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恋人編ー3年生前期
星とともに光れ -落着-
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それから数日後。グループワークの発表の打ち合わせをするため、一条と大学の学食で待ち合わせた。文系と理系の間にあるので、ちょうど良い。昼を過ぎたので人はまばらだ。少しして、一条が明るい笑顔でやってきた。リュックと手に持っていたスマホを机の上にドサ、と置いて向かいの席に座った。
「よー、この前はありがとな」
「こちらこそ、楽しかった」
「璃央くんとも話せてよかったわ。おもしろかったし」
「だろ。俺の……いや、俺もそう思う」
あぶねー! 璃央が言ってるみたいに"俺の"璃央って言いそうになった! それはさすがに恥ずい……
「シャーって威嚇してくんのが猫みたいでさ」
「わかるわかる。そういうところが可愛くて」
「うん、可愛い」
「うん……」
……あれ? なんか、雲行きが……
「俺も璃央くん懐柔したくなったなぁ。和真以外には懐きそうにないしなかなか大変そうだけど、マジでタイプだし」
「……!」
「難攻不落な子の方が燃えるしな」
璃央は一条と関わるときは油断すんなよって言われたけど……違う、逆だ。油断したらいけないのは璃央だ。けっこう軽めに可愛い可愛い言ってるから流してたけど、これは俺が璃央を取られる心配をしないとじゃないか!?
「和真?」
「り、璃央は……」
視線が痛い。じっと見られてる。璃央みたいに強くは言えないけど、ちゃんと言わないと。
「俺の、だから、落としたらダメ!」
言った、言えた。けど、怒られたり喧嘩になったりしたら……いやいや、璃央を取られる方が嫌だ。俺だって璃央のこと大切だし好きだし!
「だってさー、よかったな」
「え?」
一条が話しかけたのは、机に置かれたスマホで……ま、まさか……!!
『和真!!!! オレも好き!!!!』
「声でっか! 通話してたの!?」
『オレは和真のもんだぞ、遠慮なくどんどん自慢しろ!』
スマホから割れんばかりの音声が響く。スピーカー通話……ぜ、全部本人に聞かれて……
バッ、と一条に目線を上げると、肘をついてにやにやと笑ってる。
「璃央くんの顔見たくて電話かけたら、和真寄こせ~ってうるさいから、ちょっと仕掛けてみた。大成功~!」
『ふん、まあまあいい働きすんじゃねーか』
完全にしてやられた。恥ずかしすぎる。ふたりして楽しそうにドッキリ大成功の看板を掲げているのがイメージできる。
「璃央くーん、俺仕事したし、お礼に顔見せてよ」
『しゃーねぇな』
向かいに座ってるからスマホの画面は見えないけど、一条の目がパッと明るくなったので璃央が顔を見せたんだろう。
「お、部屋着じゃん、髪のセットもしてないし。オフの格好も可愛いな~癒しだわ」
『うるせぇな、今日全休なんだよ。つかそっちも和真見せろや』
「オッケー」
ひと通りの口説きをうるせぇの一言でスルーしている。一条は楽しそうな表情を変えないまま、スマホの内カメラに向かってピースした。
『お前じゃねえ! 和真出せ、和真!』
借金取り立てのヤクザみたいになってる……
わかったわかった、と一条は俺の隣に移動した。ふたりでスマホを覗き込む。完全オフモードの璃央と目を合わせると、『和真!』と笑顔が輝いた。可愛い……
『和真、今何してんだ?』
「一条とグループワークの打ち合わせをするところ」
『は……ふたりきりで……!?』
ガーン、という文字が見えそうなほどショックを受けている。
「そー、ふたりで一緒にパワポ発表すんだ。和真、熱心にやってくれるから、俺も集中できるし楽しーよ」
『和真が熱心なのはいつもだ! お前が語んな! つか一緒にグループワークとか聞いてねー!』
「ご、ごめんて。そこまで言わなくていいかなって」
「嫉妬深いね~。でもそのおかげで、和真からいいこと聞けたじゃん」
プンプン怒っていた璃央は急に動きを止めた。そして少し考える仕草をしたあと、ふふん、と得意気になった。ひと言喋るごとに喜怒哀楽を反復横跳びしている。
『まーな。和真はそういうの恥ずかしがって言わねーから、聞けたのはでかいな。今度録音させろ』
