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第1章 偽聖女じゃありません!
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手に当たったのは、トマトのつるんとした感触ではなく、何やらゴツゴツ・ざらざらした感触だった。
「あ」
「ひっ」
取り出したじゃがいもを見て、ネリーは息をのんでいた。
「そんなに怯えなくても……ただの作物の一種よ」
「お嬢様、それはご禁制のものなんですよ。何年も前に、それを使った料理のせいで人が倒れたとか、実は要人の暗殺を謀っていたとか何とか……」
「聞いたわよ。その時は茎と葉を使ったのよね。でも実は美味しいのよ。食べてみない?」
「た、た、食べる!?」
ネリーが、まるで毛虫が降ってきた時のようにおぞましい視線を向けると、レティシアは少し傷ついた。
「そんなに嫌わなくても……やれやれ、あなたへの誤解を、どうやったら解いてあげられるかしらね」
食べればほくほく柔らかく、ほんのり甘く、塩味もよく馴染む芋を見つめながら、レティシアは呟いた。角度を変えてじーっと見ているうち、「あ」という声が出た。
「そうね……うん、やっぱりそれしかないわ」
「あの……お嬢様? 何が『それしかない』んでしょう?」
「ネリー、とっても頼りになるあなたに頼み事があるの」
レティシアがこう言う時は、大抵断られそうなことを頼むときだ。あえて下手に出て、逃げ道を塞いでいる。
「私に選択の余地はないんですね……何をご所望ですか?」
ネリーはため息交じりに言った。対してレティシアは、嬉々として言った。
「大きな器と土を持ってきてほしいの」
「い、一応伺いますね……何を企んでおられるんですか?」
「失礼ね。企んでないわよ。この国の人たちの誤解を解くための第一歩を、今ここから始めようとしている……ただそれだけよ」
こんなにも不穏な『ただそれだけ』があるだろうか、とネリーは思っていたが、押し黙っていた。
「か……観賞用に、何かお花を植える……そういうことですね?」
「そうよ。ほら早く」
芋を両手に持ったまま、満面の笑みを浮かべている様は何とも不気味だったが、ネリーはそそくさと部屋をあとにした。
レティシアは一人、ソファに腰掛けながら鼻歌交じりでネリーの帰りを待っていた。
この時の思いつきを、レティシアはわずか1日で後悔することになる。
翌日のこと。
「な、なんで……こんなことに……!?」
部屋の中は、真っ暗だった。カーテンを開けているというのに、窓が大きな物に塞がれ、日の光がまるで入ってこないのだ。
それは大きなものと言うよりも、細い物が何本も絡みついてびっしりと張り付いているようなものだった。
床には、たくさんの鉢植えが転がっている。そこから伸びた長い長い茎が蔓のように伸びすぎて、部屋全体を覆い尽くしていたのだった。
「あ」
「ひっ」
取り出したじゃがいもを見て、ネリーは息をのんでいた。
「そんなに怯えなくても……ただの作物の一種よ」
「お嬢様、それはご禁制のものなんですよ。何年も前に、それを使った料理のせいで人が倒れたとか、実は要人の暗殺を謀っていたとか何とか……」
「聞いたわよ。その時は茎と葉を使ったのよね。でも実は美味しいのよ。食べてみない?」
「た、た、食べる!?」
ネリーが、まるで毛虫が降ってきた時のようにおぞましい視線を向けると、レティシアは少し傷ついた。
「そんなに嫌わなくても……やれやれ、あなたへの誤解を、どうやったら解いてあげられるかしらね」
食べればほくほく柔らかく、ほんのり甘く、塩味もよく馴染む芋を見つめながら、レティシアは呟いた。角度を変えてじーっと見ているうち、「あ」という声が出た。
「そうね……うん、やっぱりそれしかないわ」
「あの……お嬢様? 何が『それしかない』んでしょう?」
「ネリー、とっても頼りになるあなたに頼み事があるの」
レティシアがこう言う時は、大抵断られそうなことを頼むときだ。あえて下手に出て、逃げ道を塞いでいる。
「私に選択の余地はないんですね……何をご所望ですか?」
ネリーはため息交じりに言った。対してレティシアは、嬉々として言った。
「大きな器と土を持ってきてほしいの」
「い、一応伺いますね……何を企んでおられるんですか?」
「失礼ね。企んでないわよ。この国の人たちの誤解を解くための第一歩を、今ここから始めようとしている……ただそれだけよ」
こんなにも不穏な『ただそれだけ』があるだろうか、とネリーは思っていたが、押し黙っていた。
「か……観賞用に、何かお花を植える……そういうことですね?」
「そうよ。ほら早く」
芋を両手に持ったまま、満面の笑みを浮かべている様は何とも不気味だったが、ネリーはそそくさと部屋をあとにした。
レティシアは一人、ソファに腰掛けながら鼻歌交じりでネリーの帰りを待っていた。
この時の思いつきを、レティシアはわずか1日で後悔することになる。
翌日のこと。
「な、なんで……こんなことに……!?」
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それは大きなものと言うよりも、細い物が何本も絡みついてびっしりと張り付いているようなものだった。
床には、たくさんの鉢植えが転がっている。そこから伸びた長い長い茎が蔓のように伸びすぎて、部屋全体を覆い尽くしていたのだった。
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