114 / 142
第二章 夏 ~それぞれの想い、廻り始めた歯車~
その114 頑固者との勝負?
しおりを挟むなんとか助っ人として紗琉が登場してくれたおかげで、試合には無事に勝利することができた。僕も望子先輩も大感激だった。
しかし、望子先輩はそれだけでは終わらない。なんと、紗琉を太鼓部に引き入れようとたくらんでいたのだ。
試合が終わり、望子先輩は紗琉に声をかけるも、
『すみません。生徒会の仕事が忙しいので……』
と、冷たくあしらわれる。しかし、それで負けるような先輩ではなかったのだ。
「よし、じゃあ紗琉ちゃんの勧誘に行って来るね!」
「はーい……」
と、僕はテキトーにそう先輩に返答を返す。先輩は僕の返答も聞かずに猛ダッシュで部室を飛び出していった。
「……なんだあれは。望子のヤツ、この前の試合が終わってから様子がヘンだぞ?」
と、気になって路世先輩が僕に尋ねてくる。試合会場にいなかった路世先輩は、望子先輩がどうしてあんな様子なのかを知らないのだ。
「それが……」
僕は路世先輩に、この前の試合での出来事をすべて話すことにした。
「……なるほどな。それで望子は紗琉を引き入れようと考えてるんだな」
「そうなんですよ……」
路世先輩も若干ながら困った様子だった。このままでは練習どころではない。キャプテン不在のまま練習してもいいが、その分誰が今の望子先輩を止めればいいのか分からない。
かと言って、望子先輩に構ってられる時間もない。……どうしたらいいのか分からずじまいだった。
「……まぁいさ。どうせ紗琉のほうが骨が折れて入部することになるだろうさ、きっと」
「……どうでしょうか。紗琉もああ見えて、かなりの頑固ですから」
確かに、望子先輩の諦めの悪さは天下一品ではあるが、それと同時に紗琉の頑固さもかなりのものだ。
一体どっちが先に音をあげるのか分からない。……なかなかに長い戦いになりそうな予感しかしないのだった。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
5
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる