにしては不自然な店であり売り場だもんな。
しかし、店員はそこまで不審者を見るような目つきで俺達を見ていた訳でもないってことが理解できた。
この店舗では学生服も取り扱っている。或いは、布地やハギレなんかも置いてある。
カッターシャツの予備でも買いに来たか、もしくは文化祭の劇で使うような芝居用の衣装の布地を買いに来たって思われたのかもしれない。
「どういった商品をお探しでしょうか。当店は東館と西館がございまして─────────」
店員はフロアマップを取り出し、俺達を案内してくれようとしている。
いえ、と俺はその言葉を遮ってこう言った。
「隣にいるのは水森唯という女子です。ここの社長さんと話がしたい。名前を出せばわかると思いますよ」
俺がそう言うと店員はポカンとした表情で俺と水森唯を交互に見つめた。
「……は?」
まあそういうリアクションになるよな。
「─────孫娘が会いに来たって社長に伝えるだけでいい。直通電話とかあるんでしょう?」
俺がそれだけ言うと、店員は内線電話を取ってどこかに電話し始めた。
「……あの、一階受付に社長のお孫さんを名乗る中学生が来てるんですが─────────」
はい、はい、わかりました、と店員は電話の向こうの人物との会話を終えると受話器を置いた。
「……あいにく社長は只今不在でして────────ただ、直ぐに戻られるとのことです」
ふむ。
一応、向こうに話は通ったんだろうか。
「社長到着までの間、西館の五階のフロアでお待ちいただくようにと────────ご案内しますね」
店員はやや強張った表情でもう一度俺達を交互に眺めた。
よし。
社長がここに来る。
ダメ元で言ってみるもんだな、と俺が思っていると────────────横の水森唯が小さく震えていた。
(……ここまで来りゃもう大丈夫だろ?)
小声でそう言うと水森唯は首を小さく振った。
(……どうしよう。私、なんて言えば──────────)
店員がエレベーターの場所まで俺達を案内する。
「大丈夫だって」
古いエレベーターに乗り込むとギシギシと軋んだ音が響き、ドアが閉まった。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ちょっと大人な物語はこちらです
神崎 未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な短編物語集です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
あるフィギュアスケーターの性事情
蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。
しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。
何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。
この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。
そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。
この物語はフィクションです。
実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち
ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。
クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。
それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。
そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決!
その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる