出来損ないと呼ばれ追放された魔王の子供は国を創造し王となる

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出来損ないと呼ばれ追放された魔王の子供は国を創造し王となる

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「鑑定の儀」を告げる鐘が、魔王城の大広間に響いた。

玉座の前に立つのは二人の男。
魔王の子――長男アークと、双子の弟ゼル。

ゼルは口元に不敵な笑みを浮かべ、魔力を抑えようともしていない。

一方のアークは静かに立ち、視線を床に落としていた。争いを好まず、力を誇ることにも興味がない。

彼が望むのは、ただ穏やかな日常だった。

「まずは兄、アーク」

水晶の鑑定盤に手を置いた瞬間、淡い光が広間を満たす。
だが次第に光は弱まり、ざわめきが起きた。

――《能力:クリエイト》 ――《評価:低》

「……創造系か」

「戦に向かぬ力だな」

魔族にとって、破壊こそが至上。
何かを“創る”力は、役立たずと同義だった。
魔王は眉一つ動かさず、冷たく言い放つ。

「下がれ」

続いてゼルが進み出る。
水晶は激しく脈打ち、禍々しい魔力が溢れ出した。

――《能力:滅王因子・覇道支配》 ――《評価:最上位》

大広間がどよめく。

魔王は初めて満足げに笑った。

「間違いない。次期魔王はゼルだ」

その瞬間、運命は分かたれた。

「兄アーク。貴様は魔族の恥。力なき者はこの城に不要だ」

追放の宣告。

アークは何も言わず、ただ一礼した。
(これでいい……争わずに生きられる)

そう思ったのも束の間、城門の外で彼を待っていたのは、魔族ですら知らぬ“世界”だった。

荒れ果てた大地。

そして、彼のクリエイト能力が壊れたものを、あるべき姿で創り直す力だと知る者はいなかった。

やがて人間に希望を与え、 魔族すら救う存在となることを。

一方、魔王城ではゼルが王の道を歩み始める。

破壊と支配の果てに待つものが、滅びであるとも知らずに。

――追放された兄と、選ばれた弟。 世界は静かに、二人の再会へと動き出していた。

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魔王城から追放されたアークが辿り着いたのは、 魔族も人間も近づかない境界の荒野だった。

瓦礫だらけの廃村。
崩れた家、枯れた井戸、壊れた防壁。

「……ここで、いい」

争いのない場所。誰にも期待されず、誰にも評価されない土地。

アークは初めて、鑑定で告げられた力を意識する。

《クリエイト》。

魔力を込め、崩れた井戸に手をかざすと―― 石は元の位置に戻り、水が湧き出した。

「直った……?」

壊れたものを“新しくする”のではない。
本来あるべき姿へと“創り直す”力。

無価値な力の真価 数日後、流民たちが荒野へ迷い込んできた。
魔族と人間の戦いに敗れ、行き場を失った者たちだ。
彼らはアークを見て怯えた。
角を持つ、魔族の青年。
だがアークは剣を取らず、家を直し、畑を耕し、井戸を修復した。

「……戦わない、魔族?」

「俺は争いが嫌いなんだ」

クリエイトは ・土地を蘇らせ ・病んだ道具を治し 折れた剣すら“再生”させた 気づけば、廃村は人が暮らせる村になっていた。



噂は静かに広がる。


「壊れた町を一晩で直す魔族がいる」

「戦わず、人を救う魔族だ」

ある日、魔獣の群れが村を襲った。流民たちは逃げ惑った。

アークは前に出る。

「戦わない……だが、守る」

地面に手をつけると、 崩れていた城壁が瞬時に再構築される。
折れた槍が立ち上がり、防衛陣が完成する。
戦わずして、戦を終わらせる力。
魔獣は壁を越えられず、撤退した。
人々は初めて、膝をついた。

