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1 noche
しおりを挟む―…物事の始まりはいつも唐突に起こる。
いつもの蒼空が、赤黒く染まり鳴き出した。
地は死に枯れ、禍々しい川水となった。
〝天変地異〟これほど当てはまる言葉があろうか。
平和 を謳った和暦のはずが
たったいまそれが崩れ去っていった。
そしてその中、涙を流しながら佇んでいる少女が一人。
「人間が…いない。ここはどこ…?なにか、あったの…?」
少女は自問自答する。
先程までの光景を瞼の裏に映しながら。
――数十分前――
大勢の人が行き交う街の中。
彼女もまたその中にいたのだ。未だ平和であったとき。
(今日も、昨日と同じ日常。何も、変わらない平和な日常……そして独りの私)
彼女は常に孤独であった。それは異様な容姿であったからだ。
物心ついた時には何もなく、誰もいなかった。
ただあったのは蔑みの目と疎み、恐れの目。要するに厄介者だったのだ。
敵。幼い彼女にはそれしかいなかった。そうとしか見えなかった。
唯一彼女が敵だらけの世の中で生きていけたのは
昔からあるブレスレットのおかげだ。
親の形見であるらしいブレスレットには蒼い砂時計がついていて砂時計の中にはハートの石も入っていた。
その時も彼女は太陽に向けその砂時計を掲げていた。
……涙を零しながら
「私の周りには敵しかできない。そんな世の中、どう、生きていけばいいの。誰も…いないっ…」
_私は独り……。改めてそう思った時であった。
後ろから誰かに押され、彼女は倒れてしまった。
「あっ……!」
ぱりん。その音が彼女の耳に残った。
大事な砂時計が割れたのだ。
「あ、ぅあ……大事だったのに……」
とにかく拾えれるものは拾い集めた。
だが砂は拾えども流れ落ち欠片は散ってしまった
このあとのことははっきりと覚えていない。
今まで大事にしてきて、自分の支えだったものが呆気なく崩れ去っていったのだ。
がむしゃらに泣き叫んで走った。
傍から見ればたかが形見でも彼女にとっては違ったのだ。
写真も何も親のものはなく、残ってたものはこの砂時計。唯一の味方であろう親の形見。
がむしゃらに走り続けて体力も限界を迎えた頃
ついに彼女はなにかに躓きこけた。そうしてあたりを見渡し、疑問を抱いた。〝ここはどこ?〟と
同時に気づいた。砂時計が割れたときの衝撃でハートの石も飛んでいってしまってた。
「石なくしちゃった……それにここどこなんだろう…私どうしたらいいの…」
そして今に至る。
あたりを歩き回っていたがやはり人は見つからず
自分しかいない。
空の色も戻らずついには渦を描き出している。
不気味な世界に怯えながらも。自分独りの世界を楽しみ始めていた
敵がいない世界。誰も私を蔑まないあの目で見る人がいない
幸せな気持ちにもなってきていて、浮かれてもいた。
…あることを見落としていたとも知らずに……。
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