1軍陽キャ幼なじみの猛攻♡

すももゆず

文字の大きさ
47 / 50
恋人編ー3年生夏休み

いざ、即売会!⑤

しおりを挟む
 日が暮れ始めた頃にアパートに帰ってきた。すぐにクーラーを入れると、蒸した部屋に冷気が通る。和真は荷物と一緒になって床に倒れ込んだ。

「あー……疲れた……もう一歩も動けん……」
「体力ねえなあ」
「イベントってこんな疲れるのか……璃央の体力すげえな。コスプレもしてたのに」
「セックスできるぐらいには余ってるぞ」
「ごめん……今日は無理です……」
「分かってるよ。疲れてるとこ無理やりしたりしねーし。ひと息ついたら先にシャワー浴びろよ」

 テイクアウトしたカツ丼を冷蔵庫に入れながら言うと、へい……と力尽きる寸前の声が返ってくる。和真の元にしゃがみ、頰をつついてみる。

「そんな疲れてるならオレが洗ってやろうか?」
「……そしたらそういう雰囲気になるじゃん……」

 ちぇ、と舌を見せると和真はふふっと笑った。こういう優しいやり取りが好きだ。

「そういや、お前の買った本ってどんなのなんだ?」

 随分膨らんで重そうになった和真のリュックに目を移す。持ってやろうかって言っても頑なに渡さなかったそれ。
 和真は息を詰まらせ、やばい、を顔いっぱいに浮かべて青ざめている。そんな焦るほど、オレに見られちゃいけないもん買ったのかよ。

「絶対、見るなよ……」
「って言われたら余計気になるもんだろ」
「ぜっ、た、い、ダメ!」
「ほらさっさとシャワー行ってこい」
「その間に見る気だろ!?」

 リュックに伸ばそうとした手を掴まれる。和真は床に這って必死の形相だ。和真が嫌がることを無理やりしようとは思わないけど、反応が面白くてかわいいからつい揶揄ってしまう。

「じゃあオレと一緒にシャワー行くしかないな?」
「く、くそ……ずるい……!」

 同人誌よりも、やっぱ和真だな。


 一緒に行けばエロい流れになるかもと思ったが、想像以上に和真が眠そうにしてたので仕掛けんのはやめた。普通に全身洗ってやって、先に風呂から出した。
 部屋に戻ると、ちょうど飯が温められててお茶も用意されていた。あんなヘトヘトだったのにオレが出てくるのに合わせて飯の準備してくれてたのか。なんか……マジで同棲してるみたいで一人で感極まった。

「ありがと、和真」
「え、お礼言うのは俺の方だよ。今日は一緒に来てくれてコスまでしてくれて、ありがとう。すっごい嬉しかった」
「おう……」
「まあ、ご飯あっためるしかしてないけど……」

 ハッキリ言われるとさすがに照れる。和真まで照れてるし。なんだこのむず痒い雰囲気。でもそうやってちゃんと言ってくれるところが好きだ。嬉しくて幸せで、こんな気持ちになるのは和真だけだ。

 よかった。頑張ってよかった。

「オレがお前のためにやりたくてやったんだ。礼なんて要らねえよ。食おーぜ。腹減った」
「うん。でも改めてなんか返したい」
「じゃあ食ってからオレの髪乾かして」
「そんだけ!? もっと他の……」
「んじゃ、セックスがいい。疲れ取れてからな」
「あ……ハイ……」
「いつまで経っても恥ずかしそうだな、慣れろよ」
「慣れない!」

 一緒にいてくれるだけで十分だけど……お礼するって言うなら遠慮なくもらうわ。


 髪乾かしてもらって、歯を磨いて、同じベッドに入る。狭苦しいけどくっつけるから嬉しい。和真は今にも寝そうだ。オレもけっこう眠くなってきたけど……

「なあ、オレの胸揉む?」
「は……なにいきなり!?」

 豆電球の明かりの下で、和真は目をぱっちり開いた。

「目ぇ覚めたんだけど!?」
「お前、貧乳派なんだろ。ならオレの胸でもよくね?」
「な、貧乳……!? なんで……!?」
「お前の好きなキャラ、貧乳多くね?」

 固まった和真は目を泳がせている。たぶんいろんなキャラを思い浮かべているんだろう。

「ほんとだ……貧乳多くね……?」
「気づいてなかったんか。オレも今日思っただけだけど。オレの胸揉んだら疲れも取れるだろ」
「たしかに?」
「和真にしか揉ませねえんだからな。ありがたく揉めよ」

