魔力値1の私が大賢者(仮)を目指すまで

ひーにゃん

文字の大きさ
400 / 577
第四章

160『学研都市、再び』

しおりを挟む
「戻ってきちゃったよ……」

 馬車をしまい、エピオルスに跨ったアンナリーナたちは、憲兵隊の馬車に乗ったバルトリたちと学研都市アルファ・ケンタウリに入る門の所で佇んでいた。

「まあ、諦めるしかないな」

「あの大学院の学院長とは、もう関わり合いになりたくないんだけど。
 嫌な予感がビシビシする」

 エピオルスの手綱を引いて、アンナリーナは後ろに下がろうとする。

「もう、行っちゃっていいかな?
 私たちは通りかかっただけだからいいよね?」

 これは、アンナリーナの独り言だったのだが、耳ざとく聞いていた憲兵隊のひとりが近寄ってきて、エピオルスの手綱を掴んだ。

「申し訳ないが、もう少しお付き合い願いたい」

 無駄ににっこりと笑って、退路を塞ぐ兵士に、アンナリーナは溜息をつく。
 そしてエピオルスから降りて召喚を解いた。

「私たち、元々王都に向かっていたんですよ。突然の乗り合い馬車運行停止で凄く迷惑してるんです。
 しょうがないから先に南部に行こうとしたら、この度の一件で。
 事情聴取ですか? 早く済ませてもらえませんかね」

 ほぼ、逆ギレ直前である。
 全身から威圧する魔力が漏れ出し、慌ててテオドールが間に入った。

「リーナ、おまえは疲れているんだ。
 今夜はゆっくりしよう、な?」

「うん、熊さん。
 いっぱい、ゆっくりしたい」


 形通りの調書が取られ、この時は一度解放された。
 アンナリーナたちは門に駐留している兵長に許可を取り、門の外の広場で馬車を出す事にした。

「もう今日はゆっくりとお風呂に入って、美味しいものが食べたい」

 フラフラと馬車に向かい、結界を張ったあと、アンナリーナはツリーハウスに戻り、自室に籠った。
 夕食は、きのこのクリームソースがけオムライスである。
 中のバターライスが絶品で、アンナリーナは思わずお代わりをしてしまった。
 サラダはトマトとチーズを重ねて、オリーブオイルをかけたもの。
 それと、茹でた白アスパラガスにバターソースをかけたものだ。
 ビールと、オークのスペアリブのオーブン焼きを楽しんでいるテオドールと2人で、静かな夕餉を楽しみひと息つく。

「もう、このまま解放してくれないかな」

「無理だろうな。
 明日はあの連中の証言と擦り合わせをするんだろう」

 げんなりしながら眠りについたアンナリーナは、翌朝熱を出し寝込むことになる。



 今、バルトリが代表で憲兵隊隊長と対峙している。
 そして相手の発した言葉に理解がついていかない。

「申し訳ございませんが、もう一度お願いします」

「我々はあらゆる可能性について熟考している。
 この件に関して、あの少女たちはいささか怪しくはないかね?
 むしろ、あなたたちを襲って救援する……自作自演だったのではないか?」

「なんて事をおっしゃるのです。
 あの方たちは誠心誠意、私たちを助けて下さった。
 そんなことはあり得ない」

 バルトリは商人である。
 商人であるからこそ、アンナリーナが使ったポーションの価値がどれほどのものか、よくわかっているつもりだ。
 5人の治療費はあちらの言い値を支払ってきたが、それは相場からずいぶんと値引きされていたことに感謝したものだ。

「では、治療の押し売りでは?」

「それもあり得ません」

 隊長は苛立っているように見えた。
 短い期間に2つの事件。
 それも、双方とも盗賊の襲撃だ。
 早期に解決しないと、乗り合い馬車の運行にも関わってくる。
 彼はこのアルファ・ケンタウリの領主からプレッシャーをかけられていた。
 それは、例え無実のものを犯人に仕立て上げたくなるほども、強いものだった。
しおりを挟む
感想 34

あなたにおすすめの小説

不倫されて離婚した社畜OLが幼女転生して聖女になりましたが、王国が揉めてて大事にしてもらえないので好きに生きます

天田れおぽん
ファンタジー
 ブラック企業に勤める社畜OL沙羅(サラ)は、結婚したものの不倫されて離婚した。スッキリした気分で明るい未来に期待を馳せるも、公園から飛び出てきた子どもを助けたことで、弱っていた心臓が止まってしまい死亡。同情した女神が、黒髪黒目中肉中背バツイチの沙羅を、銀髪碧眼3歳児の聖女として異世界へと転生させてくれた。  ところが王国内で聖女の処遇で揉めていて、転生先は草原だった。  サラは女神がくれた山盛りてんこ盛りのスキルを使い、異世界で知り合ったモフモフたちと暮らし始める―――― ※第16話 あつまれ聖獣の森 6 が抜けていましたので2025/07/30に追加しました。

積みかけアラフォーOL、公爵令嬢に転生したのでやりたいことをやって好きに生きる!

