売れ残り男爵令嬢は、うたた寝王女の愛ある策略に花ひらく

湊未来

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第4章 思惑は交錯する【ルティア編】

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レストランで呑み過ぎた翌朝、私はベットから起き上がれない状態だった。

………うぅぅぅ………頭痛い………気持ち悪い………

昨夜はどうやって帰って来たのだろう………?
ベンチで横になってからの記憶が曖昧だ。私は昨夜の出来事を始めから思い返してみることにした。

レストランで調子に乗ってお酒をどんどん呑んじゃたのよね………
………それにしても大勢でワイワイしながらお酒を呑むって本当に楽しかったわ。
ショットを奢ってくれたおじさんとのやり取りも新鮮だったなぁ~
あんな近くで沢山の人に囲まれたのも初めてだった………

リザンヌ王国では、晩餐会でぶどう酒を少し飲む程度で、ご機嫌取りをしようとする貴族や、逆に貶めようとする貴族とのやり取りは気が滅入るだけで苦痛でしかなかった。

街の人達とただのルティアとして楽しくやり取りする楽しさに、ただただ魅了された。

………その後は………
大騒ぎになった店内から追い出され、追ってくる人を振り切るためイアンに抱き上げられ走ったのよ………
街外れの広場まで………

………!

私は唐突に思い出してしまった………
イアンとのやり取りを………

………酔っていたとはいえ、あれはマズイわ………
キスをして、身体を触られたことまで詳細に思い出してくる。

完全に私が悪いわ………あれは………
仕掛けてきたのはイアンだけど…最終的に誘ったのは私よね………
自分の気持ちまで暴露してしまった………

どんな顔してイアンに会えばいいのよ………

私は真っ赤になった顔を隠す様に、布団を頭までかぶる。


『トントン』


「…ルティ………気分はどう?」

「………っ‼︎」

まさかベットに近づいて来たのがイアンだとは思わなかった。

イアンの手で頭まで被っていた布団がゆっくり下ろされる。

露わになった真っ赤な顔をイアンに覗き込まれる。恥ずかし過ぎて目が合わせられない………

「…ひっ‼︎‼︎」

突然、目の前に迫ったイアンの瞳に瞳を覗き込まれ、おでことおでこを重ねられた。

「………う~ん………熱はないみたいだね………」

………ちゅっ………

そのまま気づいた時には口を塞がれ、深いキスを仕掛けられていた。

…くちゅ………ちゅっ………

眩しいほどの朝の光が差し込む部屋に淫靡な音が響く………

………イアンの唇がゆっくり離れていく………


「顔…真っ赤だったから熱あるかと思ってね………
気分はどうかな?昨晩は沢山お酒呑んでたから具合悪いんじゃないかな………」

さっきのやらしいキスは何なのよぉ………
恥ずかしがっているのは私だけだという事実にヤケクソ気味に答える………

「………頭痛い………気持ち悪い………」

「そりゃ、あれだけ呑めばそうなるよぉ~エールも結構アルコール度数高いけど、男でもなかなか手を出さないショットを一気飲みとは………
あの場でぶっ倒れなくて良かったよ。
これに懲りて無理な飲み方は絶対にしない事‼︎」

「………以後、気をつけます………」

正論過ぎて何も言い返せない私は謝るしかなかった。



「それよりも………僕以外の男の前では、今後絶対に酒は飲ませない………
………ルティ………昨夜の事覚えているね………」

イアンの纏う雰囲気が黒いものに変わる………

「あの時………ルティが僕に言った言葉も覚えているね………
………『好き』………って言ったのは本気?」

私はイアンの雰囲気に気圧され、ただ頷く事しか出来ない。

「………じゃあ、もう遠慮はいらないね。
今はまだ僕を婚約者として選ばなくていい………
ルティもリザンヌ王国の思惑に絡めとられている今、答えようがないと思うから。
僕が絶対にルカ王太子を説得する………」

イアンの雰囲気が柔らかいものに変わる………

「ルティア………心から君を愛している………」

私はイアンに抱き締められながら、心が歓喜に震えるのを感じる。

「………イアン………好きなの………」



ゆっくりと私を離したイアンに笑いかけられる………

「万が一、ルティが昨夜の事を忘れていたら体に聞いてあげようと思ってたのに………残念~………」

昨夜の事を再度思い出した私の顔がみるみる赤く染まっていく。

「真っ赤になったルティも可愛いね~♪」

涙目の私は、イアンを睨む事しか出来なかった。

………くっそぉ………イアンをぎゃふんと言わせたいぃぃぃぃぃ‼︎‼︎‼︎



「ルティ…喉渇いてない?」

イアンが水差しからコップに水を注ぎ掲げる。
急に喉の渇きを感じ始めた私は頷く。

コップを貰おうと伸ばした手を掴まれ引かれ………
水をあおったイアンに唇を塞がれていた………

ゆっくりと口の中に爽やかな香りの水が流れ込んでくる………
ついでの様に口内を舌で刺激され、官能が刺激されてしまう………

「………ルティ…瞳が潤んで本当可愛いね………」

………悪戯そうに笑うイアンと目が合う………

イアンをぎゃふんと言わせる前に、さらに仕掛けられた私は布団に潜る事しか出来なかった。

その日一日、私の面倒を見るイアンと恥ずかしさのあまり悶絶する私の攻防が続いたのは言うまでもない。



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