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第三章
3『冒険者登録』
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「自分のを使っても?」
そう言いながら、アイテムバッグからペンとインク壺を出す。
ドミニクスはハッと我に返った。
「すまない。気がつかなくて」
「いえ、大丈夫です」
ドミニクスの視線は、今は大きくはだけられたローブの中のバッグやそこから取り出された筆記具にさまよい、忙しい。
そうこうするうちに、用紙に記入し始めたアンナリーナの手蹟を見て、感嘆の溜め息をつく。
それはドミニクスが今まで見たものの中で一番美しいものだった。
貴族でも中々そこまで書けるものはいない。
アンナリーナが老薬師の弟子になって4年弱……その間に仕込まれた事もあるが、これは前世で成人だったことが大きかった。
当時アンナリーナは10才を少し過ぎた子供だったが、勉強のやり方を知っていたのだ。
名前、これは本名のアンナリーナとは書かない。通名のリーナである。
年齢は14才、準成人である。
職業は薬師。正確には【錬金医薬師】なのだが、そう名乗るつもりはない。
出身地は……
「あの……さっき門のところで兵士さんにも言ってきたのですが、私つい最近まで育ての親と森の中に住んでいたんです。
でも、その師匠が亡くなって森から出てきたのですが……どう書いたらよいですか?」
「そ、それは空欄で」
世事に飽いた賢者が、森に隠遁し気まぐれで弟子を取ることがある、と聞いたことのあったドミニクスが、アンナリーナをまじまじと見つめる。
ここ、ハンネケイナにいる薬師は数代前から住み着いている一族で【薬師】としてギフトが発露したのは彼で最後、そして彼は数種の薬と回復薬しか作れない薬師だ。
ドミニクスは、この目の前の少女がどれほどの回復薬を作るのか、楽しみで仕方ない。
「攻撃方法とか、得意な魔法とかどうしましょうか?」
「それも空欄でけっこうです」
「この【専任】は」
「それも空欄で」
「いえ、こちらはドミニクスさんにお願いしたいです」
「私に?」
そう問い返しながら、ドミニクスはドキリとした。
自分はまだ、名乗っていない事に気付いたのだ。
それなのに目の前の少女は名前を知っている。
ドミニクスは、何もかも見透かされているようで、ゾッとした。
「ええ、ドミニクスさんの人となりはわかっていますから」
アンナリーナは【専任】の欄にドミニクスの名前を書き入れた。
「私を助けると思って、お願いします。ドミニクスさんが【専任】して下さっていたら捩じ込もうとするものもいないでしょう」
良い根性をしている。
アンナリーナはドミニクスを利用しようと言うのだ。
だが、それに関して彼は黙認した。
「次は登録するために、この水晶に触ってもらう」
お馴染みの魔導具である。
隠蔽及び偽造は完璧なので、アンナリーナは臆することなく水晶に触れた。
途端に浮かび上がる、アンナリーナの偽造された情報にドミニクスは目を見張る。
名前 リーナ
年齢 14才
職業 薬師
体力値 4850
魔力値 10250
元々の数値が桁外れなので随分と控えめにしたつもりだったが、アンナリーナの認識にズレがあったようだ。
アンナリーナは知らなかったが、この国では魔力値10000越えは、もはや宮廷魔術師の域なのだ。
「リーナ殿、その、何だ……
これから発行するギルドカードの体力値と魔力値の欄、公表しないほうがいいと思いますよ」
アンナリーナはまた、やらかした事を理解した。
一体どういうメカニズムになっているのか?
