となりの天狗様

真鳥カノ

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壱章 愛宕山の天狗様

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 あの日見た空を、覚えている。
 燃えるような茜空と、静かな夜が混ざり合って、稜線がまるで鮮やかな花のようだった。
 そんな光景を、私は確かに見た。誰かに抱えられて、昼か夜か曖昧な空を見たのだ。
 誰に抱き上げられていたのか、どこで見たのか。それは覚えていない。
 だけどその人は優しくて、その腕の中にいると不思議と何も怖くなかった。
 夕日の茜色と夜の藍の色、そんな空の色に照らされたその人の顔も、とてもきれいだった。
 それだけは、はっきりと覚えている。
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