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二皿目 おでんの島!
雪女の恋
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「改めまして、私、雪から生まれたあやかし……よく『雪女』と呼ばれています」
恭しくお辞儀をする風花に、金さんはうなずきだけ返していた。
「うん。それで雪のお嬢さんは、なんでうちに興味を持ってくれたんかな?」
金さんがそう尋ねると、風花の真っ白な頬がぽっと朱に染まった。さっき聞いたばかりなのに、わざわざ言わせようとする金さんも意地が悪い……。
「そ、その……数ヶ月前に私の暮らす山に、とある男性が訪れて……山道から外れた場所で、怪我をしていて、とても困っていたのでお手伝いを……」
とってもいい人だ……。雪女と聞けば、雪山で迷った男を凍死させたり、谷に突き落としたりするとかいう恐ろしい逸話しか知らなかった。だがこの風花という雪女は、害意など微塵も感じない。
「それで? あんたは、その男に?」
「ええ、気付けば惹かれていました……!」
きゃーっという黄色い声があがる。金さんは一人、ニコニコしながら耳を傾けていた。
「私、あの方とどうしても添い遂げたいんです。そこでどうしたらいいかと悩んでいたところ……こちらの噂を耳にしまして」
風花がチラリと陽菜に視線を向ける。それで、仁も金さんも、だいたい察したようだ。
「ここの……伝説のメニューに挑戦したいと、そういうわけやな?」
「はい……!」
風花は神妙にうなずく。
伝説のメニュー……すなわち、制覇した者の数は片手で足りるほどというメガ盛り料理。見事完食できた者は、一つ願いを叶えてもらえるという噂の一品だ。噂ではなく事実だが。
「念のために聞いておくけども、あんたの願い事っちゅうのは何や? その男と添い遂げるために人間になりたいとか、そういう……?」
「いいえ、違います」
「ちゃうんかい」
仁の問いに、風花はあっさりと首を横に振った。だが、その瞳に宿るキラキラした輝きは増すばかりだった。
「あの方とは、もう夫婦になったんですもの。今更人間になる必要はないわ」
「夫婦に⁉ もう⁉」
思わず叫んでしまった陽菜に、風花はまたも頬を淡く染めながら微笑んだ。
「ええ。私、頑張って口説き落としたんです」
口調などから、なんとなく古風な女性なのかと思っていたが、意外と積極的なようだ。そういう性格なのか、それともそれほど惚れ込んでいたということか……。
でも、それならば、いったい何を願うのだろう? そんな陽菜の疑問を読み取ったかのように、風花は語った。
「夫婦生活において重要なものは何か、皆様わかりますか?」
「へ?」
いきなりの問いに、その場の全員が目を丸くした。皆が答えるより先に、風花が答えを口にした。
「食事です」
「ああ、はい……」
「おわかりですか? 食事なんです」
なんだか目が怖い。真剣なのだということは伝わるが、その真意までは読み取れない。
「食生活に、なんぞ問題が?」
「ありますとも……人間も雪女も、各々の体温に沿った食事をするものなんです。人間は、基本的には温かい料理が好きでしょう?」
恭しくお辞儀をする風花に、金さんはうなずきだけ返していた。
「うん。それで雪のお嬢さんは、なんでうちに興味を持ってくれたんかな?」
金さんがそう尋ねると、風花の真っ白な頬がぽっと朱に染まった。さっき聞いたばかりなのに、わざわざ言わせようとする金さんも意地が悪い……。
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とってもいい人だ……。雪女と聞けば、雪山で迷った男を凍死させたり、谷に突き落としたりするとかいう恐ろしい逸話しか知らなかった。だがこの風花という雪女は、害意など微塵も感じない。
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「ええ、気付けば惹かれていました……!」
きゃーっという黄色い声があがる。金さんは一人、ニコニコしながら耳を傾けていた。
「私、あの方とどうしても添い遂げたいんです。そこでどうしたらいいかと悩んでいたところ……こちらの噂を耳にしまして」
風花がチラリと陽菜に視線を向ける。それで、仁も金さんも、だいたい察したようだ。
「ここの……伝説のメニューに挑戦したいと、そういうわけやな?」
「はい……!」
風花は神妙にうなずく。
伝説のメニュー……すなわち、制覇した者の数は片手で足りるほどというメガ盛り料理。見事完食できた者は、一つ願いを叶えてもらえるという噂の一品だ。噂ではなく事実だが。
「念のために聞いておくけども、あんたの願い事っちゅうのは何や? その男と添い遂げるために人間になりたいとか、そういう……?」
「いいえ、違います」
「ちゃうんかい」
仁の問いに、風花はあっさりと首を横に振った。だが、その瞳に宿るキラキラした輝きは増すばかりだった。
「あの方とは、もう夫婦になったんですもの。今更人間になる必要はないわ」
「夫婦に⁉ もう⁉」
思わず叫んでしまった陽菜に、風花はまたも頬を淡く染めながら微笑んだ。
「ええ。私、頑張って口説き落としたんです」
口調などから、なんとなく古風な女性なのかと思っていたが、意外と積極的なようだ。そういう性格なのか、それともそれほど惚れ込んでいたということか……。
でも、それならば、いったい何を願うのだろう? そんな陽菜の疑問を読み取ったかのように、風花は語った。
「夫婦生活において重要なものは何か、皆様わかりますか?」
「へ?」
いきなりの問いに、その場の全員が目を丸くした。皆が答えるより先に、風花が答えを口にした。
「食事です」
「ああ、はい……」
「おわかりですか? 食事なんです」
なんだか目が怖い。真剣なのだということは伝わるが、その真意までは読み取れない。
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