 Tシャツを持ち上げて肌を晒す。オレは和真の胸好きだからいっぱい触るけど、触らせたことはない。
 静かな部屋に、ごくりと喉を鳴らす音が聞こえた。「失礼します」と小さく呟きながら、少し冷たい指先が控えめにオレの胸板に触れた。

「筋肉って思ったより柔らかいんだ……璃央ってマジでいい体してるよな。スポーツしてる人って感じ」
「オレとしてはもうちょい増やしたいけど。まあお前はペラペラで骨だもんな」
「運動苦手だし……」
「おら、もっと触れよ。今さら日和ってんじゃねえ」

 和真の腕を掴んで胸に押し付ける。暗くても和真の頰は赤くなってると思う。

「あ……わ……」
「ん、けっこうくすぐってぇ……」
「……」

 モゾモゾして焦ったいなこれ……変な感じになる。和真は無言のままオレの胸を凝視して揉み続けている。

「かずま……?」
「やばい、璃央……俺、勃ちそう……」
「はは、オレも」
「璃央がエロいせいだ……」
「やっぱ抜き合いぐらいしとこーぜ。その方がぐっすり寝れるくね?」
「そう、かも……」

 やっぱこうでなくちゃな。
 


「璃央、起きろ、璃央!」
「んー……」
「ちょ、大変なことになってる!」
「んあ……なに……?」

 ぐらぐらと揺り動かされて目が覚める。焦った顔した和真が覗き込んでいた。

「これ、璃央と一条じゃね!? バズってるぞ!?」

 和真が向けてきたスマホに映るSNSの投稿。ぼやける目を擦り見てみると……『こけそうになっためるちゃんレイヤーさんを金髪イケメンが抱き止めてた…王子と姫かよ、尊い…』の文章とともに、写真が載せられていた。顔は隠されてたが、万を超えるほど拡散されていた。

「なんであいつとバズんなきゃなんねーんだよ!」

 大賑わいのコメント欄と引用が、スクロールされる画面に流れていく。

『これサーニャと一緒に写ってる子じゃね? 足の細さが一緒(サーニャの投稿を引用)』
『男の方はレグルスの一条鷹夜じゃない? 会場いるの見たよ(レグルスのホームページURL)』
『一条鷹夜、オタクなん!?』

「……バレてるじゃねーか……」
「さすがネット民、特定が早い……」

 するとオレのスマホにメッセージが入った。一条鷹夜からだ。たぶん同じ投稿を見たんだろう。女ファンから疑いの声が上がり出す前にオレが男なの含めて言ってもいいかって。別にどうでもいいからオッケー出したが……

『こいつ、俺の友達な!ちな男!可愛いっしょ~笑 ゲームのサントラ買いに行ったらバッタリ会って、コス可愛すぎて口説いちゃったわ笑』
『あと今日の18時から対バンありま~す!当日券も少しあるので気になった人はよろしく!』

 と、すぐに投稿しやがった。可愛いを連呼すんな! 勝手に宣伝もすんな! 笑、じゃねーんだよ、ムカつくな! こんなん書いてオレのことがガチで好きとか和真に勘違いされたら……

「一条、ほんとに璃央の顔が好みなんだな~わかるわかる」

 ……その心配は無さそうだけど、それはそれで……

 そしてネットでは『男!?』『嘘だろ!?』『可愛すぎ!?』と芋づる式にサーニャの投稿まで万バズを記録して、沙羽からは「棚ぼたで超フォロワー増えちゃった!ありがとね!璃央くんもコス垢作ってみたら?」とメッセージがきた。

「コス垢?」
「いんじゃね? 璃央ならすぐに大人気になれるよ」
「なったら和真は嬉しい?」
「うん」
「やる」

 和真が喜ぶなら、オレはなんだってやってやる。インフルエンサーにもなってやる!
 さっそく新規アカウントを作っていたら覗き込んできた和真が、『りお』と入力した名前の欄を見て待ったをかけた。

「さすがに本名はダメだって。特定されるぞ」
「本名のやつばっかだろ」
「いや、それ陽キャのSNSの場合だから。個人情報晒すのはよくない。しかもコスで顔出しするんだし、危ないんだからな!」
「そういうもんか。じゃあ和真が名前考えて」

 ピタリと固まった和真は首をひねり頭を抱えたりしてすげえ悩んでいる。オレのことをこんな真剣に……嬉しい! ワクワクして待っていると、眉間にしわを寄せたまま顔を上げた。

「み、ミケ……とか」
「猫じゃねーか。まあ和真が決めた名前に異論はねえ。これでいく」
「いくの!? もっとちゃんと考えた方が……」
「いい、これがいい。よし、んで写真載せて……和真、オレの写真くれ。いい感じに撮れてるやつ」
「どれもいいんだよなあ……」