「恥ずかしいからやだ……」
『一条鷹夜、お前少しは役に立つじゃねーか。嬉しいから褒めてやる。気が向いたら今度のライブも行ってやる』
俺が思ってたよりもレグルスの曲を気に入ってるみたいだ。よかったよかった。
「えー、それめっちゃ嬉しいな。今度は璃央くんにチューすんね」
『くそ要らねー。歌とギターに集中しとけ』
「ま、とりあえず璃央くんの好感度いただきってことで」
「それはそれ、これはこれだ。オレが見てない間に和真とベタベタしたら怒るからな」
「ベタベタってこんな感じ?」
急にぐい、と肩を組まれて一条と体が密着した。璃央よりも男らしくて力強い香水の匂いが香る。
「わっ」
『おまっ……!?』
プツッ……
驚愕した璃央の顔と声が聞こえた瞬間、無情にも通話が切られた。
「璃央くん今ごろ絶叫してんだろーな」
「目に浮かぶ……」
一条はあっけらかんと笑った。
結局ドッキリだったってことは、一条が璃央を狙ってるってのは俺の勘違いか。よかった。俺のことも璃央のことも曲のネタ探しとして揶揄ってるんだろう。
「さっきの話、璃央くんを懐柔したいってのはホントだから」
「え?」
「さすがにふたりの邪魔したりはしねーよ。でもガチで璃央くん好みでカワイーから、愛でるくらいは許して♡」
そういうことか……
「や、それなら俺に許可取らなくても」
「あー、和真ってあんまヤキモチ焼かないタイプ? さっきは俺のだって言ったのに」
「それはマジで危機感感じたからで……璃央は昔から人気者で、気にしててもキリがないからなあ」
「それでも妬いてくれたら嬉しいと思う。俺も人気者だし、立場的には璃央くん側だからな。言ってあげたらさっきみたいに喜ぶよ」
「そっかあ……」
でも言うのけっこう恥ずいんだよな……さっき一条に言うのもだいぶ勇気出したし。自分の気持ちをズバッと言える璃央はやっぱすごい。
……まあそれだからこそ今現在、一条のスマホには鬼電かかってきてるんだけど。一条は何回か無視してたが鳴り止まないので仕方なく出た。
『一条鷹夜ぁ!このやろ、てめぇ~~!!』
「今から和真と課題という名の共同作業(強調)するからしばらく電話やめてな、終わんないと和真も困るからな。んじゃ~」
『はぁ!?オレだって共同作業くらいしたことあ……』
プツッ……
璃央……今ごろ枕とかにやつ当たってそうだ……
「共同作業ってどんなことしたの?」
「え、なんだろ……昔の掃除当番とか?」
「ははは!やっぱおもしれー!」
何にツボったのかわからないが、一条は「どこ張り合ってんだよ璃央くん!」と腹を抱えてひと通り笑ったあと、涙をぬぐいながら顔を上げた。
「ま、今後ともよろしくな。おふたりさんのいいスパイスぐらいにはなってやるよ」
「お、おう……」
一条はご機嫌なまま、にんまりと企むような笑みを見せた。いちばん心配なのは璃央の情緒だな……
「よー、この前はありがとな」
「こちらこそ、楽しかった」
「璃央くんとも話せてよかったわ。おもしろかったし」
「だろ。俺の……いや、俺もそう思う」
あぶねー! 璃央が言ってるみたいに"俺の"璃央って言いそうになった! それはさすがに恥ずい……
「シャーって威嚇してくんのが猫みたいでさ」
「わかるわかる。そういうところが可愛くて」
「うん、可愛い」
「うん……」
……あれ? なんか、雲行きが……
「俺も璃央くん懐柔したくなったなぁ。和真以外には懐きそうにないしなかなか大変そうだけど、マジでタイプだし」
「……!」
「難攻不落な子の方が燃えるしな」
璃央は一条と関わるときは油断すんなよって言われたけど……違う、逆だ。油断したらいけないのは璃央だ。けっこう軽めに可愛い可愛い言ってるから流してたけど、これは俺が璃央を取られる心配をしないとじゃないか!?
「和真?」
「り、璃央は……」
視線が痛い。じっと見られてる。璃央みたいに強くは言えないけど、ちゃんと言わないと。
「俺の、だから、落としたらダメ!」
言った、言えた。けど、怒られたり喧嘩になったりしたら……いやいや、璃央を取られる方が嫌だ。俺だって璃央のこと大切だし好きだし!
「だってさー、よかったな」
「え?」
一条が話しかけたのは、机に置かれたスマホで……ま、まさか……!!
