1軍陽キャ幼なじみの猛攻♡

すももゆず

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恋人編ー3年生前期

集結・ゴールデンウィーク⑤

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 璃央は大きな声を出して固まった。そして歪にカクカクと歩き始めた。

「な、んで、んなこと……」
「水戸に聞いた。俺が璃央に言ったこと?を璃央が水戸に言って、それで水戸も救われたって」

 璃央は「あんの野郎……」と、水戸の背中を睨みつけている。

「俺、璃央に何を言ったのか覚えてなくてさ。気になるから教えてほしいなって……」

 じっ、と夕陽の赤に染まる璃央の瞳を覗く。

「言わね」
「え、ここまで踏み込んで聞いたのに!?」
「そんなかわいい顔しても言わねえからな!」

 別に俺の顔はかわいくないだろ……と思うが、璃央はぷい!とそっぽを向いてしまった。相当恥ずかしいんだな。だったら無理に聞きはしないけど、気になる。

 俺を好きになった理由もいつまでも言ってくれないし……この二つの共通点って『俺がきっかけになって璃央自身が変わったこと』……? その恥ずかしさの理由は分かんないけど、いつか話してくれたらいいな。

 少し早歩きになった璃央の歩幅に合わせて、三人に追いつくと、水戸が振り返った。

「璃央も明日戻るんだろ? 俺ん家一緒に泊まってく?」
「あー、そうしよっかな。家で晩飯用意されてるだろうし、食って風呂入ってから行くわ。久々に猫たちと遊んでやるか」
「喜ぶよ。二匹とも璃央のこと大好きだし。木山も泊まる?」
「えっ!?」

 関係ない会話だと思って猫に懐かれる璃央を妄想してたから急に話振られて声ひっくり返った。さ、さすがに今日知り合ったみたいな人たちとお泊まり会は……本日分のKP(コミュ力ポイント)がもう残り少ないし……

 やんわり断ろうとした俺よりも早く、璃央が言葉を遮った。

「ダメ」
「俺は木山に聞いてんだけど」
「オレの許可ないと泊まらせねぇ。一生出さねーけどな」
「子どもみたいな煽り方だな……じゃあ泊まりはなしで、また今度猫たち見に来てよ」
「猫……!」

 あの写真の可愛い猫たちに、会える……!? や、でも家に行くのはやっぱり難易度が高い……!

 そんな葛藤も意味なく、璃央が言葉を遮る。

「ダメ」
「だから木山に言ってんだけどなあ。んじゃ、璃央と一緒に来てよ」
「璃央と一緒なら……」
「釣り方がずるいぞ大晴! 和真が行く気になってるだろ!」

 璃央が機嫌を損ねても、三人は揶揄って楽しんでる。璃央にいい友達がいてよかった。やっぱり好きな人には自分といない時でも楽しくしててほしいなって思うから。

 少し歩くと、璃央と別れる交差点に着いた。

「あ、俺はここで……」
「へえ、木山の家あっち方面なんだ」
「和真の家に興味を示すな」

 俺が手に持っていた、璃央のお姉さんたちの買い物袋をひょい、と璃央が軽々持った。

「持ってくれてありがとな」
「いやいや。璃央、気をつけて帰ってな」
「おう」
「みんなも気をつけて」

 手を振ると、みんな屈託なく笑って手を振り返してくれた。

「うんっ、じゃーね、和真くん! また璃央くんコスさせるから!」
「うちの猫とじゃれる璃央の写真送るな~」
「俺もなんか送るー!」
「やめろ!」

 最後まで賑やかだ……でも、そっか。これでまたしばらく璃央と会えないのか……ゴールデンウィークが楽しかった分、離れるのが寂しいな。四人の後ろ姿を見送っていると、璃央が振り返って大きく手を上げた。

「和真! またな! 今日会えてよかった!」

 夕陽よりももっと綺麗な笑顔に、寂しさが消えていく。「俺も!」と返し大きく手を振った。今日は大変な1日だったけど、みんなと少し仲良くなれてよかった。友達と何気なく喋ってる、普段見ることのない璃央を見れたし……

 次に璃央に会う日を楽しみに、明日からも頑張ろうと気合いを入れ直した。







 大晴の家に行く前に、明莉と花鈴が買っていたパンを和真に届けに行った。最後にこっそりとキスできたのはよかった。ほんとは舌入れて長々したかったけど、さすがに玄関だから我慢した。オレは我慢ができる男……

 その後大晴の家に着きリビングに入ると、洗い物をしてる大晴のお母さんがいた。お父さんは仕事で遅いんだろう。

「お邪魔しまーす」
「璃央くん、久しぶりね」
「お久しぶりです」

 ソファでテレビを見ていた妹のあおいがこっちに視線をうつす。

「わっ! 璃央くんまたかっこよくなってる、ヤバイ!」
「おー、オレは日を追うごとにかっこよくなるぞ。葵は何歳になったんだ」
「中3!」
「若ぇな。受験頑張れよ」
「ありがとー!」

