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第6章 鎖を断ち切るために【ルティア&イアン編】
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しおりを挟む「ルティア様、そんなにため息ばかりついていても今日の夜会はなくなりませんよ!リドル様がお迎えに来るまでに準備が終わりませんのでさっさと起きてください‼︎」
私は朝からベットでふて寝を決め込み布団をかぶり寝たフリをしていた。
どうして朝から、こんな事をしているかと言うと………
今晩、王城で開かれる夜会に参加したくないからだ………
私の天敵ルカ王太子が参加する夜会に………
今夜の夜会の名目は、リザンヌ王国で正式に立太子したルカ王太子殿下が我が国の陛下へ挨拶に来てくださったお礼の夜会という事になっている。
まぁ平たく言えば今後も仲良くしましょうね~って事だ………
そんな夜会にリザンヌ王国王女の私が参加しない訳にはいかないのはわかっているが………あの胡散臭い笑顔と笑ってない瞳に見つめられると思うと背筋がゾッとする………
「ルティがまだ起きて来ないって聞いたけど体調が悪いの?」
「イアン様自らお越しくださるなんて………大変申し訳ございません。
体調が悪い訳では有りません。
………ただのふて寝でございます!」
「えっ⁈ふて寝………?」
「左様でございます。今夜、王城で開かれる夜会に行きたくないと駄々をこねられまして………」
ベットの側で繰り広げられるイアンとアンナの会話に私の頬がみるみる真っ赤に染まっていく。
………イアンにこんな子供じみたところを見られるなんて………
恥ずかしいぃぃぃぃぃ………
「………アンナ………大丈夫だ………
すぐに起こしてあげるから………」
私は突然の浮遊感に慌てる………
「おはよう…ルティ………」
気づいた時には薄い布団に包まれたままベットに腰掛けたイアンの膝の上に横抱きに座らされていた。
布団から真っ赤な顔が出てしまった私と優しい笑顔を浮かべるイアンの目と目が絡み合う………
「本当にルティはお寝坊さんだね………」
甘い囁きの中、軽くキスされる………
「今夜の夜会には僕も参加するから大丈夫だよ。エスコートは出来ないけど、ずっと側で見守っているからね。
ルカ王太子との挨拶なんてすぐ終わるさ。リドルに全て任せて黙っていればいい………
挨拶が終わったらベイカー公爵家の控え室に引き篭もっていれば夜会なんてすぐ終わる。」
優しく抱きしめられ背中をポンポンとあやされるのは嬉しいが恥ずかしい………
………部屋にはアンナもいるのに………
「………イアン…ありがとう………
もう大丈夫だからぁ………………」
イアンの腕の中から逃れようと身動ぐ私と、そんな私を離さずちょっかいをかけるイアンとの攻防は、アンナの怒声が響き渡るまで続いた。
「お初にお目にかかりますルカ王太子殿下。わたくし、ベイカー公爵家子息のリドルと申します。
ルティア王女殿下の婚約者候補のひとりですが、妹王女殿下とは、とても良い関係となれました。近々良いご報告が出来ればと思っております。」
リドル様にエスコートされ王城の夜会に参加した私はルカ王太子と対峙していた。
煌びやかな衣装に銀髪と紫の瞳の隣国の王子様は、眩いばかりに輝き沢山の女性を魅了する………
そこら中からルカ王太子の王子様スマイルに陥落したご婦人や令嬢の熱い溜め息が聞こえてくる。
………相変わらずの似非スマイルだこと………
「これはこれはベイカー公爵家のリドル殿ですね。ルティアより貴殿との関係は良好と聞いていますよ。リザンヌ王国としてもふたりの関係が良好なのは喜ばしいことです。ルティアもリドル殿と仲睦まじい様子安心しました。良い報告を期待してますよ。」
リドル様とルカ王太子が言葉を交わす………
言葉の端々に散りばめられた私への忠告に背中を冷や汗が伝う………
去り際にルカ王太子が私の肩を叩く………
触れられた場所から急速に体が冷えていき、震えをどうにか抑えるのに精一杯だ。
こんな事でルカ王太子に立ち向かえるの………
「………ルティア王女殿下…大丈夫ですか?貴方のおっしゃる通り一筋縄ではいかないお方のようですね………
顔が真っ青です………
あちらで少し休まれますか?」
私はリドル様の提案を受け、震える体を落ち着かせるためベイカー公爵家専用の控え室にて休憩する事にした。
ベイカー公爵家控え室には侍女のアンナが待機していて、真っ青な顔の私を見て駆け寄ってくる。
「ルティア様!どうなさいました………
真っ青でございます………こんなに震えて………」
アンナは私をソファに座らせると温かいお茶を入れてくれた。
ひと口飲むと冷え切った体が徐々に温まり震えも落ち着いてきた。
「ありがとう………アンナ………
あの男と対峙するだけで、嫌悪感で体が震えだす………
これではあの男に勝てない………」
「差し出がましいようですが、あの男とはルカ王太子殿下でございますか?
以前………ルカ王太子殿下との会談の後、ルティア様は激しく混乱し泣かれていましたわ………
あの方がルティア様の幸せを奪う元凶でございますのね。」
「ルカ王太子はわたくしにベイカー公爵家へ嫁げという………
でも………でもわたくしはイアンと………
イアンを愛していますの………」
私はとうとうアンナの膝の上で泣き出してしまった。
「ルティア様…わかっております………
イアン様は初めてルティア様に出来た特別な方です。今まで我慢されてきたのですから、これからの人生は自身の思うまま進めばよろしいのです。
ルティア様はひとりでは有りません。
ひとりでルカ王太子に立ち向かう必要はないのです………
イアン様もわたくしもレッシュ公爵家の皆様もルティア様の味方です。
ルティア様がルカ王太子に立ち向かう時は皆で立ち向かえばよいのです。」
私はひとりではない………
ひとりでルカ王太子に立ち向かわなくていいのね………
アンナの言葉が私の心を軽くしていく………
「………アンナ…ありがとう………
わたくし…がんばれそうだわ………」
アンナに優しく背中を撫でられながら新たな決意を胸に暫しの休息に身を任せた。
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