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作戦決行
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「お前ら、配置についたか?」
『ついたわ』
『こっちもついたよ』
『うん、優愛もついたよ』
右耳に装着されたワイヤレスイヤホンを通し、浩輔は他の三人と連絡を取る。
全方位から包囲するように配置された四人の位置であれば、彼…斎藤祐樹を逃すことはまずない。
「もうあと十分もせずに、斎藤が出てくる。頼んだぞ、柊」
『おっけ~。たぶん大丈夫~』
「おい、聞いてんのか」
緊張感の欠片もないような間の抜けたその返事に、浩輔が問いを投げかける。
『ん~』
「……」
あまりに切れ味のそのない返事に、浩輔は異変を察知する。
そして、自分自身のスマートフォンに入っているインスタのアイコンを開く。
そこには、茉子のアイコンに新しい投稿をした表示が出ている。
そして投稿時刻は、二分前。
『………ん?』
「お前何ストーリー載せてんだよ」
『んげっ!?』
茉子の上げた間抜けな声を聴き、呆れてため息しか出ない浩輔だった。
しかし、そんな緩んだ空気も束の間、小さなライブハウスから五人の男が出てくる。
「おい、来たぞ」
「んお、り~」
そう言って、茉子は路肩に駐車された一台の自動車へと向かった。
「じゃあな~」
バンド『Angel's Breath』のメンバーであり、今回の標的である斎藤佑樹は、仲間との挨拶も程々に、路肩に駐車してある自身の赤い自動車に乗り込んだ。
すると、助手席側の窓から、人影が近づいてきた。
そしてその人影は、屈んで車内の様子を伺ってきた。
「あの……なに?」
窓を開けながら、訝しげな視線をその人影に送る。
「ああ!すみません!いい車だな~と思って…」
その人影は、驚いたように謝りながら、微笑んだ。
綺麗な長い金色の髪と、吸い込まれそうな黒い瞳。
そして何よりも目を引くのは、その開けた胸元と大きな胸。スタイルも目鼻立ちも良い。
コレは……良い獲物だ。と、斎藤は内心で下卑た笑みを浮かべていた。
「そう?キミ、見る目あるね~」
適当に褒めて、家にでも連れ込もう。
そうすればこっちのものだ。
"アイツ"が邪魔をするかもしれないが、そんなの今は関係ない。
「ホントですか?嬉しいっ!」
少女は可愛らしく喜んでいるが、今の斎藤は、自室に連れ込んだ後のことしか頭にない。
「ねえ、良かったらこれから、お茶でもしない?」
さて、この発言にどう出るか。
「えぇー!良いんですかぁー!?」
「もちろんだよ、キミは可愛いから特別だけどね」
かかった。適当にシたいことシたら、酔ってたとでも言い訳しよう。大抵のことは酒のせいにすればなんとかなる。
――そんな浅はかな考えで、斎藤は助手席の扉を開けようとした。
その時、茉子がポツリと呟いた。
「でもそれってぇ…………………………………………後ろの女の人も一緒ですか?」
一瞬、斎藤が驚いたような表情を見せる。
しかし次の瞬間、彼の左目が淡い紫色に輝き、その眼で茉子を睨み付けた。
それは、霊能力発動のサインである。
対応するように、茉子も霊能力を発現させようと、司を自身に憑依させようとする。だが。
突然、猛烈な目眩が襲う。
茉子はそれが、目眩ではなく強力すぎる眠気であることを理解するより先に、意識を失ってしまった。
「茉子お姉ちゃん!」
「柊さん!!」
イヤホン越しに、義央と優愛の心配する声が聴こえる。
しかし、それに対する返答はない。
つまり柊は今、意識を消失していると言うことである。
柊が倒れた直後、発進した車は西側へ向かってくる。
迎え撃つとすれば、西側管轄の浩輔が仕留めるべきである。
浩輔は深呼吸を一つして、右肩にいる小学生くらいの少女に話しかけた。
「やれそうか?」
長い黒髪と、その上に乗った小さな黄色い帽子。
2つの、大きな鈍色の瞳。
その小さな体に背負った赤いランドセル。
そんな幼気な少女が、浩輔の問いに答える。
「んー。大丈夫!多分!」
ふんわりとした適当な返事が返ってきた。
非常に不安だ。
「発動の条件は、目を合わせることだろうな。恐らく、目を合わせなければ大丈夫だろう」
先程の茉子と斎藤裕樹を観て、ある程度相手の霊能力に見当はついている。
「わかった!じゃあ、コウちゃんはもう代わっていいよ~」
少女は、小さな手をひらひらと振って、憑依のサインを浩輔に送る。
それに応えるように、浩輔は自身の体を少女に預けた。
「頼んだぞ――――――――――――――――――姉貴」