散々ラノベで読んできた通りに進んでいく。
水晶で読み取られたアンナリーナの情報(偽造)が、白いカードに記載されて、水晶の下部から飛び出してきた。
「はい、これでギルドでの登録は終わりです。
申し訳ありませんが、あとでギルド登録料として銀貨5枚を支払ってもらえますか?」
「はい、わかりました。
本当にありがとうございました。
……それでですね、少しお話したい事があるのですが」
アンナリーナの勢いに、ドミニクスは頷くしかない。
それを見たアンナリーナは、バッグから茶器を取り出し、ハーブ茶を注ぎ始める。
「どうぞ、私が調合したハーブティーです、主に上半身のこりを取り、リラックスする効能です」
お茶菓子はあっさりラングドシャかしら……などと目の前で呟くアンナリーナは、ドミニクスの目から見てどこまでも規格外だ。
「どうぞ、冷めないうちに召し上がって」
そう言いながら出してきた、回復薬の入った瓶、それを見てドミニクスは、今度こそ目玉が飛び出るほど驚いた
そう言いながら、アイテムバッグからペンとインク壺を出す。
ドミニクスはハッと我に返った。
「すまない。気がつかなくて」
「いえ、大丈夫です」
ドミニクスの視線は、今は大きくはだけられたローブの中のバッグやそこから取り出された筆記具にさまよい、忙しい。
そうこうするうちに、用紙に記入し始めたアンナリーナの手蹟を見て、感嘆の溜め息をつく。
それはドミニクスが今まで見たものの中で一番美しいものだった。
貴族でも中々そこまで書けるものはいない。
アンナリーナが老薬師の弟子になって4年弱……その間に仕込まれた事もあるが、これは前世で成人だったことが大きかった。
当時アンナリーナは10才を少し過ぎた子供だったが、勉強のやり方を知っていたのだ。
名前、これは本名のアンナリーナとは書かない。通名のリーナである。
年齢は14才、準成人である。
職業は薬師。正確には【錬金医薬師】なのだが、そう名乗るつもりはない。
出身地は……
「あの……さっき門のところで兵士さんにも言ってきたのですが、私つい最近まで育ての親と森の中に住んでいたんです。
でも、その師匠が亡くなって森から出てきたのですが……どう書いたらよいですか?」
「そ、それは空欄で」
世事に飽いた賢者が、森に隠遁し気まぐれで弟子を取ることがある、と聞いたことのあったドミニクスが、アンナリーナをまじまじと見つめる。
ここ、ハンネケイナにいる薬師は数代前から住み着いている一族で【薬師】としてギフトが発露したのは彼で最後、そして彼は数種の薬と回復薬しか作れない薬師だ。
ドミニクスは、この目の前の少女がどれほどの回復薬を作るのか、楽しみで仕方ない。
「攻撃方法とか、得意な魔法とかどうしましょうか?」
「それも空欄でけっこうです」
「この【専任】は」
「それも空欄で」
「いえ、こちらはドミニクスさんにお願いしたいです」
「私に?」
そう問い返しながら、ドミニクスはドキリとした。
自分はまだ、名乗っていない事に気付いたのだ。
それなのに目の前の少女は名前を知っている。
ドミニクスは、何もかも見透かされているようで、ゾッとした。
「ええ、ドミニクスさんの人となりはわかっていますから」
アンナリーナは【専任】の欄にドミニクスの名前を書き入れた。
「私を助けると思って、お願いします。ドミニクスさんが【専任】して下さっていたら捩じ込もうとするものもいないでしょう」
良い根性をしている。
アンナリーナはドミニクスを利用しようと言うのだ。
だが、それに関して彼は黙認した。
「次は登録するために、この水晶に触ってもらう」
お馴染みの魔導具である。
隠蔽及び偽造は完璧なので、アンナリーナは臆することなく水晶に触れた。
途端に浮かび上がる、アンナリーナの偽造された情報にドミニクスは目を見張る。
名前 リーナ
年齢 14才
職業 薬師
体力値 4850
魔力値 10250
元々の数値が桁外れなので随分と控えめにしたつもりだったが、アンナリーナの認識にズレがあったようだ。
アンナリーナは知らなかったが、この国では魔力値10000越えは、もはや宮廷魔術師の域なのだ。
「リーナ殿、その、何だ……
これから発行するギルドカードの体力値と魔力値の欄、公表しないほうがいいと思いますよ」
アンナリーナはまた、やらかした事を理解した。
一体どういうメカニズムになっているのか?
散々ラノベで読んできた通りに進んでいく。
水晶で読み取られたアンナリーナの情報(偽造)が、白いカードに記載されて、水晶の下部から飛び出してきた。
「はい、これでギルドでの登録は終わりです。
申し訳ありませんが、あとでギルド登録料として銀貨5枚を支払ってもらえますか?」
「はい、わかりました。
本当にありがとうございました。
……それでですね、少しお話したい事があるのですが」
アンナリーナの勢いに、ドミニクスは頷くしかない。
それを見たアンナリーナは、バッグから茶器を取り出し、ハーブ茶を注ぎ始める。
「どうぞ、私が調合したハーブティーです、主に上半身のこりを取り、リラックスする効能です」
お茶菓子はあっさりラングドシャかしら……などと目の前で呟くアンナリーナは、ドミニクスの目から見てどこまでも規格外だ。
「どうぞ、冷めないうちに召し上がって」
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