『和真!!!! オレも好き!!!!』
「声でっか! 通話してたの!?」
『オレは和真のもんだぞ、遠慮なくどんどん自慢しろ!』
スマホから割れんばかりの音声が響く。スピーカー通話……ぜ、全部本人に聞かれて……
バッ、と一条に目線を上げると、肘をついてにやにやと笑ってる。
「璃央くんの顔見たくて電話かけたら、和真寄こせ~ってうるさいから、ちょっと仕掛けてみた。大成功~!」
『ふん、まあまあいい働きすんじゃねーか』
完全にしてやられた。恥ずかしすぎる。ふたりして楽しそうにドッキリ大成功の看板を掲げているのがイメージできる。
「璃央くーん、俺仕事したし、お礼に顔見せてよ」
『しゃーねぇな』
向かいに座ってるからスマホの画面は見えないけど、一条の目がパッと明るくなったので璃央が顔を見せたんだろう。
「お、部屋着じゃん、髪のセットもしてないし。オフの格好も可愛いな~癒しだわ」
『うるせぇな、今日全休なんだよ。つかそっちも和真見せろや』
「オッケー」
ひと通りの口説きをうるせぇの一言でスルーしている。一条は楽しそうな表情を変えないまま、スマホの内カメラに向かってピースした。
『お前じゃねえ! 和真出せ、和真!』
借金取り立てのヤクザみたいになってる……
わかったわかった、と一条は俺の隣に移動した。ふたりでスマホを覗き込む。完全オフモードの璃央と目を合わせると、『和真!』と笑顔が輝いた。可愛い……
『和真、今何してんだ?』
「一条とグループワークの打ち合わせをするところ」
『は……ふたりきりで……!?』
ガーン、という文字が見えそうなほどショックを受けている。
「そー、ふたりで一緒にパワポ発表すんだ。和真、熱心にやってくれるから、俺も集中できるし楽しーよ」
『和真が熱心なのはいつもだ! お前が語んな! つか一緒にグループワークとか聞いてねー!』
「ご、ごめんて。そこまで言わなくていいかなって」
「嫉妬深いね~。でもそのおかげで、和真からいいこと聞けたじゃん」
プンプン怒っていた璃央は急に動きを止めた。そして少し考える仕草をしたあと、ふふん、と得意気になった。ひと言喋るごとに喜怒哀楽を反復横跳びしている。
『まーな。和真はそういうの恥ずかしがって言わねーから、聞けたのはでかいな。今度録音させろ』
「恥ずかしいからやだ……」
『一条鷹夜、お前少しは役に立つじゃねーか。嬉しいから褒めてやる。気が向いたら今度のライブも行ってやる』
俺が思ってたよりもレグルスの曲を気に入ってるみたいだ。よかったよかった。
「えー、それめっちゃ嬉しいな。今度は璃央くんにチューすんね」
『くそ要らねー。歌とギターに集中しとけ』
「ま、とりあえず璃央くんの好感度いただきってことで」
「それはそれ、これはこれだ。オレが見てない間に和真とベタベタしたら怒るからな」
「ベタベタってこんな感じ?」
急にぐい、と肩を組まれて一条と体が密着した。璃央よりも男らしくて力強い香水の匂いが香る。
「わっ」
『おまっ……!?』
プツッ……
驚愕した璃央の顔と声が聞こえた瞬間、無情にも通話が切られた。
「璃央くん今ごろ絶叫してんだろーな」
「目に浮かぶ……」
一条はあっけらかんと笑った。
結局ドッキリだったってことは、一条が璃央を狙ってるってのは俺の勘違いか。よかった。俺のことも璃央のことも曲のネタ探しとして揶揄ってるんだろう。
「さっきの話、璃央くんを懐柔したいってのはホントだから」
「え?」
「さすがにふたりの邪魔したりはしねーよ。でもガチで璃央くん好みでカワイーから、愛でるくらいは許して♡」
そういうことか……
「や、それなら俺に許可取らなくても」
「あー、和真ってあんまヤキモチ焼かないタイプ? さっきは俺のだって言ったのに」
「それはマジで危機感感じたからで……璃央は昔から人気者で、気にしててもキリがないからなあ」
「それでも妬いてくれたら嬉しいと思う。俺も人気者だし、立場的には璃央くん側だからな。言ってあげたらさっきみたいに喜ぶよ」
「そっかあ……」
でも言うのけっこう恥ずいんだよな……さっき一条に言うのもだいぶ勇気出したし。自分の気持ちをズバッと言える璃央はやっぱすごい。
……まあそれだからこそ今現在、一条のスマホには鬼電かかってきてるんだけど。一条は何回か無視してたが鳴り止まないので仕方なく出た。
『一条鷹夜ぁ!このやろ、てめぇ~~!!』
「今から和真と課題という名の共同作業(強調)するからしばらく電話やめてな、終わんないと和真も困るからな。んじゃ~」
『はぁ!?オレだって共同作業くらいしたことあ……』
プツッ……
璃央……今ごろ枕とかにやつ当たってそうだ……
「共同作業ってどんなことしたの?」
「え、なんだろ……昔の掃除当番とか?」
「ははは!やっぱおもしれー!」
何にツボったのかわからないが、一条は「どこ張り合ってんだよ璃央くん!」と腹を抱えてひと通り笑ったあと、涙をぬぐいながら顔を上げた。
「ま、今後ともよろしくな。おふたりさんのいいスパイスぐらいにはなってやるよ」
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