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第二章 夏 ~それぞれの想い、廻り始めた歯車~
その113 観客席では
しおりを挟む「……あら、もう試合始まってるのですね」
「えぇ。……いいんですか? 紗琉さんを試合に出しても」
「はい。そもそも紗琉ちゃんは私のことを思って、『どん・だー』を降りたんですから。だからこそ、今回ばかりは……私のことなんか忘れて、自分のために太鼓を叩いて欲しいんです。だから私は、ここで紗琉ちゃんが試合に出ることには大賛成でしたんですから」
「なるほど……。ここで彼女の抱えていた問題を解決させようという魂胆ですか」
「はは……。流石は蒼川先生です。まさかそこまで読まれているとは……」
「それだけではないですよね? 彼らのチーム名に『b's』と名づけたのも、貴女でしょう?」
「……まさか、そこまでバレているとは」
「当たり前です。旧『b's』には貴女と紗琉さんしかいないのですし、紗琉さんはそもそもから太鼓部に嫌悪感を抱いていたのですから」
「……まぁ、そう考えると消極的に私になるってことですね。しかし、まさか私たち旧『b's』のことを知っておられるとは……」
「少しネットで調べただけですよ。これでも太鼓部の顧問を引き受けたんですから、それくらいはやっておかないと」
「ですね」
「……おや、次は紗琉さんの出番ですわね。……って、一夜さんどちらへ?」
「……帰ります。少しの時間ですが、お邪魔しました」
「あら。紗琉さんの勝負の結果を見ていかないのですか?」
「生憎。すでに結果は分かっています。紗琉ちゃんが出た時点で、すでにすべての決着はついているんですよ?」
「……なるほど。それだけ貴女は彼女に信頼感を抱いているのですね」
「はい。なんたって、幼馴染ですから」
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