1軍陽キャ幼なじみの猛攻♡

すももゆず

文字の大きさ
33 / 50
恋人編ー3年生前期

集結・ゴールデンウィーク④

しおりを挟む
「和真! 久しぶり、元気してた?」
「お久しぶりです……」
「おい花鈴、ウザ絡みすんな! 和真ビビってんだろ!」

 璃央を押しのけ、花鈴さんはキラキラした笑顔で迫ってくる。

「璃央がごめんねー。いっつもベッタリされて大変でしょ。なんか困ったりしてない? いつでも相談してきていいからね!」
「あ、ありがとうございます」

 ギャルノリすぎる……悪い人じゃないし、むしろオタクに優しいギャルなんだけど、話すテンションが合わない……!
 
「てかさ、一緒の大学なのに全然会わないじゃん。あたしのこと避けてるでしょ」
「い、いや、そんなことは」
「もー、遠慮しなくていいのに! ……お、大晴といるってのは嘘じゃなかったんだ」

 花鈴さんの話す相手が水戸へと移り、バレないように息を整える。緊張した……

「お久しぶりです、花鈴さん」
「久しぶりぃ! 他の子たちも璃央の友達?」

 颯太くんたちの輪の中に入り、もう話が盛り上がっている。すごい、さすがのコミュ力だ……呆気に取られてると璃央が俺にこそっと耳打ちした。

「ごめん、和真。あいつデリカシーねぇからショック受けたりしてないか?」
「いや、大丈夫だよ。久しぶりに会うから気圧されてただけで」

 まあいつ会っても気圧されてんだけど……
 そこに、柔らかいお姉さん声が聞こえて顔を向ける。

「もう花鈴、声が向こうまで聞こえてたよ」

 璃央の上のお姉さんの、明莉さんだ! 璃央とも花鈴さんとも違う、ふんわりした雰囲気を纏った美人。

「ごめんごめん、テンション上がっちゃってさ!」

 明莉さんは小さくため息をついた後、すぐににこりと微笑んでみんなに向かってお辞儀をした。

「いつも璃央がお世話になってます。姉の明莉です」
「お久しぶりです」
「こんにちは! 明莉さん、優しそうで羨ましいな~」

 颯太くんの言葉に、璃央は眉を寄せた。

「いやこいつ怒るとマジでやべえから。鬼より怖い……」
「璃央、そういうことをお友達に言っちゃダメ」
「……ハイ」
「こりゃ相当だ」

 「あたしも優しそうでしょ!」と颯太くんに絡む花鈴さんを見て優しく笑うと明莉さんは俺の方を向いた。

「和真くん、いつも璃央の面倒見てくれてありがとう。迷惑かけてない?」
「い、いえ、全然です!」
「オレが和真に迷惑かけるわけねーだろ」
「その自信どこから来るのよ……和真くんが困ってないならいいけど……璃央は周りが見えなくなって暴走しがちだから、ね?」
「どういう意味だそれ」
「ですね」

 今さっき、璃央と合流した時がまさにそうだった。

「だから璃央のこと、見ててあげて。私も花鈴もそれに父と母も、和真くんになら安心して任せられると思ってるから」
「え、そ、そんな大それたことは……!」

 なんか大事になってない!? そりゃ璃央とはずっと一緒にいたいと思ってるけど、ご家族公認のプロポーズみたいになってる……! どう反応したもんか、焦ってチラッと璃央を見ると、目を大きく開いて俺を見ていた。期待してる! 俺が何を言うのか、めっちゃ期待してる!

