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恋人編ー3年生前期
集結・ゴールデンウィーク④
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「和真! 久しぶり、元気してた?」
「お久しぶりです……」
「おい花鈴、ウザ絡みすんな! 和真ビビってんだろ!」
璃央を押しのけ、花鈴さんはキラキラした笑顔で迫ってくる。
「璃央がごめんねー。いっつもベッタリされて大変でしょ。なんか困ったりしてない? いつでも相談してきていいからね!」
「あ、ありがとうございます」
ギャルノリすぎる……悪い人じゃないし、むしろオタクに優しいギャルなんだけど、話すテンションが合わない……!
「てかさ、一緒の大学なのに全然会わないじゃん。あたしのこと避けてるでしょ」
「い、いや、そんなことは」
「もー、遠慮しなくていいのに! ……お、大晴といるってのは嘘じゃなかったんだ」
花鈴さんの話す相手が水戸へと移り、バレないように息を整える。緊張した……
「お久しぶりです、花鈴さん」
「久しぶりぃ! 他の子たちも璃央の友達?」
颯太くんたちの輪の中に入り、もう話が盛り上がっている。すごい、さすがのコミュ力だ……呆気に取られてると璃央が俺にこそっと耳打ちした。
「ごめん、和真。あいつデリカシーねぇからショック受けたりしてないか?」
「いや、大丈夫だよ。久しぶりに会うから気圧されてただけで」
まあいつ会っても気圧されてんだけど……
そこに、柔らかいお姉さん声が聞こえて顔を向ける。
「もう花鈴、声が向こうまで聞こえてたよ」
璃央の上のお姉さんの、明莉さんだ! 璃央とも花鈴さんとも違う、ふんわりした雰囲気を纏った美人。
「ごめんごめん、テンション上がっちゃってさ!」
明莉さんは小さくため息をついた後、すぐににこりと微笑んでみんなに向かってお辞儀をした。
「いつも璃央がお世話になってます。姉の明莉です」
「お久しぶりです」
「こんにちは! 明莉さん、優しそうで羨ましいな~」
颯太くんの言葉に、璃央は眉を寄せた。
「いやこいつ怒るとマジでやべえから。鬼より怖い……」
「璃央、そういうことをお友達に言っちゃダメ」
「……ハイ」
「こりゃ相当だ」
「あたしも優しそうでしょ!」と颯太くんに絡む花鈴さんを見て優しく笑うと明莉さんは俺の方を向いた。
「和真くん、いつも璃央の面倒見てくれてありがとう。迷惑かけてない?」
「い、いえ、全然です!」
「オレが和真に迷惑かけるわけねーだろ」
「その自信どこから来るのよ……和真くんが困ってないならいいけど……璃央は周りが見えなくなって暴走しがちだから、ね?」
「どういう意味だそれ」
「ですね」
今さっき、璃央と合流した時がまさにそうだった。
「だから璃央のこと、見ててあげて。私も花鈴もそれに父と母も、和真くんになら安心して任せられると思ってるから」
「え、そ、そんな大それたことは……!」
なんか大事になってない!? そりゃ璃央とはずっと一緒にいたいと思ってるけど、ご家族公認のプロポーズみたいになってる……! どう反応したもんか、焦ってチラッと璃央を見ると、目を大きく開いて俺を見ていた。期待してる! 俺が何を言うのか、めっちゃ期待してる!