「あなたは……王か?」

アークは首を振る。

「ただの追放者だ」



価値の逆転。魔族社会では最下位の能力。 だがこの世界で創造は、破壊よりも強かった。

村は町に、町は都市へ。 アークのもとには人間も魔族も集まる。

武器職人は言った。

「あなたの直した剣は、折れない」

学者は震えた。

「失われた古代文明を“再現”している……」

やがて人は彼をこう呼び始める。


《創王(そうおう)》アーク。



魔王城へ届く噂。その頃、魔王城。

「……兄が、国を作っている?」

ゼルの手の中で、玉杯が砕け散る。

破壊で支配する王と、 創造で人をつなぐ王。
兄弟の価値は、完全に逆転していた。
そして世界は、 「どちらが真の王か」を選ぶ時代へ入る。



創王アークの国――境界都市《リベルタ》。

ある日、黒き使者が訪れる。
魔王軍の将、かつてゼルの側近だった男だ。

「創王アーク。魔王ゼル様が、直々にお会いになりたいそうだ」

人々がざわめく。 これは“招待”ではない。宣戦布告に等しい呼び出しだ。 アークは静かに答えた。

「弟に……会えるのか」

玉座の間、再び魔王城。

かつて追放された場所。
アークは武器を持たず、クリエイトで修復した城門をくぐる。
壊れかけていた城が、彼の手でかつての姿を取り戻していく。

玉座には、魔王ゼル。

禍々しい魔力を纏い、その目はかつての双子の弟ではなかった。

「よく来たな、兄上」

「ゼル……元気そうだな」

「元気? ふん、世界が俺を恐れているだけだ」

沈黙。

重たい空気が張りつめる。

ゼルが立ち上がる。

「聞いたぞ。お前が“王”だと名乗っているらしいな」

「名乗った覚えはない。人がそう呼ぶだけだ」

「創るだけの力で、王気取りか?」

ゼルの魔力が爆発する。

玉座の間が崩れ落ちる――はずだった。 だが。 アークが一歩踏み出し、 砕けた床と柱を瞬時に再構築する。

「破壊は一瞬だ。でも、立て直すのは時間と心がいる」 「……黙れ!」

兄弟、初めての戦い。ゼルは覇道の魔力を放つ。

城そのものを消し飛ばすほどの力。
だがアークは戦わない。
壊れた空間を繋ぎ、 裂けた魔力の流れを“修復”する。
ゼルの攻撃は、 当たるたびに“無かったこと”になる。

