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嫉妬のテレパシー
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天真王子と約束を交わし、城を後にする頃には夕焼け空になっていた。紅い光で染まる街を歩きながら陽凪の家に向かう。今日泊まる宿のことを何も考えていなかったが、陽凪が家に泊めてくれるらしい。なんならしばらく拠点にしてもいいとのことで、ありがたく甘えることにした。
「叶空、魔物の魔法に詳しい人って?」
「えーっと、俺のいた町の人で、ちょ、ちょうど明日ここに来るらしくて」
「そうなんだ」
と言ったものの、なんとかアズノストと連絡取って話合わせてここに来てもらわないと……
『何かあったら遠慮なく心の中で俺を呼んでくれ。というか呼ばなくても見ているからな』
そういえば、アズノストがそう言ってたな。心の中で呼ぶ……
「王様には会えなかったけど、結果的に王子……天真と会えてよかったね」
隣を歩く陽凪が笑いかけてきて、アズノストへの呼びかけが遮断された。心の中で喋りながら陽凪と話すなんて高度なことはできない。勘ぐられても困るし今は陽凪に集中しよう。
「だな。みんな、転生してたんだ」
「うん、そこに叶空も加わってくれてもっと嬉しい」
「これであといないのは昴か」
ステラシエルの残りの1人、昴。演技力が高くてドラマや映画にたくさん出ていた。巷ではカメレオン俳優と言われていた。当の本人は自由人で掴みどころがなくて飄々としてたけど。
「俺も昴の居場所は知らないんだ。探してはいるんだけどね」
「昴のことだからそのへん放浪してそうだな。役職とかにはついてなさそう。あっちこっち旅して……移動サーカスみたいな!」
「あはは、それは似合ってる」
陽凪の家で晩飯までごちそうになり、風呂まで一緒に入った。めちゃくちゃ駄々こねるから仕方なく……でもシャンプー類はいい匂いだし(たぶん高いやつ)湯船にも浸かって、髪も乾かしてもらって、満足感がすごい。
「ベッドがひとつしかないから、俺と一緒でいい?」
「俺ソファでいいけど」
「駄目、一緒に寝たい」
「お前そっちが本音だろ……ま、いいよ」
「やっぱり今日は素直だね」
「久しぶりだしな。サービスしてやるよ」
「ふふ、本当に叶空は可愛い」
めくられた布団の中にもぐりこむ。さすがに正面向き合って寝るのは……と背を向けると、結局背中から抱きしめられた。
「おやすみ、叶空」
「おやすみ……」
風呂であったまって心地よく包まれて、すぐに眠気が襲ってくる。今日はいろいろあったからなあ……
待て! まだ寝たらだめだ! ずっと陽凪が構ってくるから、アズノストに話しかける隙が全く無かった。寝る前の今しかない。
(アズノスト! ちょっと話したいんだけど!)
……
(どうした、フォル)
頭の中でアズノストの声が響いた。不思議な感覚だ。
(すげえ、マジで会話できた)
(テレパシーみたいなものだ。このまま心の中で会話してくれ。今日一日大丈夫だったか? だいたいの流れは把握しているが……)
(なら話は早いな)
俺は今日あったことを話した。ステラシエルのメンバーに会ったこと、王様が倒れ、理由が不明なこと、それに魔物が関わっているかみてほしいこと、俺と同じ町出身の魔法使いってことで話を合わせてほしいこと……
(確かに、原因不明となると魔物が関わっていそうだな。分かった。明日は同行させてもらう。名前はそのままじゃない方がいいな。アズと名乗ろう)
(うん、頼んだ)
(それと……今フォルを抱きしめているのは陽凪か……アイドルの頃からだったが、本当に仲が良いのだな……)
声色が少し陰った気がする。
(こいつ俺に対してはずっとこんな感じだから、もう慣れた)
(……べたべたしているのはいわゆるBL営業だと思っていたんだが)
(素だよ。いつでもどこでも、ところ構わず絡んでくる。なんか最初に会った時から気に入られてるんだよな)
(そうか……)
(アズノスト?)