「こ、こちらこそよろしくお願いします……!」
璃央は満足そうに頷いた。
「おう、任せたぞ。老後まで面倒見ろよ。男に二言はなしだ」
言質取られた感があるけど、本心だし、璃央は喜んでるから何でもいいか。
「璃央だって俺の面倒見てくれるんだろ?」
「当たり前。疑う時間がもったいねえぞ」
「うん。璃央が本気で好きなのは昔から和真くんだけだから」
「明莉! そういうの言うな!」
「あはは、恥ずかしがっちゃって」
お姉さんたちが俺たちのこと喜んでくれてるのは璃央から聞いてたけど、やっぱ面と向かって言われると嬉しいな。家族公認……ちょっと恥ずかしいけど……懐が広くて暖かい家庭で璃央が育ってきたんだなあって感じて、俺まで心が暖かくなる。
すると、「あ!」と花鈴さんが手を叩いた。
「和真と大晴、帰る方向一緒なんだし、途中まで荷物持って帰ってくれない? あたしまだ服買い足りなくて!」
「自分で買ったもんくらい自分で持てよ! 手に持てる分だけ買え!」
璃央が持っていた荷物の横には、さらに紙袋が増えている。お姉さんたち二人が手に持っていた分だ。これは相当な量。怒る璃央のことは気にせず、水戸は軽く手をあげた。
「いいですよ。女性に重いもの持たせられません」
「おい大晴……!」
「大晴、璃央と違って紳士ね! 男前!」
「持ってくれたら助かるけど……本当に大丈夫?」
心配そうに眉を下げる明莉さんに、水戸は爽やかに笑い返す。
「こっちの二人も俺んち泊まるんで、みんなで持ちます」
「持ちます!」
「ボクも!」
ノリ良く賛同する颯太くんとサーニャさんに合わせて「俺も……」と手をあげる。
「和真まで……!」
「みんな璃央と違って優しいね! ありがと!」
「ごめんね、ほんとに助かるわ。今度お礼するね。花鈴、お邪魔しちゃったしそろそろ行こう」
「えー、まだみんなと喋りたい!」
明莉さんはカバンから取り出したスマホの時刻を花鈴さんに見せた。
「ほらそろそろ限定のパンが焼き上がる時間」
「ほんとだ! じゃーね、みんな! みんなの分もパン買っとくね!」
「オレの分も買えよ!」
「おけおけ!」
「あいつら……荷物押し付けにきたのかよ……!」
お姉さんたちが嵐のように去ってから、しばらくみんなで時間を忘れて談笑して、日が暮れてきたころショッピングモールを出た。前田とは家が別方向で、すぐに別れた。別れ際に「俺がいなくても頑張って喋れよ」と心配された。最初よりは慣れてきたけど、頑張ります……まあ璃央がいるし、心強い。
「そうだ木山、連絡先交換しよ」
「俺も!」
「ボクも!」
「あ、うん……!」
連絡先聞いてくれるってことは、ちょっとは仲良くなれたかな……いい人たちだな……でも、スマホを取り出そうとした手を璃央に阻止された。
「ダメ! 和真と仲良くなろうとすんな!」
「り、璃央……」
「いーじゃん、連絡先くらい。木山くんの交友関係を邪魔する方が逆によろしくないのではなくて?」
「ぐっ……」
お嬢様言葉で煽る(?)颯太くんに、璃央は唇を噛み締めた。
「和真はこいつらの連絡先欲しいのかよ」
「俺は仲良くしたいなって……俺あんま友達いないし……語れる友達増えたら嬉しいし……」
「ぐうっ……和真がそうしたいなら、仕方ねえ……カッコ悪い嫉妬は抑えてオレは寛容な男になる」
その表情から随分な葛藤が伝わってくる。三人から見ても璃央の嫉妬は通常運転なんだろう。璃央からの許可が出たぞーと、慣れた手つきで連絡先のQRコードを画面に表示してくれた。それを俺は順に読みこむ。
「お前ら必要最低限しか会話すんなよ。和真との会話は逐一見せろ」
「嫁の浮気チェックみたいだな」
「寛容な男はどこいったの?」
「そんなのつまんねーじゃん。璃央のカッコ悪い写真撮って送ってやろ」
「てめぇ……」
「おりゃ!スタンプ攻撃!」
スポポポポ!と颯太くんから大量のスタンプが送られてくる。アニメやネットで人気のキャラクターのスタンプだ。
「木山、たまにメッセージ送っていい?」
「大晴! お前は言ったそばからぁ……!」
「全然いいよ」
俺が答えると、璃央はまた悔しそうに拳を握りしめた。
「可愛いグッズ買った時に誰かに報告したいけど言える人いなくてさ」
「俺そんな上手いこと返せないけど……」
「いいよ、『可愛い!』って言ってくれればそんだけで」
なんか分かるな、その気持ち。SNSにこれ買ったって報告するだけで満足感を得られるし。そこに特に感想はいらないんだよな。
「わかった」
「気楽に返事してくれればいいから。俺もメッセージの内容とか気にするタイプじゃないし、たぶんスタンプ返して終わりになると思う」
「うん、そんぐらいの方が楽だな」
あ……璃央が分かりやすくショックを受けている。ガーンって文字が見えそうだ。
「か、和真……オレのメッセージ、量多くてめんどいとか思ってた……?」
「違うって、そういう意味じゃないから!」
前を歩く三人は「また始まった」とスタスタ歩いていく。明らかに落ち込み足取りを重くする璃央に合わせてゆっくり隣を歩いた。
「水戸とはまだあんまり仲良くなってないし、長々メッセージするの気ぃ使うからその方が楽って意味! 璃央から連絡来るの楽しみにしてるし、嬉しいよ!」
「ほんとか?」
「ほんと!」
「じゃあいっぱい送る」
あっという間に機嫌を取り戻してて可愛い。チョロいとか言ったら怒るから言わないけど、へこんでもすぐ戻ってきて、引きずらないところ好きだな。
「なあ、璃央が好きなものに自信を持てるようになったのって……俺がきっかけ?」
「は!?」
「お久しぶりです……」
「おい花鈴、ウザ絡みすんな! 和真ビビってんだろ!」
璃央を押しのけ、花鈴さんはキラキラした笑顔で迫ってくる。
「璃央がごめんねー。いっつもベッタリされて大変でしょ。なんか困ったりしてない? いつでも相談してきていいからね!」
「あ、ありがとうございます」
ギャルノリすぎる……悪い人じゃないし、むしろオタクに優しいギャルなんだけど、話すテンションが合わない……!
