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過去への後悔
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そこまで聞くと、やっぱり気になるのはあのことだ。聞いていいかな……俺は布団から出て体を起こした。
「ええと……聞きにくいんだけど、俺が死んだときは……」
スウ、と白い肌からさらに血の気が引いた。まずい。地雷だったかもしれない。思い出したくない過去だったのかも。
「ご、ごめん。変なこと言った」
「いや……世間がどうなったのか叶空は知らないだろう。話させてくれ」
「無理しないでいいぞ、顔色悪いし……」
沈黙のあと、魔王は重そうに口を開いた。
「叶空が事故にあった、しかも即死、という悲報でネットは持ちきりになりテレビも連日放送した。日本中が悲しみに包まれた」
「そうか……」
「一緒に乗っていた運転手とマネージャーは重体……それとグループのことが気になると思うが、解散はせず続ける方向になっていた。でもすまない。俺はそれ以降を知らない」
「あ……」
そうか、ここに転生してるってことは、魔王の前世はもう……
「まさか、じさ……」
「いや、過労だ」
「過労」
「メディアは一切見なくなり、余計なことを考えないように毎日徹夜で仕事をし、家に帰ってからはほぼ寝ずにあらゆる場所の掃除。天井のシミまで落とした。食事もあまりしてなかったら、栄養失調と重なって、いつの間にか部屋で死んでいた。だから▲のせいではない、俺の自己管理が甘かった」
魔王は淡々と事務的に話す。そりゃ終わったことかもしれないけど……
「でも結果的に、俺が……」
そこまで追い込んだ。俺が殺したようなもんだ……魔王だけでなく、他のファンも同じ状況の人がいたかもしれない。死ぬまではいかなくとも、体調を崩したり、病んだり……俺が死んだあとのことが気になっていたけど、こんなに重い事態になっていたんだ。
急に寒気が襲ってきて、膝を抱えこむ。
「気にするな。過去のことだ」
「そうだけど……」
震える体を縮めながら、ちら、と魔王を見ると心配そうに様子を伺ってくれている。
「魔王様……ちょっと、こっちきて……」
魔王は戸惑いながらも、ベッドの端からそっと近づいてくる。横に寄り添ってくれた魔王の肩に頭を寄せた。ビク!と固まったのもあって、もたれ心地がいいとは言えない。でも暖かい。
「!?」
「俺も過去だって割り切ってたんだけどな……なんか……いざ聞くとやるせなくて……」
「叶空……」
魔王の大きくて細い手が頭を撫でた。手つきが優しくて……目の前が濁っていき、涙が込み上げた。
「う……うう……」
「あ、な、泣かせてしまった、どうしよう」
「魔王様のせいじゃない……でも、俺だって何で泣いてるのか、わかんない……っ」
「それなら思い切り泣くとスッキリするかもしれない」
「……っ、う、うあ~~っ!」
魔王の体に腕を回すと、さらに魔王は身を固くした。少ししてからそっと背中に温もりを感じた。ふわふわの綿みたいに抱きしめてくれた。
「俺、なんであんなとこで死んじゃったんだろ……っ、叶空として、もっとアイドルやりたかった、もっとみんなに感謝を伝えたかった、みんなを置いてけぼりにして、みんなにつらい思いさせた~~!! それで勇者って! こんなんが運命かよぉ~~!」
「叶空にとってつらい話をしてしまってすまない。人間はいつ死ぬか、誰にも分からない。叶空のせいじゃないんだ。だからこそ俺はこうして叶空と会え、二人きりで話すことができている。これも運命だ」
「魔王様だってつらかったのに、話してくれた……聞いたのは俺だし……」
「本当にいい子だな、叶空は……やはり天使だったか……」
「普通の人間だっつの……」
涙腺が決壊したのか、涙は止まらなかった。魔王の腕の中でわんわんと子どもみたいに泣いた。
「ええと……聞きにくいんだけど、俺が死んだときは……」
スウ、と白い肌からさらに血の気が引いた。まずい。地雷だったかもしれない。思い出したくない過去だったのかも。
「ご、ごめん。変なこと言った」
「いや……世間がどうなったのか叶空は知らないだろう。話させてくれ」
「無理しないでいいぞ、顔色悪いし……」
沈黙のあと、魔王は重そうに口を開いた。
「叶空が事故にあった、しかも即死、という悲報でネットは持ちきりになりテレビも連日放送した。日本中が悲しみに包まれた」
「そうか……」
「一緒に乗っていた運転手とマネージャーは重体……それとグループのことが気になると思うが、解散はせず続ける方向になっていた。でもすまない。俺はそれ以降を知らない」
「あ……」
そうか、ここに転生してるってことは、魔王の前世はもう……
「まさか、じさ……」
「いや、過労だ」
「過労」
「メディアは一切見なくなり、余計なことを考えないように毎日徹夜で仕事をし、家に帰ってからはほぼ寝ずにあらゆる場所の掃除。天井のシミまで落とした。食事もあまりしてなかったら、栄養失調と重なって、いつの間にか部屋で死んでいた。だから▲のせいではない、俺の自己管理が甘かった」
魔王は淡々と事務的に話す。そりゃ終わったことかもしれないけど……
「でも結果的に、俺が……」
そこまで追い込んだ。俺が殺したようなもんだ……魔王だけでなく、他のファンも同じ状況の人がいたかもしれない。死ぬまではいかなくとも、体調を崩したり、病んだり……俺が死んだあとのことが気になっていたけど、こんなに重い事態になっていたんだ。
急に寒気が襲ってきて、膝を抱えこむ。
「気にするな。過去のことだ」
「そうだけど……」
震える体を縮めながら、ちら、と魔王を見ると心配そうに様子を伺ってくれている。
「魔王様……ちょっと、こっちきて……」
魔王は戸惑いながらも、ベッドの端からそっと近づいてくる。横に寄り添ってくれた魔王の肩に頭を寄せた。ビク!と固まったのもあって、もたれ心地がいいとは言えない。でも暖かい。
「!?」
「俺も過去だって割り切ってたんだけどな……なんか……いざ聞くとやるせなくて……」
「叶空……」
魔王の大きくて細い手が頭を撫でた。手つきが優しくて……目の前が濁っていき、涙が込み上げた。
「う……うう……」
「あ、な、泣かせてしまった、どうしよう」
「魔王様のせいじゃない……でも、俺だって何で泣いてるのか、わかんない……っ」
「それなら思い切り泣くとスッキリするかもしれない」
「……っ、う、うあ~~っ!」
魔王の体に腕を回すと、さらに魔王は身を固くした。少ししてからそっと背中に温もりを感じた。ふわふわの綿みたいに抱きしめてくれた。
「俺、なんであんなとこで死んじゃったんだろ……っ、叶空として、もっとアイドルやりたかった、もっとみんなに感謝を伝えたかった、みんなを置いてけぼりにして、みんなにつらい思いさせた~~!! それで勇者って! こんなんが運命かよぉ~~!」
「叶空にとってつらい話をしてしまってすまない。人間はいつ死ぬか、誰にも分からない。叶空のせいじゃないんだ。だからこそ俺はこうして叶空と会え、二人きりで話すことができている。これも運命だ」
「魔王様だってつらかったのに、話してくれた……聞いたのは俺だし……」
「本当にいい子だな、叶空は……やはり天使だったか……」
「普通の人間だっつの……」
涙腺が決壊したのか、涙は止まらなかった。魔王の腕の中でわんわんと子どもみたいに泣いた。
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