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第二章 夏 ~それぞれの想い、廻り始めた歯車~

その114 頑固者との勝負?

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 なんとか助っ人として紗琉が登場してくれたおかげで、試合には無事に勝利することができた。僕も望子先輩も大感激だった。
 しかし、望子先輩はそれだけでは終わらない。なんと、紗琉を太鼓部に引き入れようとたくらんでいたのだ。
 試合が終わり、望子先輩は紗琉に声をかけるも、

『すみません。生徒会の仕事が忙しいので……』

 と、冷たくあしらわれる。しかし、それで負けるような先輩ではなかったのだ。

「よし、じゃあ紗琉ちゃんの勧誘に行って来るね!」
「はーい……」

 と、僕はテキトーにそう先輩に返答を返す。先輩は僕の返答も聞かずに猛ダッシュで部室を飛び出していった。

「……なんだあれは。望子のヤツ、この前の試合が終わってから様子がヘンだぞ?」

 と、気になって路世先輩が僕に尋ねてくる。試合会場にいなかった路世先輩は、望子先輩がどうしてあんな様子なのかを知らないのだ。

「それが……」

 僕は路世先輩に、この前の試合での出来事をすべて話すことにした。

「……なるほどな。それで望子は紗琉を引き入れようと考えてるんだな」
「そうなんですよ……」

 路世先輩も若干ながら困った様子だった。このままでは練習どころではない。キャプテン不在のまま練習してもいいが、その分誰が今の望子先輩を止めればいいのか分からない。
 かと言って、望子先輩に構ってられる時間もない。……どうしたらいいのか分からずじまいだった。

「……まぁいさ。どうせ紗琉のほうが骨が折れて入部することになるだろうさ、きっと」
「……どうでしょうか。紗琉もああ見えて、かなりの頑固ですから」

 確かに、望子先輩の諦めの悪さは天下一品ではあるが、それと同時に紗琉の頑固さもかなりのものだ。
 一体どっちが先に音をあげるのか分からない。……なかなかに長い戦いになりそうな予感しかしないのだった。
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