「てかさ、一緒の大学なのに全然会わないじゃん。あたしのこと避けてるでしょ」
「い、いや、そんなことは」
「もー、遠慮しなくていいのに! ……お、大晴といるってのは嘘じゃなかったんだ」
花鈴さんの話す相手が水戸へと移り、バレないように息を整える。緊張した……
「お久しぶりです、花鈴さん」
「久しぶりぃ! 他の子たちも璃央の友達?」
颯太くんたちの輪の中に入り、もう話が盛り上がっている。すごい、さすがのコミュ力だ……呆気に取られてると璃央が俺にこそっと耳打ちした。
「ごめん、和真。あいつデリカシーねぇからショック受けたりしてないか?」
「いや、大丈夫だよ。久しぶりに会うから気圧されてただけで」
まあいつ会っても気圧されてんだけど……
そこに、柔らかいお姉さん声が聞こえて顔を向ける。
「もう花鈴、声が向こうまで聞こえてたよ」
璃央の上のお姉さんの、明莉さんだ! 璃央とも花鈴さんとも違う、ふんわりした雰囲気を纏った美人。
「ごめんごめん、テンション上がっちゃってさ!」
明莉さんは小さくため息をついた後、すぐににこりと微笑んでみんなに向かってお辞儀をした。
「いつも璃央がお世話になってます。姉の明莉です」
「お久しぶりです」
「こんにちは! 明莉さん、優しそうで羨ましいな~」
颯太くんの言葉に、璃央は眉を寄せた。
「いやこいつ怒るとマジでやべえから。鬼より怖い……」
「璃央、そういうことをお友達に言っちゃダメ」
「……ハイ」
「こりゃ相当だ」
「あたしも優しそうでしょ!」と颯太くんに絡む花鈴さんを見て優しく笑うと明莉さんは俺の方を向いた。
「和真くん、いつも璃央の面倒見てくれてありがとう。迷惑かけてない?」
「い、いえ、全然です!」
「オレが和真に迷惑かけるわけねーだろ」
「その自信どこから来るのよ……和真くんが困ってないならいいけど……璃央は周りが見えなくなって暴走しがちだから、ね?」
「どういう意味だそれ」
「ですね」
今さっき、璃央と合流した時がまさにそうだった。
「だから璃央のこと、見ててあげて。私も花鈴もそれに父と母も、和真くんになら安心して任せられると思ってるから」
「え、そ、そんな大それたことは……!」
なんか大事になってない!? そりゃ璃央とはずっと一緒にいたいと思ってるけど、ご家族公認のプロポーズみたいになってる……! どう反応したもんか、焦ってチラッと璃央を見ると、目を大きく開いて俺を見ていた。期待してる! 俺が何を言うのか、めっちゃ期待してる!
