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第二章
54『なごやかな朝食』
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マチルダを連れてピットを出ると、外の井戸でザルバが顔を洗っていた。
「ザルバさん、おはよう。
すぐに朝食、用意するね」
マチルダの相手を彼に任せて、アンナリーナは焚き火の元へと駆けていく。
フランクも起き出して、情けなそうに胃を押さえていた。
「フランクおはよう!
今朝はちょっとお手伝いをお願いしちゃうよ」
「なんでも言うこと、聞く」
「うんうん、じゃあ焚き火の周りを片付けておいて」
アンナリーナは携帯用の魔導コンロを取り出し、隣に作業台も設置した。
そこに、小瓶に入った植物油、玉子、塩胡椒、フライパン、フライパン用の蓋を取り出し、フライパンは火にかけて加熱し始める。
横にカットボードを出し、フランクを呼んだ。
イギリス食パンを、腰の鞘から抜いたミスリルのナイフに【洗浄】をかけ、普通の6枚切りくらいの厚さに切る。
「これはマチルダさんの分、あとは普通に切って……フランクはどのくらい欲しい?」
案の定、フランクは4cmくらいの指の幅を作って見せた。
「私は玉子を焼いていくから、このパンを軽く炙って欲しいの。
あ、その前にこれ持っていって」
バッグから出てきたボウルごとのポテトサラダに、予想通りフランクは小躍りしている。
「私もお手伝いするわ」
マチルダが申し出てくれたので、スープは任せることにする。
スプラウトのサラダも一緒に渡した。
フランクに金属製のトングとともに食パンを渡し、くれぐれも焦がさないように言うと、アンナリーナは目玉焼きを焼き始めた。
空焚きしない程度に温めてあったフライパンに油をひく。
すぐに玉子を5個割り入れ、白身が固まってきたところで【ウォーター】の水をほんの少し入れて蓋をする。
「フランク、パンは焼けた?
こっちはそろそろいけるよ」
マチルダのための薄めのパンが渡され、それを皿に置いたアンナリーナは、まだほとんど黄身が固まっていない状態の目玉焼きを乗せた。
軽く塩胡椒をする。
「はい、マチルダさんの出来上がり。
ケチャップはお好みでどうぞ」
次々と、焼きあがったパンに目玉焼きを乗せ各自に渡していく。
最後の、フランクのパンはひときわ分厚いかった。
アンナリーナは、1日のスタートである朝食は、がっつり食べる派だ。
マチルダが気を遣って控えめにしてくれたスープに舌鼓をうち、スプラウトとアボガド擬きのサラダはマチルダと争うようにして食べた。
ポテトサラダは……フランクに任せてある。
「フランクは本当にそれが好きなのね。でも前にも言ったと思うけど、自分でマヨネーズを作ったり、今朝の目玉焼きみたいに玉子を生に近い状態で食べちゃ、ダメだよ?」
「そうなのか?」
フランクはショックを受けたようだ。
「その玉子もマヨネーズを作るのに使ってるのも、ちゃんと生んだ時を把握していて管理もしてるの。
そこらの玉子を生で食べたら、中って死んじゃうよ?」
「マジかよ……」
「マヨネーズは作ったらすぐに食べなきゃダメだし……フランクがポテトサラダを食べられるのは、私と一緒の時だけだね」
「リ~ナ~~」
「せめてアイテムボックスを用意しなきゃ……時間経過なしのやつ」
「バリバリ働かなきゃダメだな。
頑張れ」
ゲルトに揶揄られ、フランクは居心地悪そうに苦笑する。
このように、朝一のとりとめない語らいで、5人はリラックスしていた。
「あの、おはようございます」
声をかけられて振り向くとそこには、皆に押しつけられただろう不本意な顔をしたグスタフが立っていた。
実はアンナリーナ、誰かが近づいて来たのは知っていたが、悪意察知にも危機察知にも引っかからなかったので放置していたのだ。
そして、グスタフの声を聞いて思い出した。
もし、彼らが朝食の事を何か言ってきた時提供しようと、昨夜のソーセージの茹で汁を用意していたのだ。
「おはようございます。
そちらの朝の準備は進んでいますか?」
ザルバが、知りたい事を聞いてくれた。
「身仕度は済んでいます。
朝食もキャサリンさんが中心になって、皆が食材を出し合ってこれから食べるところです」
乗り合い馬車の乗客たちは、本来の形に戻ったようだ。
依存されなくて何より。
こう言った相手には、何かと手助けしたくなる。
ただ、あのキャサリンという奥方は少し感心しないが。
「あと半刻ほど。夜明けと同時に出発したいと思ってます。
準備は大丈夫でしょうか?」
「はい、後は食べるだけなので。
皆に伝えます。失礼しました」
グスタフはピットに駆け戻っていった。
そして、こちらの食後の片付けは簡単なものだ。
すでに早食いのフランクは食事を終え、動き出している。
「マチルダさんはもう馬車で休憩していて下さい。
私もすぐに行きますから」
アンナリーナは最後の一口を口に押し込むと立ち上がり、汚れ物は【洗浄】しながらアイテムバッグにしまっていく。
あっという間に片付いた焚き火の周りには、後は魔導コンロと作業台を残すのみ。
人数分のハーブ茶を淹れている時、その声がした。
「早く私の朝食を準備しなさい」
「ザルバさん、おはよう。
すぐに朝食、用意するね」
マチルダの相手を彼に任せて、アンナリーナは焚き火の元へと駆けていく。
フランクも起き出して、情けなそうに胃を押さえていた。
「フランクおはよう!