「なぜだ……なぜ壊れぬ!?」

「俺は、壊す力を否定しない。  だが壊れた後を、放っておけないだけだ」

ゼルの覇道因子が、 初めて“理解不能”に直面する。


「俺は選ばれた!  父にも、魔族にも!  なのに、なぜお前が……!」

玉座の間に、 かつての少年の声が混じる。 アークは剣を取らないまま、言った。

「俺は選ばれなかった。  だから、誰も選ばない王になる」

その言葉は、 魔王の心に致命的な亀裂を入れた。

ゼルは笑う。 壊れた笑みで。

「いいだろう、兄上。  次に会う時は――世界を賭けよう」

魔力の奔流と共に、 ゼルは姿を消す。 アークは城を完全に修復し、振り返る。

「……まだ、救える」

だがそれが、 最も困難な“創造”だと彼は知っていた。


破壊の王と、創造の王。
血を分けた兄弟は、もはや同じ道を歩けない。 それでもアークは、 剣ではなく、未来を創る。

世界大戦が開幕。 魔王ゼルは宣言する。

「創王アークの国を滅ぼす。  従わぬ者は、すべて敵だ」

魔王軍、進軍。 破壊を誇る魔族精鋭、十万。 対するは、創王連合。 人間、魔族、亜人、流民――寄せ集めの民。

「勝てるわけがない……」

誰もがそう思った。 アークは前線に立つ。 剣を持たず、盾も持たず。

「守る。  それだけだ」

壊せない戦場 魔王軍の先鋒が放った一撃で、 平原が抉れ、街が吹き飛ぶ。

次の瞬間。

アークが地に手をつく。

崩壊した地形が戦う前の姿へ戻る。

瓦礫は家に、死地は畑に。

「な……何度壊しても……」

兵士たちの心が、先に折れ始める。

「戦場が、戦場にならない……」

戦争の意味が崩れる 魔王軍は進めない。

壊せば壊すほど、 “元に戻される”からだ。

一方、創王連合は一人も殺さない。

壊れた武器は修復され、 倒れた兵は救われる。

敵兵ですら、だ。

「……なぜ助ける?」

「帰る場所を、壊したくないからだ」

その噂は、魔王軍内部へ広がっていく。

魔王ゼルは激昂する。

「なぜ誰も恐れぬ!  なぜ誰も従わぬ!!」

覇道因子は、 恐怖と破壊を糧にしていた。

だが戦場には、恐怖が残らない。

すべて“修復”されてしまうから。

ゼルの力は、 次第に不安定になっていく。

兄弟、最後の対峙 焦土になるはずだった最終決戦地。

そこに立つのは、二人だけ。

「終わりにしよう、ゼル」 「殺すのか?」 「殺さない。  それが俺の戦争だ」 ゼルは最後の力で、 世界そのものを壊そうとする。

だが

―― アークはそれを受け止め、繋ぎ直す。

覇道因子は、 “壊れた心”を修復されることに耐えられなかった。

ゼルは膝をつく。

「……俺は、間違っていたのか?」

アークは答えない。

ただ、崩れた玉座を作り直し、 そこに誰も座らせなかった。

「王は、必要な時だけ立てばいい」

魔王軍は剣を捨て、撤退する。

世界は滅びなかった。

勝者なき勝利 戦争は終わった。

だがアークは、王座につかない。
彼は相変わらず、 壊れた町を直し、 壊れた関係を繋ぎ直す。 人は言う。

「この戦争で、勝ったのは誰だ?」

答えは決まっている。

破壊が、初めて負けた戦争だった。

鑑定の儀に映らなかったもの 魔王城地下、封印書庫。

戦後、アークは一冊の古文書を手に取る。

そこには「鑑定の儀」の本来の目的が記されていた。

鑑定とは、力の“強さ”を見る儀ではない。

世界に必要とされる役割を示すものなり。 だが、魔族はいつしか
「破壊に適した者」を高く評価するようになった。
儀式は、歪められていたのだ。
創造は、王の資格だった。

古文書は続く。

魔王因子は、世界を壊し過ぎた時それを修復できる存在を必要とする。

ゆえに、真に王に近き力は創造(クリエイト)なり。

つまり、

アークの能力は「戦に勝つ力」ではなく、世界を終わらせないための力。

魔族の歴史において、 それは“最後に現れる王の力”だった。

双子の意味 鑑定盤の裏面には、追記があった。

魔王は常に、二つの魂を伴い生まれる。 一つは壊す者。一つは繋ぐ者。

双子で生まれたのは、偶然ではない。

ゼルは世界を極限まで追い込み、アークはそこから立て直すための存在。二人で一つの魔王因子だった。



最後の頁には、 先代魔王の筆跡が残っていた。

私は、恐れていた。創造の王が生まれることを。

それは、 魔王という存在の“終わり”を意味するからだ。

父は知っていた。

アークこそが“真の王”であることを。

それでも彼は、破壊を選び、世界を続ける道を拒んだ。




幽閉された塔で、ゼルは初めて夢を見る。

城が壊れ、それを兄が黙って直している夢。

「……最初から、勝てるわけなかったな」

その呟きは、覇道因子が静かに消えていく音だった。

そして、新しい儀へ。 アークは「鑑定の儀」を廃し、新たな儀式を定める。

選別ではなく、理解のための儀。力の大小ではなく、 “何を守りたいか”を問う儀式。 争いは、確実に減っていった。

最後に 人々は言う。

「創王は、なぜ王座に就かないのか?」

アークは笑って答える。

「王座に座った瞬間、  直すべき世界が見えなくなるから」

破壊の時代は終わった。 創造の時代が、静かに始まっている。
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