少女の名前は月野京香。
浩輔の、実の姉である。
『ついたわ』
『こっちもついたよ』
『うん、優愛もついたよ』
右耳に装着されたワイヤレスイヤホンを通し、浩輔は他の三人と連絡を取る。
全方位から包囲するように配置された四人の位置であれば、彼…斎藤祐樹を逃すことはまずない。
「もうあと十分もせずに、斎藤が出てくる。頼んだぞ、柊」
『おっけ~。たぶん大丈夫~』
「おい、聞いてんのか」
緊張感の欠片もないような間の抜けたその返事に、浩輔が問いを投げかける。
『ん~』
「……」
あまりに切れ味のそのない返事に、浩輔は異変を察知する。
そして、自分自身のスマートフォンに入っているインスタのアイコンを開く。
そこには、茉子のアイコンに新しい投稿をした表示が出ている。
そして投稿時刻は、二分前。
『………ん?』
「お前何ストーリー載せてんだよ」
『んげっ!?』
茉子の上げた間抜けな声を聴き、呆れてため息しか出ない浩輔だった。
しかし、そんな緩んだ空気も束の間、小さなライブハウスから五人の男が出てくる。
「おい、来たぞ」
「んお、り~」
そう言って、茉子は路肩に駐車された一台の自動車へと向かった。
「じゃあな~」
バンド『Angel's Breath』のメンバーであり、今回の標的である斎藤佑樹は、仲間との挨拶も程々に、路肩に駐車してある自身の赤い自動車に乗り込んだ。
すると、助手席側の窓から、人影が近づいてきた。
そしてその人影は、屈んで車内の様子を伺ってきた。
「あの……なに?」
窓を開けながら、訝しげな視線をその人影に送る。
「ああ!すみません!いい車だな~と思って…」
その人影は、驚いたように謝りながら、微笑んだ。
綺麗な長い金色の髪と、吸い込まれそうな黒い瞳。
そして何よりも目を引くのは、その開けた胸元と大きな胸。スタイルも目鼻立ちも良い。
コレは……良い獲物だ。と、斎藤は内心で下卑た笑みを浮かべていた。
「そう?キミ、見る目あるね~」
適当に褒めて、家にでも連れ込もう。
そうすればこっちのものだ。
"アイツ"が邪魔をするかもしれないが、そんなの今は関係ない。
「ホントですか?嬉しいっ!」
少女は可愛らしく喜んでいるが、今の斎藤は、自室に連れ込んだ後のことしか頭にない。
「ねえ、良かったらこれから、お茶でもしない?」
さて、この発言にどう出るか。
「えぇー!良いんですかぁー!?」
「もちろんだよ、キミは可愛いから特別だけどね」
かかった。適当にシたいことシたら、酔ってたとでも言い訳しよう。大抵のことは酒のせいにすればなんとかなる。
――そんな浅はかな考えで、斎藤は助手席の扉を開けようとした。
その時、茉子がポツリと呟いた。
「でもそれってぇ…………………………………………後ろの女の人も一緒ですか?」
一瞬、斎藤が驚いたような表情を見せる。
しかし次の瞬間、彼の左目が淡い紫色に輝き、その眼で茉子を睨み付けた。
それは、霊能力発動のサインである。
対応するように、茉子も霊能力を発現させようと、司を自身に憑依させようとする。だが。
突然、猛烈な目眩が襲う。
茉子はそれが、目眩ではなく強力すぎる眠気であることを理解するより先に、意識を失ってしまった。
「茉子お姉ちゃん!」
「柊さん!!」
イヤホン越しに、義央と優愛の心配する声が聴こえる。
しかし、それに対する返答はない。
つまり柊は今、意識を消失していると言うことである。
柊が倒れた直後、発進した車は西側へ向かってくる。
迎え撃つとすれば、西側管轄の浩輔が仕留めるべきである。
浩輔は深呼吸を一つして、右肩にいる小学生くらいの少女に話しかけた。
「やれそうか?」
長い黒髪と、その上に乗った小さな黄色い帽子。
2つの、大きな鈍色の瞳。
その小さな体に背負った赤いランドセル。
そんな幼気な少女が、浩輔の問いに答える。
「んー。大丈夫!多分!」
ふんわりとした適当な返事が返ってきた。
非常に不安だ。
「発動の条件は、目を合わせることだろうな。恐らく、目を合わせなければ大丈夫だろう」
先程の茉子と斎藤裕樹を観て、ある程度相手の霊能力に見当はついている。
「わかった!じゃあ、コウちゃんはもう代わっていいよ~」
少女は、小さな手をひらひらと振って、憑依のサインを浩輔に送る。
それに応えるように、浩輔は自身の体を少女に預けた。
「頼んだぞ――――――――――――――――――姉貴」
少女の名前は月野京香。
浩輔の、実の姉である。
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