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本編
01
しおりを挟む――ふと目を覚ましたら、見知らぬ金髪のイケメンが僕の顔を覗き込んでいた。
(……は? 誰?)
呆然とイケメンを見つめていると、そのイケメンは見る見るうちに顔を綻ばせていく。
そして――
「~~~~っ‼︎ エリオットが目を覚ましたぞ‼︎」
歓喜に満ち溢れたような声で叫ぶと、ガバッと抱きついてきた。
(は? え? 何⁇)
一体何が起こっているのか、全く理解できずに目を白黒させる。
「エリー‼︎ あぁ本当に、目を覚ましたのね……っ」
金髪イケメンの後ろから駆け寄ってきた、銀髪の美女が僕の顔を見てボロボロと泣き出したため、ますます混乱してしまう。
(エリー? エリオット? 誰?)
美男美女が僕を見て歓喜に打ち震えている理由もわからないし、彼らが呼んでいる人名らしき単語にも聞き覚えがない――と思ったのだが、己の中にその名前が指し示すのは自分自身であるという認識が存在していることに気づいた。
そして、連鎖的に目の前にいる金髪イケメンと銀髪美女が僕――エリオット・マールグリットの両親であるということ、更にエリオットとしての半生も思い出した。
「あの……父様、苦しいです……」
怒涛のように溢れ出す記憶の数々に戸惑いつつも、未だにぎゅうぎゅうと抱きついてきて離れない父に声を掛けて、軽く背中を叩く。
「す、すまない。つい取り乱してしまった」
僕の言葉で我に返った父は、名残惜しそうにしながらも僕から離れてくれた。
「あぁ……私の可愛いエリー。そのお顔をよく見せてちょうだい」
父が離れると、母が次は己の番とでも言うようにその隙間に楚々と割り込み、美しいドレスが床を擦るのも構わず膝をついて僕の頬を優しく両手で包む。
「目を覚まして良かったわ……あぁ、エリー、貴方のこの美しい瞳は、もう二度と見られないものだと思っていたのよ……」
泣きながら微笑む母の姿に胸がチクリと痛む。
「……母様……ごめんなさい」
何が起きてどうなっているのかは全くわからないが、心配をかけていたということは察することができ、自然と詫びの言葉が口をつく。
「いいえ、謝らないでちょうだい。……貴方がこうして目を覚ましてくれただけで、母様は嬉しいのだから」
「母様の言う通りだよ、エリオット。私たちはお前が目を覚ましてくれるのを心待ちにしていた。……お前がそのまま黄泉の国へ旅立ってしまわなくて本当に良かった」
母の横に膝をついた父が母の肩を抱いて微笑む。
(……何があったのか聞いても良いのだろうか?)
何やら重大なことが起きていたような様子に、自分に何があったのかわからないままでいるのもどうかと思い、両親に尋ねてみようと口を開きかけたところ、部屋の外から扉を叩く音が聞こえた。
「……何だ?」
父が訝しみながら扉の方へ顔を向けて声を上げる。
「失礼いたします、旦那様。シュヴェリエ侯爵様とご子息のレオナルド様がお越しになられました。何やら、取り急ぎ重大なお話があられるとのことでございますが……」
扉を開けて入ってきたのは、マールグリット家執事長のジョシュアという壮年の男だった。
(シュヴェリエ侯爵? レオナルド……?)
ふとその名前に思うところがあり、記憶を探ってみる。
然程考えずとも、シュヴェリエ侯爵家嫡男レオナルドがエリオットにとって婚約者であるということに思い当たってギョッとする。
(えっ? 婚約者が男? 僕、男だよな? ……ん? というか、シュヴェリエ侯爵家のレオナルドって……)
実は先程目を覚ました際、混乱する頭に浮かんでいたのは、“エリオット・マールグリット”ではなく、“藍原 瑛斗”という名前だった。
記憶の中にある“藍原瑛斗”という人物は、日本という国で生まれ育った三十路の男。
そして、先程耳にした“シュヴェリエ侯爵”と“レオナルド”という名前で蘇った一つの記憶。
それは――
“藍原瑛斗”が生きる日本で流行していた女性向けライトノベルの登場人物であるということ――
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