 和真のお気に入りの写真がエアドロで何枚か送られてきた。

「お、よく撮れてるじゃねーか」
「璃央が可愛いからだって」
「それは大いにある。でもお前のセンスも良くなってるぞ。これ使って、文章は適当でいいか」

『サーニャに勧められたからアカウント作ってみた。よろしく』

 と、投稿してとりあえずサーニャをフォローする。いち早く気づいた沙羽がオレの投稿を拡散すると、みるみるうちに広まっていく。

「通知が止まらん」
「すげえ! もうバズってる! さすが璃央!」

 オレより和真の方が楽しそうだ。更新してもしても終わらない通知の中に、一条鷹夜からのフォローが見えた。

『垢作ったなら早く言えよ! フォロー1番乗り逃しちまった(オレの投稿を引用)』

 すぐにサーニャが反応する。

『フォロー1番乗りはボクでーす(↑の投稿を引用)』
『サーニャちゃんこそ俺のフォローありがとね!これからよろしく!(↑の投稿を引用)』
『こちらこそ!今度鷹夜くんのライブ行ってみたいな~(↑の投稿を引用)』
『おいで~絶対楽しませるよ!(↑の投稿を引用)』

「なんか盛り上がってるな」
「あいつら……」

 永遠と続きそうな2人の会話は、『オレの引用から会話を進めるな!』のひと言で終わらせた。そんでその流れも拡散され、『仲良すぎて草』と話題になり、オレのアカウントはあっという間にフォロワー4桁を超えた。通知は切った。あれバッテリーめっちゃ減るわ。

 その後、レグルスのMV視聴数は伸び、一条鷹夜の顔ファンはさらに増えたらしい。『ゲームBGM好きとか分かってんじゃねーか』と、ゲームオタクからの支持も増えたとか。

しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

番を拒み続けるΩと、執着を隠しきれないαが同じ学園で再会したら逃げ場がなくなった話 ――優等生αの過保護な束縛は恋か支配か

雪兎
BL
第二性が存在する世界。 Ωであることを隠し、平穏な学園生活を送ろうと決めていた転校生・湊。 しかし入学初日、彼の前に現れたのは―― 幼い頃に「番になろう」と言ってきた幼馴染のα・蓮だった。 成績優秀、容姿端麗、生徒から絶大な信頼を集める完璧なα。 だが湊だけが知っている。 彼が異常なほど執着深いことを。 「大丈夫、全部管理してあげる」 「君が困らないようにしてるだけだよ」 座席、時間割、交友関係、体調管理。 いつの間にか整えられていく環境。 逃げ場のない距離。 番を拒みたいΩと、手放す気のないα。 これは保護か、それとも束縛か。 閉じた学園の中で、二人の関係は静かに歪み始める――。

おすすめのマッサージ屋を紹介したら後輩の様子がおかしい件

ひきこ
BL
名ばかり管理職で疲労困憊の山口は、偶然見つけたマッサージ店で、長年諦めていたどうやっても改善しない体調不良が改善した。 せっかくなので後輩を連れて行ったらどうやら様子がおかしくて、もう行くなって言ってくる。 クールだったはずがいつのまにか世話焼いてしまう年下敬語後輩Dom × (自分が世話を焼いてるつもりの)脳筋系天然先輩Sub がわちゃわちゃする話。 『加減を知らない初心者Domがグイグイ懐いてくる』と同じ世界で地続きのお話です。 (全く別の話なのでどちらも単体で読んでいただけます) https://www.alphapolis.co.jp/novel/21582922/922916390 サブタイトルに◆がついているものは後輩視点です。 同人誌版と同じ表紙に差し替えました。 表紙イラスト:浴槽つぼカルビ様(X@shabuuma11 )ありがとうございます!

4人の兄に溺愛されてます

まつも☆きらら
BL
中学1年生の梨夢は5人兄弟の末っ子。4人の兄にとにかく溺愛されている。兄たちが大好きな梨夢だが、心配性な兄たちは時に過保護になりすぎて。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる

結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。 冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。 憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。 誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。 鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。

冤罪で堕とされた最強騎士、狂信的な男たちに包囲される

マンスーン
BL
​王国最強の聖騎士団長から一転、冤罪で生存率0%の懲罰部隊へと叩き落とされたレオン。 泥にまみれてもなお気高く、圧倒的な強さを振るう彼に、狂った執着を抱く男たちが集結する。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き

toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった! ※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。 pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。 もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿ 感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_ Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109 素敵な表紙お借りしました! https://www.pixiv.net/artworks/100148872

処理中です...