「こ、こちらこそよろしくお願いします……!」

 璃央は満足そうに頷いた。

「おう、任せたぞ。老後まで面倒見ろよ。男に二言はなしだ」

 言質取られた感があるけど、本心だし、璃央は喜んでるから何でもいいか。

「璃央だって俺の面倒見てくれるんだろ?」
「当たり前。疑う時間がもったいねえぞ」
「うん。璃央が本気で好きなのは昔から和真くんだけだから」
「明莉! そういうの言うな!」
「あはは、恥ずかしがっちゃって」

 お姉さんたちが俺たちのこと喜んでくれてるのは璃央から聞いてたけど、やっぱ面と向かって言われると嬉しいな。家族公認……ちょっと恥ずかしいけど……懐が広くて暖かい家庭で璃央が育ってきたんだなあって感じて、俺まで心が暖かくなる。

 すると、「あ!」と花鈴さんが手を叩いた。

「和真と大晴、帰る方向一緒なんだし、途中まで荷物持って帰ってくれない? あたしまだ服買い足りなくて!」
「自分で買ったもんくらい自分で持てよ! 手に持てる分だけ買え!」

 璃央が持っていた荷物の横には、さらに紙袋が増えている。お姉さんたち二人が手に持っていた分だ。これは相当な量。怒る璃央のことは気にせず、水戸は軽く手をあげた。

「いいですよ。女性に重いもの持たせられません」
「おい大晴……!」
「大晴、璃央と違って紳士ね! 男前!」
「持ってくれたら助かるけど……本当に大丈夫?」

 心配そうに眉を下げる明莉さんに、水戸は爽やかに笑い返す。

「こっちの二人も俺んち泊まるんで、みんなで持ちます」
「持ちます!」
「ボクも!」

 ノリ良く賛同する颯太くんとサーニャさんに合わせて「俺も……」と手をあげる。

「和真まで……!」
「みんな璃央と違って優しいね! ありがと!」
「ごめんね、ほんとに助かるわ。今度お礼するね。花鈴、お邪魔しちゃったしそろそろ行こう」
「えー、まだみんなと喋りたい!」

 明莉さんはカバンから取り出したスマホの時刻を花鈴さんに見せた。

「ほらそろそろ限定のパンが焼き上がる時間」
「ほんとだ! じゃーね、みんな! みんなの分もパン買っとくね!」
「オレの分も買えよ!」
「おけおけ!」

「あいつら……荷物押し付けにきたのかよ……!」




 お姉さんたちが嵐のように去ってから、しばらくみんなで時間を忘れて談笑して、日が暮れてきたころショッピングモールを出た。前田とは家が別方向で、すぐに別れた。別れ際に「俺がいなくても頑張って喋れよ」と心配された。最初よりは慣れてきたけど、頑張ります……まあ璃央がいるし、心強い。

「そうだ木山、連絡先交換しよ」
「俺も!」
「ボクも!」
「あ、うん……!」

 連絡先聞いてくれるってことは、ちょっとは仲良くなれたかな……いい人たちだな……でも、スマホを取り出そうとした手を璃央に阻止された。

「ダメ! 和真と仲良くなろうとすんな!」
「り、璃央……」
「いーじゃん、連絡先くらい。木山くんの交友関係を邪魔する方が逆によろしくないのではなくて?」
「ぐっ……」

 お嬢様言葉で煽る(?)颯太くんに、璃央は唇を噛み締めた。

「和真はこいつらの連絡先欲しいのかよ」
「俺は仲良くしたいなって……俺あんま友達いないし……語れる友達増えたら嬉しいし……」
「ぐうっ……和真がそうしたいなら、仕方ねえ……カッコ悪い嫉妬は抑えてオレは寛容な男になる」

 その表情から随分な葛藤が伝わってくる。三人から見ても璃央の嫉妬は通常運転なんだろう。璃央からの許可が出たぞーと、慣れた手つきで連絡先のQRコードを画面に表示してくれた。それを俺は順に読みこむ。

「お前ら必要最低限しか会話すんなよ。和真との会話は逐一見せろ」
「嫁の浮気チェックみたいだな」
「寛容な男はどこいったの?」
「そんなのつまんねーじゃん。璃央のカッコ悪い写真撮って送ってやろ」
「てめぇ……」
「おりゃ!スタンプ攻撃!」