(いや、なんでもない。ではまた明日。おやすみ)
アズノストの声は聞こえなくなった。
俺も寝よう。明日原因が分かりますように。王様が元気なりますように。そう願いながら眠りに落ちるとき、唇に温かいものが触れた気がした……
「叶空、魔物の魔法に詳しい人って?」
「えーっと、俺のいた町の人で、ちょ、ちょうど明日ここに来るらしくて」
「そうなんだ」
と言ったものの、なんとかアズノストと連絡取って話合わせてここに来てもらわないと……
『何かあったら遠慮なく心の中で俺を呼んでくれ。というか呼ばなくても見ているからな』
そういえば、アズノストがそう言ってたな。心の中で呼ぶ……
「王様には会えなかったけど、結果的に王子……天真と会えてよかったね」
隣を歩く陽凪が笑いかけてきて、アズノストへの呼びかけが遮断された。心の中で喋りながら陽凪と話すなんて高度なことはできない。勘ぐられても困るし今は陽凪に集中しよう。
「だな。みんな、転生してたんだ」
「うん、そこに叶空も加わってくれてもっと嬉しい」
「これであといないのは昴か」
ステラシエルの残りの1人、昴。演技力が高くてドラマや映画にたくさん出ていた。巷ではカメレオン俳優と言われていた。当の本人は自由人で掴みどころがなくて飄々としてたけど。
「俺も昴の居場所は知らないんだ。探してはいるんだけどね」
「昴のことだからそのへん放浪してそうだな。役職とかにはついてなさそう。あっちこっち旅して……移動サーカスみたいな!」
「あはは、それは似合ってる」
陽凪の家で晩飯までごちそうになり、風呂まで一緒に入った。めちゃくちゃ駄々こねるから仕方なく……でもシャンプー類はいい匂いだし(たぶん高いやつ)湯船にも浸かって、髪も乾かしてもらって、満足感がすごい。
「ベッドがひとつしかないから、俺と一緒でいい?」
「俺ソファでいいけど」
「駄目、一緒に寝たい」
「お前そっちが本音だろ……ま、いいよ」
「やっぱり今日は素直だね」
「久しぶりだしな。サービスしてやるよ」
「ふふ、本当に叶空は可愛い」
めくられた布団の中にもぐりこむ。さすがに正面向き合って寝るのは……と背を向けると、結局背中から抱きしめられた。
「おやすみ、叶空」
「おやすみ……」
風呂であったまって心地よく包まれて、すぐに眠気が襲ってくる。今日はいろいろあったからなあ……
待て! まだ寝たらだめだ! ずっと陽凪が構ってくるから、アズノストに話しかける隙が全く無かった。寝る前の今しかない。
(アズノスト! ちょっと話したいんだけど!)
……
(どうした、フォル)
頭の中でアズノストの声が響いた。不思議な感覚だ。
(すげえ、マジで会話できた)
(テレパシーみたいなものだ。このまま心の中で会話してくれ。今日一日大丈夫だったか? だいたいの流れは把握しているが……)
(なら話は早いな)
俺は今日あったことを話した。ステラシエルのメンバーに会ったこと、王様が倒れ、理由が不明なこと、それに魔物が関わっているかみてほしいこと、俺と同じ町出身の魔法使いってことで話を合わせてほしいこと……
(確かに、原因不明となると魔物が関わっていそうだな。分かった。明日は同行させてもらう。名前はそのままじゃない方がいいな。アズと名乗ろう)
(うん、頼んだ)
(それと……今フォルを抱きしめているのは陽凪か……アイドルの頃からだったが、本当に仲が良いのだな……)
声色が少し陰った気がする。
(こいつ俺に対してはずっとこんな感じだから、もう慣れた)
(……べたべたしているのはいわゆるBL営業だと思っていたんだが)
(素だよ。いつでもどこでも、ところ構わず絡んでくる。なんか最初に会った時から気に入られてるんだよな)
(そうか……)
(アズノスト?)
(いや、なんでもない。ではまた明日。おやすみ)
アズノストの声は聞こえなくなった。
俺も寝よう。明日原因が分かりますように。王様が元気なりますように。そう願いながら眠りに落ちるとき、唇に温かいものが触れた気がした……
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