ぽらいと
ファンタジー
アラフォー、バツ2派遣OLが公爵令嬢に転生したので、やりたいことを好きなようにやって過ごす、というほのぼの系の話。 悪役等は一切出てこない、優しい世界のお話です。

リリゼットの学園生活 〜 聖魔法?我が家では誰でも使えますよ?

あくの
ファンタジー
 15になって領地の修道院から王立ディアーヌ学園、通称『学園』に通うことになったリリゼット。 加護細工の家系のドルバック伯爵家の娘として他家の令嬢達と交流開始するも世間知らずのリリゼットは令嬢との会話についていけない。 また姉と婚約者の破天荒な行動からリリゼットも同じなのかと学園の男子生徒が近寄ってくる。 長女気質のダンテス公爵家の長女リーゼはそんなリリゼットの危うさを危惧しており…。 リリゼットは楽しい学園生活を全うできるのか?!

ヒロインですが、舞台にも上がれなかったので田舎暮らしをします

未羊
ファンタジー
レイチェル・ウィルソンは公爵令嬢 十二歳の時に王都にある魔法学園の入学試験を受けたものの、なんと不合格になってしまう 好きなヒロインとの交流を進める恋愛ゲームのヒロインの一人なのに、なんとその舞台に上がれることもできずに退場となってしまったのだ 傷つきはしたものの、公爵の治める領地へと移り住むことになったことをきっかけに、レイチェルは前世の夢を叶えることを計画する 今日もレイチェルは、公爵領の片隅で畑を耕したり、お店をしたりと気ままに暮らすのだった

【完結】天下無敵の公爵令嬢は、おせっかいが大好きです

ノデミチ
ファンタジー
ある女医が、天寿を全うした。 女神に頼まれ、知識のみ持って転生。公爵令嬢として生を受ける。父は王国元帥、母は元宮廷魔術師。 前世の知識と父譲りの剣技体力、母譲りの魔法魔力。権力もあって、好き勝手生きられるのに、おせっかいが大好き。幼馴染の二人を巻き込んで、突っ走る! そんな変わった公爵令嬢の物語。 アルファポリスOnly 2019/4/21 完結しました。 沢山のお気に入り、本当に感謝します。 7月より連載中に戻し、拾異伝スタートします。 2021年9月。 ファンタジー小説大賞投票御礼として外伝スタート。主要キャラから見たリスティア達を描いてます。 10月、再び完結に戻します。 御声援御愛読ありがとうございました。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

城で侍女をしているマリアンネと申します。お給金の良いお仕事ありませんか?

甘寧
ファンタジー
「武闘家貴族」「脳筋貴族」と呼ばれていた元子爵令嬢のマリアンネ。 友人に騙され多額の借金を作った脳筋父のせいで、屋敷、領土を差し押さえられ事実上の没落となり、その借金を返済する為、城で侍女の仕事をしつつ得意な武力を活かし副業で「便利屋」を掛け持ちしながら借金返済の為、奮闘する毎日。 マリアンネに執着するオネエ王子やマリアンネを取り巻く人達と様々な試練を越えていく。借金返済の為に…… そんなある日、便利屋の上司ゴリさんからの指令で幽霊屋敷を調査する事になり…… 武闘家令嬢と呼ばれいたマリアンネの、借金返済までを綴った物語

魔晶石ハンター ~ 転生チート少女の数奇な職業活動の軌跡

サクラ近衛将監
ファンタジー
 女神様のミスで事故死したOLの大滝留美は、地球世界での転生が難しいために、神々の伝手により異世界アスレオールに転生し、シルヴィ・デルトンとして生を受けるが、前世の記憶は11歳の成人の儀まで封印され、その儀式の最中に前世の記憶ととともに職業を神から告げられた。  シルヴィの与えられた職業は魔晶石採掘師と魔晶石加工師の二つだったが、シルヴィはその職業を知らなかった。  シルヴィの将来や如何に?  毎週木曜日午後10時に投稿予定です。

処理中です...