 スポポポポ!と颯太くんから大量のスタンプが送られてくる。アニメやネットで人気のキャラクターのスタンプだ。

「木山、たまにメッセージ送っていい?」
「大晴! お前は言ったそばからぁ……!」
「全然いいよ」

 俺が答えると、璃央はまた悔しそうに拳を握りしめた。

「可愛いグッズ買った時に誰かに報告したいけど言える人いなくてさ」
「俺そんな上手いこと返せないけど……」
「いいよ、『可愛い!』って言ってくれればそんだけで」

 なんか分かるな、その気持ち。SNSにこれ買ったって報告するだけで満足感を得られるし。そこに特に感想はいらないんだよな。

「わかった」
「気楽に返事してくれればいいから。俺もメッセージの内容とか気にするタイプじゃないし、たぶんスタンプ返して終わりになると思う」
「うん、そんぐらいの方が楽だな」

 あ……璃央が分かりやすくショックを受けている。ガーンって文字が見えそうだ。

「か、和真……オレのメッセージ、量多くてめんどいとか思ってた……?」
「違うって、そういう意味じゃないから!」

 前を歩く三人は「また始まった」とスタスタ歩いていく。明らかに落ち込み足取りを重くする璃央に合わせてゆっくり隣を歩いた。

「水戸とはまだあんまり仲良くなってないし、長々メッセージするの気ぃ使うからその方が楽って意味! 璃央から連絡来るの楽しみにしてるし、嬉しいよ!」
「ほんとか?」
「ほんと!」
「じゃあいっぱい送る」

 あっという間に機嫌を取り戻してて可愛い。チョロいとか言ったら怒るから言わないけど、へこんでもすぐ戻ってきて、引きずらないところ好きだな。

「なあ、璃央が好きなものに自信を持てるようになったのって……俺がきっかけ?」
「は!?」

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

【完結】愛されたかった僕の人生

Kanade
BL
✯オメガバース 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜 お見合いから一年半の交際を経て、結婚(番婚)をして3年。 今日も《夫》は帰らない。 《夫》には僕以外の『番』がいる。 ねぇ、どうしてなの? 一目惚れだって言ったじゃない。 愛してるって言ってくれたじゃないか。 ねぇ、僕はもう要らないの…? 独りで過ごす『発情期』は辛いよ…。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件

ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。 せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。 クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom × (自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。 『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。 (全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます) https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390 サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。 同人誌版と同じ表紙に差し替えました。 表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

ブラコンすぎて面倒な男を演じていた平凡兄、やめたら押し倒されました

あと
BL
「お兄ちゃん!人肌脱ぎます!」 完璧公爵跡取り息子許嫁攻め×ブラコン兄鈍感受け 可愛い弟と攻めの幸せのために、平凡なのに面倒な男を演じることにした受け。毎日の告白、束縛発言などを繰り広げ、上手くいきそうになったため、やめたら、なんと…? 攻め:ヴィクター・ローレンツ 受け:リアム・グレイソン 弟:リチャード・グレイソン  pixivにも投稿しています。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。

批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。

アプリで都合のいい男になろうとした結果、彼氏がバグりました

あと
BL
「目指せ!都合のいい男!」 穏やか完璧モテ男(理性で執着を押さえつけてる)×親しみやすい人たらし可愛い系イケメン 攻めの両親からの別れろと圧力をかけられた受け。関係は秘密なので、友達に相談もできない。悩んでいる中、どうしても別れたくないため、愛人として、「都合のいい男」になることを決意。人生相談アプリを手に入れ、努力することにする。しかし、攻めに約束を破ったと言われ……?   攻め:深海霧矢 受け:清水奏 前にアンケート取ったら、すれ違い・勘違いものが1位だったのでそれ系です。 ハピエンです。 ひよったら消します。
誤字脱字はサイレント修正します。
また、内容もサイレント修正する時もあります。
定期的にタグも整理します。
批判・中傷コメントはお控えください。
見つけ次第削除いたします。 自己判断で消しますので、悪しからず。

性悪なお嬢様に命令されて泣く泣く恋敵を殺りにいったらヤられました

まりも13
BL
フワフワとした酩酊状態が薄れ、僕は気がつくとパンパンパン、ズチュッと卑猥な音をたてて激しく誰かと交わっていた。 性悪なお嬢様の命令で恋敵を泣く泣く殺りに行ったら逆にヤラれちゃった、ちょっとアホな子の話です。 (ムーンライトノベルにも掲載しています)

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中  二日に一度を目安に更新しております

処理中です...