 するとどこからやってきたのか、二匹の猫たちが我先にとオレに駆け寄ってきた。足元をぐるぐる周ったり、爪引っ掛けて登ろうとしてきたり。

「お前ら変わってねえなあ」

 こいつら……サクラとモモは最初会った時から何故かオレにすげえ懐いてる。大晴は『シンパシー感じてるんじゃないかな』とか言ってたな。まあ懐かれて悪い気はしない。しゃがんで撫でてやると膝の上や背中に乗るわで、もみくちゃにされた。大晴はにこにこしながらオレたちの写真を撮っていた。

 サクラを肩に乗せ、モモを抱っこしながら大晴の部屋に行くと、ダラダラとくつろいで人生ゲームしていた二人に笑われた。

「マジで璃央めっちゃ懐かれてる! 草!」
「あはは! かわいー!」
「いっつもこんな感じだ。沙羽、ウィッグ取ってんのか」

 ピンクアッシュじゃなく茶髪で、男っぽい髪型の沙羽がいた。

「寝る時は邪魔だからね。大学もこれで行ってるよ」
「沙羽ちゃん、美少年すぎて惚れ直したよ……」
「あ、オレも人生ゲームやりてぇ」

 あぐらをかいて座ると猫たちは器用に膝の上におさまった。なんでこんな変な格好で寝れんのか、猫の関節は謎だ。猫は液体とか軟体動物とか、大晴が言ってるしな。二匹乗られたらわりと重いし足が痺れそうだ。

「じゃあ四人で最初っからやろうぜ!」
「負けてたからってリセットずるいよ。まあ次もボクが勝つけど」

 猫たちが興味示して手を出してくるのを阻止しながら人生ゲームを進めていると、颯太が何気なく話す。

「木山くんと喋って思ったけど、優しいっていうか大らかっていうか、いいやつだよな」
「小さいことじゃ怒らなさそうだよね」
「俺も改めて喋れてよかった」
「……和真のこと褒められんのは嬉しいけど生半可に語られるのもムカつくな」
「めんどくさいオタクみたいになってるね」
「そのどデカい嫉妬も、木山くんだから許してもらえてるんだぞ」
「うぐっ……」

 和真のことは信用してる。けど、好きだからこその嫉妬だろ。和真はオレ以外に好きなものがいっぱいある、そういうところが好きだ。でもオレといる時がいちばん楽しいって思ってほしい。和真を楽しませられるのはオレだけでいいのに……って矛盾した気持ちもある。

「璃央は今まで我慢してきた分、嫉妬デカくなってんだよ」
「昔の璃央くんと和真くんのアレコレ、気になるな~」
「あの頃の璃央は木山を遠くから見てるだけで……」
「言うな!」

 オレの番になり、ルーレットを回してコマを進める。止まったのは……

「げっ、借金かよ!」
「璃央って人生ゲームやりたがるけど、勝ったことあったっけ?」
「……ねぇな」

 オレはゲームが苦手だ。もう根本的にゲームと名がつくものと相性が悪いんだろう。ルーレットを回すだけの人生ゲームでも勝てた試しがない。

「次はいけるかもってワンチャン賭けたくなんだよ」
「たまに諦めの悪さが出るよな。木山のこととか」
「どうしても譲れないもんはな。まあゲームで負けても、オレは和真と付き合えてるだけで人生勝ち組だ」
「うわ、すっげえ自信……」


 人生ゲームの結果は予想通りオレの借金まみれ惨敗で終わった。ちょうど眠くなってきたし、床に敷いた布団に潜る。

「璃央、もう寝る?」
「おう。猫らがちょうど良い温度してんだよ」

 その猫たちも布団に入ろうとしてくる。

「お前らもここで寝んのか?」
「んなぁ~」
「いいけど、オレに潰されそうになったら逃げろよ」

 布団をめくると二匹はすぐにオレの両脇にズドンと寝そべった。重みあるしけっこう窮屈で身動きできないけど、こいつらが寝たいところで寝ればいいか。

「サクラとモモと寝る璃央の写真撮っていい?」
「別にいいけど」
「木山に送ったら喜ぶだろうなぁ」
「それならいい感じに撮れよ」

 喜んでる和真が想像できるし……メッセージのやり取りを許してやらんでもない。

「璃央って猫でも人でも態度変わんねーな。普通に喋ってるし」
「別に普通だろ。変える必要なくね?」
「そうやって、誰に対しても自分を曲げないのが璃央のいいとこだと思う。懐かれすぎてて嫉妬するけど……」
「たまにしかオレに会えないから甘えたいんだろ」
「だろうなぁ」

 思えばオレも和真と会ったらずっと引っ付いてるな……それこそサクラとモモみたいに、片時も離れたくなくて……だから猫っぽいって言われんのか?

 今ごろ和真は寝てんのかな、それともソシャゲしてんのかな。ゴロゴロと喉を鳴らす猫たちに温められて少し暑くなった布団の中で、和真のことを考えながら目を瞑る。

 これにてオレの最高のゴールデンウィークは幕を閉じたのだった。来年もこの先も、和真がいればずっと最高だ。

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