それでは明るくさようなら

金糸雀

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襲撃されました*

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「じゃぁもういいですね。」
宮君が突然言い出した。
じっと、じぃっとボクをガン見したまま。
「?なにが?」
じゃぁ、って。何に接続してるの??
ボクは宮君が何を言い出したかわかんなくて、じぃっと宮君をガン見し返す。
いつも通りの無表情な顔。うん。何もわからん。

(じゃぁ、も。もう、も。いいですね、も。何のことやらさっぱりだ。)

ボクはバチバチ瞬きを繰り返す。
突然の宮君の発言はただただ謎すぎて、目が乾くなぁなんて思いながら、宮君から視線外せない。
「宮君?」
返答を促すように名前を呼んでみても、宮君はただボクを真っ直ぐ見てくる。
強い、目だ。


(弓引いてる時よりまっすぐだ…。)


宮君はそして、ボクから視線を外さないまま。器用にボクの手からチーズに刺してたピックを受け取って、テーブルの上のお皿に置いて。それから徐にーーなんて、そんな悠長さ無かった。皆無。


「?!」



がばって、ぐいって。声なんて出す暇もなくって。
いきなりボクの正面からがしぃって両手でボクの頭掴んでそのまま。
噛みつかれた。
噛みつかれた。
噛みつかれたぁ?!!


「?!?」


ボクの頭、思考停止。
身体は硬直状態、ぴしーって止まった。息も、なにもかも止まった。
うぇえ?!
だって!宮君の羨ましい限りのおっきな手が、ボクの頭?耳?側頭部?わからん!なんかその辺りをがしいって掴んでそれで!ちょっと顔とか斜めってて、えぇ?!
なんで噛みつかれうえぇぇちがった違ったちがったぁ!なんでなんで!ボク!今宮君に!



ちゅーされてんの!?!




驚愕過ぎてかっぴらいだボクの目を、眼鏡越しの宮君の真っ黒な目がまっすぐ、ものすごく鋭く、真摯に、貫く。
なんかすごい熱量で。
ものすごい、温度で。


待って。
とりあえず待って待って待って!
宮君の腕、バシバシ叩いてはなして離してしてるのに!なんならどんどん容赦なくソファーに押し倒してくるから足でがしがし蹴ってんのになんで!
宮君の手!ボクの後頭部と首、首掴んで!
唇がくっついて離れてまたすぐ噛んできてずっとずっとずっとボクの唇も呼吸も奪ってくのなんで?!
「はっ…ん!んんん…!!」
にゅるんって宮君の舌が口の中、入ってきてうわぁぁん!!上顎も下顎も舌も、縦横無尽に動き回るその分厚い宮君の舌が、吸って噛んで舐め回してくんのほんとなんでだよ!!
蹴り続けてんのに、いつのまにかボクの足の間に膝入れて。後頭部と首掴んでる手の、肘がボクの肩とか押さえつけて。なんだこれ。なんだこれ状態。
ボクの動きを確実に押さえ込んでくその間。
その間ずっと、ボクの目をまっすぐ見てくんの。
眼鏡越しなのに、すごい。この上なく強く強く。
殺しそうな、目で。




(ほんと、殺される。)




「先輩。」

物理的にくっついてないだけでボク的には唇くっついてるに分類される距離で宮君が、言う。
「イイ子で待てしてたんだ。」
ぺろって、赤い舌だして。
「もういいですよね?」
宮君。宮君の、普段薄い色してた唇。今は赤く色付いた唇、ぺろってして。
ボクとのちゅーで糸引いた唇、ぺろってして!!

「ね?先輩。」

そんで。



ぶぁぁぁぁあぁって、一気にボクの全身、赤く染まったのわかる。だって、だってだって宮君が。
さっきまでほんと殺しそうな目してた宮君が笑ったんだ。ぺろってして、ぺろってしてそれで、今まで見たことない顔して笑った。笑ったんだよ艶やかにぃぃ!!


「お前ぇ!そんな色気今までどこ隠してたんだよぉ!!」


物理的に離れてるから、ボク、叫んだ。
多分迫力ない真っ赤な顔してるけど!



「イイ子してたんで?」
「ぎゃぁあぁ!」
叫んだ。ボク、叫んだよ。
だって宮君の色気が凄過ぎて!思考回路が停止どころか可笑しくなっちゃったんだもの!



もうとにかくこの状況なんとかしたくてバタバタ足動かしてんのに、いつの間にか首から離れた手がボクの暴れる太もも押さえつけてくるし、また唇くっついてくるし!!

「!!?!」

え?
ナニ?
こ、腰。
硬いの、その、うぇぇぇぇぇ!
腰押し付けてくんのほんとになんでだー!!! 
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