冷やし上手な彼女

カラスヤマ

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二章

デート

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今週の土曜日に決定したパパとの食事会。日に日に、タマちゃんの元気がなくなってきた。食欲もないみたいで、痩せ細ってきている。

「ハハ…ハ………」

意味もなく、突然笑うようになった。

「私の方からパパに断っておくね。だから、もう……心配しなくても大丈夫だよ。ごめんなさい」

タマちゃんの頭を撫でようとした私の手を強めに振り払い、

「ガキ扱いするなっ! 今、逃げたら……一度逃げたら……逃げ癖がつく。だから、余計なことするな。俺なら、大丈夫だからさ」

「うん。……分かった。じゃあさ、気分転換に久しぶりにデートしない? 明日は、祝日だし」

金曜日。デート当日。

好きな映画を見たり、美味しい物を食べたら、少しは元気になるかな……。少しでいいから、元気になってほしいな。


同じマンション、しかもお隣さんだけど、私達は駅前で待ち合わせをした。

約束の時間まであと三十分。

「ねぇねぇ。今、暇?」

久しぶりのデートだから、すっごく楽しみです!  気合い入ってます!!

「暇ならさぁ、僕と一緒に美味しいケーキ食べに行かない?  新しい洒落た店だし、キミも気に入ると思うよ」

タマちゃん、まだかなぁ……。まさか、遅刻するつもりじゃないよね? 

「ねぇ、聞いてる?」

それにしても、さっきからうるさい邪魔虫だなぁ。強力な殺虫剤持ってくれば良かった。

「ハハ……。僕、もしかして無視されてる? ねぇ、少しはこっち見てよ~」

私の肩に触れる………。

「おっ! やっと見てくれたぁ。雑誌とかで僕のこと見たことない?  モデルとかやってるんだけど。たまぁにテレビにも出てるし」

「この手、何?」

「えっ!?  いや、ちょっと触っただけじゃん」

「モデルって生き物はさ、素手で猛獣に触るの?」

「な、なな、なんっ!?」

私の黒いお目々を見たモデル男は、震えながら、目の前で失禁した。

「私だったら、喰われる前に逃げるけどなぁ~」

ダダダダダダ!!

モデル男が消えて、数分後ーーー。

何も知らないタマちゃんが、欠伸をしながら呑気にやって来た。

「もうっ! 遅いよ。今、何時だと思ってるんですか!!」

「九時五十分だろ。約束の十分前。いつからいたの?  来るの早すぎない?」

「タマちゃんが来ない間に虫が来て、うるさくて大変だったんだから……」

「虫?  ふ~ん。あっ、そういえばさ、この辺に新しくケーキ屋さん出来たみたいだけど、行く? 結構、美味しいみたいだし」

タマちゃんが、わざとらしく私の頭や肩を手の甲で虫を払う仕草をする。

「うん……。行く」

タマちゃんと手を繋いで、普通の道をただ歩いてるだけ。

それだけでーーー。

言葉に出来ない幸せが満ちてきて、泣きそうになった。

「私の方が、元気を貰っちゃったね」

「えっ? 何か言った?」

今日食べた甘さ控えめケーキに誓って、明日は絶対にタマちゃんを守るからね!!
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