「こ、こちらこそよろしくお願いします……!」
璃央は満足そうに頷いた。
「おう、任せたぞ。老後まで面倒見ろよ。男に二言はなしだ」
言質取られた感があるけど、本心だし、璃央は喜んでるから何でもいいか。
「璃央だって俺の面倒見てくれるんだろ?」
「当たり前。疑う時間がもったいねえぞ」
「うん。璃央が本気で好きなのは昔から和真くんだけだから」
「明莉! そういうの言うな!」
「あはは、恥ずかしがっちゃって」
お姉さんたちが俺たちのこと喜んでくれてるのは璃央から聞いてたけど、やっぱ面と向かって言われると嬉しいな。家族公認……ちょっと恥ずかしいけど……懐が広くて暖かい家庭で璃央が育ってきたんだなあって感じて、俺まで心が暖かくなる。
すると、「あ!」と花鈴さんが手を叩いた。
「和真と大晴、帰る方向一緒なんだし、途中まで荷物持って帰ってくれない? あたしまだ服買い足りなくて!」
「自分で買ったもんくらい自分で持てよ! 手に持てる分だけ買え!」
璃央が持っていた荷物の横には、さらに紙袋が増えている。お姉さんたち二人が手に持っていた分だ。これは相当な量。怒る璃央のことは気にせず、水戸は軽く手をあげた。
「いいですよ。女性に重いもの持たせられません」
「おい大晴……!」
「大晴、璃央と違って紳士ね! 男前!」
「持ってくれたら助かるけど……本当に大丈夫?」
心配そうに眉を下げる明莉さんに、水戸は爽やかに笑い返す。
「こっちの二人も俺んち泊まるんで、みんなで持ちます」
「持ちます!」
「ボクも!」
ノリ良く賛同する颯太くんとサーニャさんに合わせて「俺も……」と手をあげる。
「和真まで……!」
「みんな璃央と違って優しいね! ありがと!」
「ごめんね、ほんとに助かるわ。今度お礼するね。花鈴、お邪魔しちゃったしそろそろ行こう」
「えー、まだみんなと喋りたい!」
明莉さんはカバンから取り出したスマホの時刻を花鈴さんに見せた。
「ほらそろそろ限定のパンが焼き上がる時間」
「ほんとだ! じゃーね、みんな! みんなの分もパン買っとくね!」
「オレの分も買えよ!」
「おけおけ!」
「あいつら……荷物押し付けにきたのかよ……!」
お姉さんたちが嵐のように去ってから、しばらくみんなで時間を忘れて談笑して、日が暮れてきたころショッピングモールを出た。前田とは家が別方向で、すぐに別れた。別れ際に「俺がいなくても頑張って喋れよ」と心配された。最初よりは慣れてきたけど、頑張ります……まあ璃央がいるし、心強い。
「そうだ木山、連絡先交換しよ」
「俺も!」
「ボクも!」
「あ、うん……!」
連絡先聞いてくれるってことは、ちょっとは仲良くなれたかな……いい人たちだな……でも、スマホを取り出そうとした手を璃央に阻止された。
「ダメ! 和真と仲良くなろうとすんな!」
「り、璃央……」
「いーじゃん、連絡先くらい。木山くんの交友関係を邪魔する方が逆によろしくないのではなくて?」
「ぐっ……」
お嬢様言葉で煽る(?)颯太くんに、璃央は唇を噛み締めた。
「和真はこいつらの連絡先欲しいのかよ」
「俺は仲良くしたいなって……俺あんま友達いないし……語れる友達増えたら嬉しいし……」
「ぐうっ……和真がそうしたいなら、仕方ねえ……カッコ悪い嫉妬は抑えてオレは寛容な男になる」
その表情から随分な葛藤が伝わってくる。三人から見ても璃央の嫉妬は通常運転なんだろう。璃央からの許可が出たぞーと、慣れた手つきで連絡先のQRコードを画面に表示してくれた。それを俺は順に読みこむ。
「お前ら必要最低限しか会話すんなよ。和真との会話は逐一見せろ」
「嫁の浮気チェックみたいだな」
「寛容な男はどこいったの?」
「そんなのつまんねーじゃん。璃央のカッコ悪い写真撮って送ってやろ」
「てめぇ……」
「おりゃ!スタンプ攻撃!」
スポポポポ!と颯太くんから大量のスタンプが送られてくる。アニメやネットで人気のキャラクターのスタンプだ。
「木山、たまにメッセージ送っていい?」
「大晴! お前は言ったそばからぁ……!」
「全然いいよ」
俺が答えると、璃央はまた悔しそうに拳を握りしめた。
「可愛いグッズ買った時に誰かに報告したいけど言える人いなくてさ」
「俺そんな上手いこと返せないけど……」
「いいよ、『可愛い!』って言ってくれればそんだけで」
なんか分かるな、その気持ち。SNSにこれ買ったって報告するだけで満足感を得られるし。そこに特に感想はいらないんだよな。
「わかった」
「気楽に返事してくれればいいから。俺もメッセージの内容とか気にするタイプじゃないし、たぶんスタンプ返して終わりになると思う」
「うん、そんぐらいの方が楽だな」
あ……璃央が分かりやすくショックを受けている。ガーンって文字が見えそうだ。
「か、和真……オレのメッセージ、量多くてめんどいとか思ってた……?」
「違うって、そういう意味じゃないから!」
前を歩く三人は「また始まった」とスタスタ歩いていく。明らかに落ち込み足取りを重くする璃央に合わせてゆっくり隣を歩いた。
「水戸とはまだあんまり仲良くなってないし、長々メッセージするの気ぃ使うからその方が楽って意味! 璃央から連絡来るの楽しみにしてるし、嬉しいよ!」
「ほんとか?」
「ほんと!」
「じゃあいっぱい送る」
あっという間に機嫌を取り戻してて可愛い。チョロいとか言ったら怒るから言わないけど、へこんでもすぐ戻ってきて、引きずらないところ好きだな。
「なあ、璃央が好きなものに自信を持てるようになったのって……俺がきっかけ?」
「は!?」
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