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エピローグ
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窓際に配されたソファ席から夕闇に沈んだ街並みをぼんやりと眺める。キラキラとネオン輝く街中を足早に立ち去る者、恋人同士なのか肩を寄せ合い歩く男女。雪が散らつく街中の光景は、一年前の出来事を想い出させる。
もうすぐ、彼と出会い一年になる。あの時も今と同じように雪がチラついていた。降り出した雪がいつの間にか雨へと変わった頃、ボロボロになった私は、卑劣な思惑を秘めた彼と出会った。
運命とは時に残酷で甘い。
確かに、29歳最後の日に私は運命的な出会いをした。
その出会いが最悪なモノであったとしても、私の人生に多大なる影響を与えたのは確かだ。
大人という鎧で自身を必死に守っていた弱い私を変えてくれた年下の彼は、憎い存在から、自分の弱さを曝け出し、甘えられる存在へと様変わりした。
相手に合わせ、自身を偽って生きてきた私の心に深く入り込み、いつの間にか何重にも重ねた鎧を打ち壊してくれた。
憎しみが、いつしか恋へと変わり、愛へとなった。
ふと視線を落とし、時計の針を確認する。待ち合わせ時間まで、あと少し……
冷えたコーヒーに口をつければ、昂った気持ちを少し落ち着けてくれる。
今日は決戦の日。
彼の心に巣食うシコリを、今度は私がぶち壊す番だ。
きっと、彼は知らない。私がこんな大それた事を考えているなんて。
今朝も、二人で住む家から何食わぬ顔で出勤したのだ。今日は、残業で遅くなると話してある。疑う事はないだろう。
もう一度、視線を時計へと落とす。
「失礼しますわ。貴方が、メールをくださった冬野鈴香さん?」
見上げた先には、清楚な白のワンピースを着た女性が立っていた。ストレートの黒髪を耳にかけ上品に微笑む姿は、白百合を思わせ、清廉な雰囲気を醸し出していた。
目の前に立つ、この女性が麻里奈ちゃんが言う女狐だなんて信じられない。
ただ、人間見た目に騙されてはいけない。麻里奈ちゃんも良い後輩ぶっていたが、本性は計算高い今時の女子だったではないか。
『吉瀬美沙江』
彼の忘れられない女性。
今でも、彼の心の奥底に居座り、支配しているであろう女。
この女に勝たない限り、本当の意味で彼を手に入れた事にはならない。
『橘真紘』
誰よりも大切な人。
今の私なら出来る……
私が貴方のシコリをぶち壊してあげる。
「吉瀬美沙江さんでしたっけ。わたくし、橘真紘の彼女の冬野鈴香です」
「ふふふ、貴方が真紘の……」
負けるものかという声と共に、女の闘いを告げるゴングが頭の中で、鳴り響いた。
もうすぐ、彼と出会い一年になる。あの時も今と同じように雪がチラついていた。降り出した雪がいつの間にか雨へと変わった頃、ボロボロになった私は、卑劣な思惑を秘めた彼と出会った。
運命とは時に残酷で甘い。
確かに、29歳最後の日に私は運命的な出会いをした。
その出会いが最悪なモノであったとしても、私の人生に多大なる影響を与えたのは確かだ。
大人という鎧で自身を必死に守っていた弱い私を変えてくれた年下の彼は、憎い存在から、自分の弱さを曝け出し、甘えられる存在へと様変わりした。
相手に合わせ、自身を偽って生きてきた私の心に深く入り込み、いつの間にか何重にも重ねた鎧を打ち壊してくれた。
憎しみが、いつしか恋へと変わり、愛へとなった。
ふと視線を落とし、時計の針を確認する。待ち合わせ時間まで、あと少し……
冷えたコーヒーに口をつければ、昂った気持ちを少し落ち着けてくれる。
今日は決戦の日。
彼の心に巣食うシコリを、今度は私がぶち壊す番だ。
きっと、彼は知らない。私がこんな大それた事を考えているなんて。
今朝も、二人で住む家から何食わぬ顔で出勤したのだ。今日は、残業で遅くなると話してある。疑う事はないだろう。
もう一度、視線を時計へと落とす。
「失礼しますわ。貴方が、メールをくださった冬野鈴香さん?」
見上げた先には、清楚な白のワンピースを着た女性が立っていた。ストレートの黒髪を耳にかけ上品に微笑む姿は、白百合を思わせ、清廉な雰囲気を醸し出していた。
目の前に立つ、この女性が麻里奈ちゃんが言う女狐だなんて信じられない。
ただ、人間見た目に騙されてはいけない。麻里奈ちゃんも良い後輩ぶっていたが、本性は計算高い今時の女子だったではないか。
『吉瀬美沙江』
彼の忘れられない女性。
今でも、彼の心の奥底に居座り、支配しているであろう女。
この女に勝たない限り、本当の意味で彼を手に入れた事にはならない。
『橘真紘』
誰よりも大切な人。
今の私なら出来る……
私が貴方のシコリをぶち壊してあげる。
「吉瀬美沙江さんでしたっけ。わたくし、橘真紘の彼女の冬野鈴香です」
「ふふふ、貴方が真紘の……」
負けるものかという声と共に、女の闘いを告げるゴングが頭の中で、鳴り響いた。
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