今朝はちょっとお手伝いをお願いしちゃうよ」
「なんでも言うこと、聞く」
「うんうん、じゃあ焚き火の周りを片付けておいて」
アンナリーナは携帯用の魔導コンロを取り出し、隣に作業台も設置した。
そこに、小瓶に入った植物油、玉子、塩胡椒、フライパン、フライパン用の蓋を取り出し、フライパンは火にかけて加熱し始める。
横にカットボードを出し、フランクを呼んだ。
イギリス食パンを、腰の鞘から抜いたミスリルのナイフに【洗浄】をかけ、普通の6枚切りくらいの厚さに切る。
「これはマチルダさんの分、あとは普通に切って……フランクはどのくらい欲しい?」
案の定、フランクは4cmくらいの指の幅を作って見せた。
「私は玉子を焼いていくから、このパンを軽く炙って欲しいの。
あ、その前にこれ持っていって」
バッグから出てきたボウルごとのポテトサラダに、予想通りフランクは小躍りしている。
「私もお手伝いするわ」
マチルダが申し出てくれたので、スープは任せることにする。
スプラウトのサラダも一緒に渡した。
フランクに金属製のトングとともに食パンを渡し、くれぐれも焦がさないように言うと、アンナリーナは目玉焼きを焼き始めた。
空焚きしない程度に温めてあったフライパンに油をひく。
すぐに玉子を5個割り入れ、白身が固まってきたところで【ウォーター】の水をほんの少し入れて蓋をする。
「フランク、パンは焼けた?
こっちはそろそろいけるよ」
マチルダのための薄めのパンが渡され、それを皿に置いたアンナリーナは、まだほとんど黄身が固まっていない状態の目玉焼きを乗せた。
軽く塩胡椒をする。
「はい、マチルダさんの出来上がり。
ケチャップはお好みでどうぞ」
次々と、焼きあがったパンに目玉焼きを乗せ各自に渡していく。
最後の、フランクのパンはひときわ分厚いかった。
アンナリーナは、1日のスタートである朝食は、がっつり食べる派だ。
マチルダが気を遣って控えめにしてくれたスープに舌鼓をうち、スプラウトとアボガド擬きのサラダはマチルダと争うようにして食べた。
ポテトサラダは……フランクに任せてある。
「フランクは本当にそれが好きなのね。でも前にも言ったと思うけど、自分でマヨネーズを作ったり、今朝の目玉焼きみたいに玉子を生に近い状態で食べちゃ、ダメだよ?」
「そうなのか?」
フランクはショックを受けたようだ。
「その玉子もマヨネーズを作るのに使ってるのも、ちゃんと生んだ時を把握していて管理もしてるの。
そこらの玉子を生で食べたら、中って死んじゃうよ?」
「マジかよ……」
「マヨネーズは作ったらすぐに食べなきゃダメだし……フランクがポテトサラダを食べられるのは、私と一緒の時だけだね」
「リ~ナ~~」
「せめてアイテムボックスを用意しなきゃ……時間経過なしのやつ」
「バリバリ働かなきゃダメだな。
頑張れ」
ゲルトに揶揄られ、フランクは居心地悪そうに苦笑する。
このように、朝一のとりとめない語らいで、5人はリラックスしていた。
「あの、おはようございます」
声をかけられて振り向くとそこには、皆に押しつけられただろう不本意な顔をしたグスタフが立っていた。
実はアンナリーナ、誰かが近づいて来たのは知っていたが、悪意察知にも危機察知にも引っかからなかったので放置していたのだ。
そして、グスタフの声を聞いて思い出した。
もし、彼らが朝食の事を何か言ってきた時提供しようと、昨夜のソーセージの茹で汁を用意していたのだ。
「おはようございます。
そちらの朝の準備は進んでいますか?」
ザルバが、知りたい事を聞いてくれた。
「身仕度は済んでいます。
朝食もキャサリンさんが中心になって、皆が食材を出し合ってこれから食べるところです」
乗り合い馬車の乗客たちは、本来の形に戻ったようだ。
依存されなくて何より。
こう言った相手には、何かと手助けしたくなる。
ただ、あのキャサリンという奥方は少し感心しないが。
「あと半刻ほど。夜明けと同時に出発したいと思ってます。
準備は大丈夫でしょうか?」
「はい、後は食べるだけなので。
皆に伝えます。失礼しました」
グスタフはピットに駆け戻っていった。
そして、こちらの食後の片付けは簡単なものだ。
すでに早食いのフランクは食事を終え、動き出している。
「マチルダさんはもう馬車で休憩していて下さい。
私もすぐに行きますから」
アンナリーナは最後の一口を口に押し込むと立ち上がり、汚れ物は【洗浄】しながらアイテムバッグにしまっていく。
あっという間に片付いた焚き火の周りには、後は魔導コンロと作業台を残すのみ。
人数分のハーブ茶を淹れている時、その声がした。
「早く私の朝食を準備しなさい」
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